10日、原子力規制委が東電新経営陣から原発の廃炉や再稼働に関して聴取し、田中委員長が福島第一原発の廃炉で「東電には主体性が見えず危機感がある」と指摘。「主体性のない事業者に再稼働の資格はない」と述べたことがニュースになりました※1。
※1 7月11日 規制委員長「東電に主体性見えず」 福島第一廃炉に危機感
規制委が格好いいところを見せたわけですが、その内実は違っていると天木直人氏が指摘しました。
福島原発の廃炉で当面の最大の問題はトリチウムを含む汚染水で、当面は貯水タンクで貯蔵するしかないのですが何しろ発生量が多いので来年にはタンクを置く場所がなくなるという切羽詰まった状況にあります。
あるシンクタンクの調査によればトリチウム水の処理費は2000万円/トンなので、貯留分の100万トンを処理するには20兆円がかかるということです※2。
※2 3月16日 原発廃炉に70兆円必要 政府試算の3倍 保守系調査機関が算出
トリチウム汚染水の処理については規制委は早くから海洋放出を打ち出していますが、それを国民が簡単に容認する筈はありません。そうかといって20兆円かかる対策案を東電が提案できる筈もありません。
この問題については、規制委は東電を攻め立てるということではなく、原発に関する技術中枢としての責任をもって対策を提案すべき立場です。
天木直人氏のブログを紹介します。
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汚染処理水は海に放出するしかないと発言した川村東電会長
天木直人のブログ 2017-07-14
東電の川村会長がきのう7月13日、報道各社とのインタビューで語ったという。
(メルトダウンした核燃料の冷却から生じる)放射性物質トリチウムを含んだ汚染水を海に放出するしかない、その判断は、もう、している、と。
この発言を知って私は驚いた。そんなことが許されるのかと。
しかし、その記事を報道をよく読めば、さらに驚いた。
トリチウムは通常の原発でも海に放出されており、原子力規制委員会も東電に早く海洋放出しろと求めて来たというのだ。
しかし、東電は風評被害をおそれる地元漁業者らの反対で、放出できないまま貯水タンクに保管し続けるしかなく、もはやそれが限界にあるというのだ。
川村会長はこう語ったという。国の結論を待って次の展開をすることは致し方ないと。我々が、(放水しても)大丈夫と言っただけでは、皆さん、分かったとは言わない、非常にしんどい立場だと。国というか県というか、いろんな方が支援していただかないと、もうがっばりきれないと。
それはそうだろう。ただでさえ袋叩きにされてきた東電だ。その東電が、汚染水の海洋放出など一存で決められるはずがない。
しかし、国はつねに原発の維持・再稼働は安全性の確認をすべてに優先すると繰り返し、その判断を原子力規制委員会に押しつけてきた。
安全性の判断を押し付けられた原子力委員会は、我々が出来るのは安全性の判断だけで、政治的判断は出来ないと逃げてきた。そして、その原子力委員会が、国ではなく、東電を、「国が判断しないのを言い訳にしている」と批判する。まるで東電いじめだ。
こんな深刻な川村東電会長の発言を報じたのは、共同通信を引用した地方紙と原発問題に熱心な東京新聞だけで、その他のメディアは一切報じていない。
この国は原発を持つ資格はない。
ましてや再稼働など論外である(了)