2017年7月8日土曜日

ミサイル攻撃には原発が最も脆弱 原発停止の仮処分を申し立て

 原子力規制委の田中俊一委員長が6日、高浜原発がある福井県高浜町を訪れて地元住民らと意見交換した際に、「北朝鮮からのミサイル攻撃への対策」を問われ、小さな原発を狙うよりも、私だったら東京都のど真ん中に落としたほうがよっぽどいいと思う(要旨)と述べました
 田中氏は後で「不適切だった」と釈明したそうですが、これは原発が攻撃された場合の被害を過少に見せようとしたもので許されません

 「日々雑感」氏が述べているように、ミサイルが仮に原子炉を直撃しなくても原子炉周りのラインが破壊されれば原子炉が暴走し爆発するし、原子炉建屋内の最上階に無防備に置かれている「燃料貯蔵プール」を破壊すれば、莫大な量の放射性物質がまき散らされます。
 日本では使用済み核燃料を処理するルートがないので、「燃料貯蔵プール」には大量の核燃料が貯蔵されています。
 例えば福島第一原発4号機の「燃料貯槽プール」には事故当時、広島原発の14,000発分の放射性セシウムが貯蔵されていました。これが爆撃されて空中に放出されれば、日本はおろか偏西風に乗って少なくとも北半球全体が放射能で汚染されます。

 田中委員長はかつて川内原発が火砕流に襲われる可能性が問題視されたときに「そうなれば九州全体が大打撃を受けるのだから、原発云々の問題ではなくなる」という理解不可能な発言をしました。
 九州全体が大打撃を受けるのは勿論悲劇ですが、だからといって放射能が無制限に世界の空に飛び出ても仕方がないということにはなりません。
 田中氏は本当に原子力乃至放射能の専門家なのかと疑わせる発言の数々です。

 それとは別に、大阪府高槻市に住む女性が、北朝鮮の弾道ミサイルによって日本の原発に被害が出るおそれがあるとして、福井県にある高浜原発3・4号機の運転の停止を求める仮処分を裁判所に申し立てました。
 政府はいま盛んに北朝鮮の弾道ミサイルの脅威を強調し、これ見よがしに「破壊措置命令」を常時発令していますが、そうであるならば、「もしも攻撃されれば回復不能の被害を受けることになる原発は止めなければならない」とする主張です。代理人の井戸謙一弁護士は「北朝鮮が原発を狙う可能性は否定できない。せめて破壊措置命令が出ている間は、原発を止めるべきだ」と話しています。

 政府が本当に北朝鮮のミサイル攻撃があり得ると考えているのであれば、まず全国の原発を停止させ、「燃料プール」に貯蔵されている使用済み核燃料の防護を図ることが最優先されるべきです。
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○○に刃物、「原子力ムラ」の住人に原発。
日々雑感 2017年7月7日
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は6日、再稼働した関西電力高浜原発3、4号機が立地する福井県高浜町を訪れ、住民と意見交換。北朝鮮のミサイル攻撃を想定した対応を問われ、「冗談」と断りつつ「北朝鮮の技術がどの程度か分からないが、小さな原子炉に落とすなら東京都のど真ん中に落としたほうがよっぽどいい」と発言した。

 会合終了後、田中氏は報道陣に対し「例えが不適切だった」と釈明。「平和な国でないと原子力は利用できない。(ミサイル攻撃という)戦争状態に入ることは絶対に避けてほしい」と訴えた。

 田中氏は、住民との会合に先立ち、事故時の防災対策について地元首長らとも意見交換。高浜町に隣接する京都府の山内修一副知事は「住民が理解できる説明が不足している」と苦言を呈した
〔以上「共同」より引用〕

