2017年7月11日火曜日

11- 大洗被爆事故 原子力機構のお粗末の数々 原子力のプロ失格

 原子力機構大洗センターで起きた被爆事故について、原子力規制委は6月21、23、30日に立ち入り検査を行いました。
 産経新聞によると、担当部長は核燃料物質の長期貯蔵でガスが発生する可能性があることを知っており、作業前「気をつけろ」と言ったものの担当課長はその意味を理解できなかったため、作業員たちは破裂する恐れがあることを知らないまま作業をしたということです。
 この危険性の周知徹底の不備が決定的ですが、そのほかに「非定常作業計画書」が提出されていなかったことや、除染用のシャワーが使えない状態で長期間放置されていたことなども判明しました。
 原子力のプロにあるまじきお粗末さです。
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      【原発最前線】
「おっかなびっくり」の作業で被曝 原子力のプロ失格
規制委の立ち入り検査で露呈
産経新聞 2017年7月10日
「おっかなびっくりで作業していた」-。日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県大洗町)で作業員5人が内部被曝(ひばく)した事故で、機構側が原子力規制委員会の立ち入り検査に対し、核燃料物質の貯蔵容器の点検作業についてこう話していたことが分かった。計3回の検査で判明した事実は、「日本で唯一の原子力に関する総合的研究開発機関」という原子力のプロにふさわしくないものばかりだった。(社会部編集委員 鵜野光博)

「気をつけろ」を理解できず
 立ち入り検査は6月21、23、30日に行われた。規制委による緊急的な立ち入り検査は異例で、平成25年2月に大量の点検漏れが見つかった高速増殖炉原型炉「もんじゅ」以来。もんじゅも機構の所有施設だ。
 事故は6月6日午前、同センターの燃料研究棟108号室で、作業員がプルトニウムやウランが入った貯蔵容器の蓋を開けたところ、容器の中にあった二重のビニールバッグが破裂し、核燃料物質が飛散。5人が被曝した。

 23日の立ち入り検査で、作業員らの上司に当たる担当部長は、核燃料物質の長期貯蔵でガスが発生する可能性があることを知っており、作業前から「気をつけろ」と言っていたと説明。しかし、その下の担当課長は知識がなく、「気をつけろが何のことか分からなかった」という。規制委は担当部長が具体的な注意喚起ができず、安全指示が不十分だったとみている。

13年前の「膨らみ」生かされず
 担当部長が以前所属していた核燃料サイクル工学研究所(同県東海村)では16年4月、核燃料物質を入れたビニールバッグが膨らむ事象が確認されていた。規制委は昨年暮れの保安検査で、機構の施設などで核燃料物質を作業台に保管するなど不適切な管理があることを指摘。これに対して機構は今年1月、作業台に放置した理由として、13年前にバッグが膨れた事象があったことを規制委に初めて報告した。
 2月には「バッグ内の物質が放射線で分解され、ガスが発生した可能性がある」と説明、その情報を機構内部でメールで共有。担当課長はこのメールを読んだものの、知識がないため特に問題意識を持たなかったという。
 事故が起きた作業の目的は、貯蔵容器の空きスペースの確認と詰め替えだった。規制委から作業台に放置した核燃料物質を適切に保管するよう指導され、収容のため空の容器を作る必要があったという。

慎重に蓋を開けたが…飛散は想定せず
 今回破裂したバッグは、26年前にウラン、プルトニウムなどを封入してから一度も開封されておらず、担当課長らは保管状態や内容物について詳細を把握していなかった。ただ、1~3月に行った別の容器の作業で、バッグの表面から1~3ミリシーベルトの放射線を検出しており、バッグが破損し、容器が汚染されている可能性があることは認識していた。そのため、全ての容器について「おっかなびっくり」で慎重に蓋を開けていたという。
 ただ、バッグの中の核燃料物質が破裂などで飛散する恐れがあることは想定していなかった。
 事前に作成される作業計画書でも、保安規定違反の可能性が高い不備が指摘されている。
 日常的に繰り返し行われることが少ない作業については、「非定常作業計画書」を作ることが求められているが、規制委は20~30年という長期間未開封の容器を開ける作業はこれに該当するとみており、同計画書が作られていなかったことを問題視している。
 また、先述した知識不足から、安全チェックリストでは「爆発、破裂、飛散の恐れはない」と評価。さらに、チェックリストの被曝線量(計画値)で、作業場所の計測値だけを評価し、取り扱う核燃料物質の値を検討していなかった。
 これらの不備を規制委が指摘すると、担当課長らは「検討が不足していた」と繰り返したという。

上水道の不調放置で除染シャワー使えず
 30日の立ち入り検査では、作業員が汚染区域から出る際に使用しようとした除染シャワーが、故障のため使えなかったことが初めて判明。代わりに、50メートル近く離れた別棟からホースを引っ張って水を出し、除染を行った。この後の検査で作業員の1人の肺から2万2000ベクレルのプルトニウムが検出されたが、翌日搬送された施設では非検出。ホースを使った除染が不十分だった可能性が高いとみられている。
 規制委によると、機構は作業施設の上水道が減圧弁の不調で水の出が悪いことを把握していたが、修理していなかった。また、除染で生じる汚染水をためるタンクのポンプも故障しており、他の施設へ廃棄ができない状態だった。

 被曝したとみられる自分の体をシャワーで洗おうとして、水が出なくなった際の作業員の心境は、どんなものだったのか-。明らかになればなるほど目を覆いたくなる安全管理と施設の実情。原子力施設への信頼回復のためには、事故の教訓をどれだけ前向きに生かせるかが問われることになる。