風力発電の電気を使って水を分解して水素を作り出す二酸化炭素非排出型の水素の製造施設が12日、横浜市で公開されました。
こうして得られた水素を、空気中の酸素と化学反応させると電気が発生するので、燃料電池型自動車の燃料に使えば、環境を汚染しないクリーンな自動車が出現します。
水素製造のコストが下がれば家庭や工場での発電設備にも適用できます。
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風力を利用して水素を作る実験始まる 神奈川
NHK NEWS WEB 2017年7月12日
クリーンエネルギーとして自動車などへの活用が期待される水素を、二酸化炭素を出さない風力発電の電気を使って水から取り出す究極のエネルギーづくりの実験が神奈川県で始まりました。
この実験は、神奈川県やトヨタ自動車などが実施し、横浜市にある風力発電所に整備された水素の製造施設が12日初めて公開されました。
施設では風力発電の電気を使って水を分解して水素を作り出すことから、製造中には二酸化炭素が排出されません。施設で作られた水素は神奈川県内の工場などに運ばれ、フォークリフト12台分の燃料として使われます。フォークリフトは、燃料の水素と空気中の酸素を反応させて電気を作って走るため、排出されるのは水だけです。
水素はクリーンエネルギーとして注目されていますが、現在、自動車などに使われている水素の多くは天然ガスなどからつくられるため、製造中に二酸化炭素が排出されてしまいます。
トヨタなどは、風力発電などを使って水素をつくるときから二酸化炭素を出さないような仕組みを確立できれば普及にはずみがつくと見ています。
今後、実験で水素を作る際の課題になっているコストを下げられるかどうかも検証することにしています。トヨタ自動車の友山茂樹専務は、記者会見で「水素の安定した需要を作り出すことも水素の普及に向けて大切になっていく」と述べました。
水素エネルギー 期待と課題
水素は、自動車の燃料などに使っても水しか出ないため、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーとして注目されています。水素は、天然ガスや木くずや汚泥などからも取り出せますが、製造中に温暖化の原因になる二酸化炭素やメタンガスが発生します。
一方で、風力や太陽光で発電した電気を使って水を化学反応で分解することでもつくり出すことができます。このためエネルギーのほとんどを海外からの石油や天然ガスに依存する日本にとっては、エネルギー自給率を高めるという点からも水素に期待が集まっています。
自動車メーカーは、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する燃料電池を搭載した自動車の開発を進めているほか、ガス会社などはエネファームと呼ばれる家庭用の発電システムの普及に取り組んでいます。ただ水素エネルギーは、製造や貯蔵などのコストが高いため、普及は思うように進んでいません。このため家庭や工場などでの発電や自動車の燃料などとして使いみちが増えればコストが安くなっていくと見られています。
このため政府は、水素エネルギーを本格的に活用する「水素社会」に向けて、具体的な計画を進めています。福島県内には太陽光などの再生可能エネルギーから水素を製造する世界最大規模の工場を整備し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで活用することを目指しています。
今後、世界的な開発競争で先行する日本で、水素エネルギーの普及が進むのか、注目されます。