 私が最も危惧している質問を高浜町の住民が原子力規制(推進)委員会の田中委員長にしたようだ。すなわち、原子炉が北朝鮮のミサイル攻撃を受けたならどうするのか、という問い掛けに対して「東京のど真ん中に落とした方がよっぽどいい」と回答したようだ。
 それは殺傷効率をいったのではなく、原子炉という「小さな」ものに命中させるよりも東京のど真ん中を照準に定めて発射する方が的確に日本を混乱に陥れるからだ、ということのようだ。しかし高浜町の住民の質問に対して、田中委員長は誠実に答えたとはいえない。

 北朝鮮のミサイルは何も原子炉そのものを破壊する必要はない。原子炉建屋内の「燃料貯蔵プール」を破壊すればそれで十分に目的は達せられる。そこには使用済み燃料棒がゴマンと蓄積されているからだ。
 燃料貯蔵プールが破壊されれば燃料棒や使用済み燃料棒は冷却水を失って核物質の崩壊熱が高まり、臨界に達するに十分な核物質がある。それだけではない。原子炉建屋を破壊すれば原子炉を正常に運転させるための支援施設も破壊され、原子炉が暴走する可能性は否定できない。
 田中氏は悪い冗談を言ったのではなく、住民の疑問に答えないということで、住民の抱く北朝鮮のミサイル攻撃により放射能汚染というシュミレーションを是認したことになる。原発はその建屋を北朝鮮の通常弾頭のミサイル攻撃に破壊されれば原子炉が直撃を受けなくても放射能が大量に漏れ出して、地域が広範に汚染されることは十分に想定される。

 原子炉が直撃されればその被害たるや核兵器搭載ミサイル攻撃に勝るとも劣らない悲惨な放射能汚染をもたらすだろう。原発に蓄積されている放射性物質は核弾頭の比ではなく、まさに膨大なものだ。
 日本政府は北朝鮮の弾道ミサイル発射実験のたびに「強硬に抗議する」などとトボケたことを言っているが、弾道ミサイル以前に日本はノドン・タイプのミサイルで攻撃対象になっている。それを敢えてICBMの実験を騒ぎ立てるのはナンセンスだ。
 ICBMで騒ぐべきは米国やオーストラリアや欧州諸国だろう。日本は既に北朝鮮のミサイルにロックオンされている。いつ何時、北朝鮮のミサイルが日本海側の原発を攻撃しないとも限らない。能天気に原発再稼働などと平時の対応を進めている政府は危機管理能力を喪失しているとしか言いようがない。
 直ちにすべての原発を停止して、核燃料棒をミサイル攻撃に耐えうる地下施設に移すべきだ。そうした安全策の議論すら始まっていないという能天気ぶりに仰天する。
 マスメディアも原発再稼働を報じるだけでなく、ミサイル攻撃の現実的な脅威を国民に報せるべきではないか。


原発停止求める仮処分申し立て 北朝鮮ミサイルで被害のおそれ
NHK NEWS WEB 2017年7月6日
北朝鮮の弾道ミサイルによって日本の原発に被害が出るおそれがあるとして、脱原発を訴えている大阪の女性が、福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機の運転の停止を求める仮処分を裁判所に申し立てました
大阪地方裁判所に仮処分を申し立てたのは、関西電力高浜原子力発電所からおよそ80キロ離れた大阪府高槻市に住む水戸喜世子さんです。

申し立てでは、北朝鮮の弾道ミサイルに対して政府が破壊措置命令を常に発令しているような状況では、日本の原発に落下して被害が出るおそれがあるとして、命令が出ている間は高浜原発の3号機と4号機を運転しないよう求めています。
水戸さんは「原発が攻撃されたら日本は壊滅的な被害を受けてしまうので恐ろしいです」と話しています。
また、代理人の井戸謙一弁護士は「北朝鮮が原発を狙う可能性は否定できない。せめて破壊措置命令が出ている間は、原発を止めるべきだ」と話していました。
一方、関西電力は申し立てについて「状況が把握できていないのでコメントできない」と話しています。
高浜原発をめぐっては、住民の申し立てを受けて福井地方裁判所と大津地方裁判所が運転を認めない仮処分の決定を出しましたが、その後、いずれも取り消され、3号機と4号機は営業運転を始めています。