2024年4月22日月曜日

柏崎刈羽原発「核燃料装荷」なぜ今? 東電に聞いてみたが

 これまで原発への核燃料装荷は地元の同意を受けてから行ってきましたが、柏崎刈羽原発7号機への装荷ではその過程を省略しています。

 毎日新聞がその理由を聞いたのに対して、東電「今回の燃料装荷は設備の健全性を確認するために行った。作業を進める中で課題が見つかれば立ち止まり、必要な対策を講じる」と回答し、核燃料の装着には地元の同意は必要ないと述べました。
 これまで様々な不都合から再稼働に向けての動きが長期間に渡り止まっていたので、その焦りが大きいのでしょう。

 一方、新潟県内全30市町村で構成する「原子力安全対策に関する研究会」の代表幹事を務める長岡市の磯田達伸市長は3月29日の記者会見で「原発の安全性や避難の実効性など積み残された課題が一定程度解決されない限り、再稼働の議論に入るべきではない」と慎重な対応を求めています。
 この考え方が真っ当です。但し「避難の実効性」に関しては「一定程度の解決」ではなく完全な解決策が実施済みであることが再稼働の条件になります。
 花角知事の発言は当たり障りのないものに徹していて真意が測りかねます。磯田長岡市長に見習ってもっと分かりやすく話すべきです。
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柏崎刈羽原発「核燃料装着」なぜ今?東電に聞いてみた
                            毎日新聞 2024/4/21
 東京電力は4月15日、再稼働を目指している柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の原子炉に核燃料の装着を始めた。東電の原発事故後に再稼働した全国の6原発12基は、いずれも地元が同意した後に核燃料を装着しており、地元の同意前は異例だ。なぜ今、前例を破り、核燃料の装着を始めたのか、東電に聞いてみた。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】

 新潟県の花角英世知事は再稼働に同意するか否か、態度を明らかにしていない。花角知事は能登半島地震や2022年の大雪を踏まえ、原発事故時の避難に課題があると指摘。4月3日の記者会見では「避難の課題はたくさんある。いろいろな課題ごとに整理をしてきているので、少しずつ進んでいくと思う」と慎重な考えを示している。
 柏崎刈羽原発をめぐっては、斎藤健経済産業相が3月、花角知事に電話で再稼働への同意を要請。斎藤氏は4月16日の閣議後会見で「原子炉への燃料の装荷は再稼働そのものではない。設備や機能の健全性を確認するためのプロセスの一環だ」としたが、「避難道路の整備を含む原子力防災対策については、関係府省と連携しながら取り組んでいきたい」と述べるにとどまった。

◇「課題は解決していない」と長岡市長
 柏崎刈羽原発は7号機が17年12月、原子力規制委員会の安全審査に合格したが、21年に東電社員のIDカードの不正利用などが相次いで発覚。原子力規制委は事実上の運転禁止を命じたが、改善がみられたとして23年末に運転禁止命令を解除した。
 新潟県では柏崎刈羽原発が立地する柏崎市と刈羽村の両議会が早期再稼働を求める請願を採択し、両首長は再稼働に前向きな姿勢を示している柏崎市の桜井雅浩市長は「原子力規制委の検査の結果は昨年12月に出ている。原発の安全性のジャッジは国のみにできることで、国のみが責任を負うべきだ」と、3月1日の記者会見で述べている。
 一方、県内全30市町村で構成する「原子力安全対策に関する研究会」の代表幹事を務める長岡市の磯田達伸市長は3月29日の記者会見で「原発の安全性や避難の実効性など積み残された課題が一定程度解決されない限り、再稼働の議論に入るべきではない」と述べ、慎重な対応を求めている。

◇知事は「信を問う」と言うが
 今回の核燃料装着は、東電が「7号機のプラントの健全性確認を進めるため」として原子力規制委に申請し、承認を受けた。すべての核燃料を装着するには2週間程度かかるが、必要な検査に合格すれば、再稼働に向けた準備が整うことになる。
 しかし、東電が実際に7号機を再稼働させるには、地元の柏崎市や刈羽村、新潟県の同意が必要となる。花角知事は今回の核燃料装着について「東電はやりたいことを自分たちでできるところまで進めるということなのだろう」と述べ、静観する構えだ。
 花角知事は再稼働について「県民に信を問う」としているが、具体的な時期や方法は明らかにしていない。このため地元では「最終的に信を問うという知事の言葉は、この4、5年間ずっと繰り返されているが、信を問う方法は明らかになっていない。議論がいつまで続くのかもわからない」(桜井・柏崎市長)といった不満の声もある。

◇核燃料の装着に地元同意は必要ない?
 能登半島地震は原発事故時の避難に課題があることを浮き彫りにし、柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる問題をさらに複雑にしている。住民の不安が高まり、地元の同意が得られない現状で、東電はなぜ核燃料を装着したのか。
 そんな筆者の質問に東電は「今回の燃料装荷は7号機の設備の健全性を確認するために行った。作業を進める中で課題が見つかれば立ち止まり、必要な対策を講じる」と回答。再稼働とは異なり、核燃料の装着には地元の同意は必要ないとの考えを示した。

 7号機では4月17日、制御棒の駆動用モーターの電源に不具合が発生し、東電は核燃料の装着作業を一時中断した。原子力規制委の山中伸介委員長は同日の記者会見で「十数年ぶりに燃料を装荷する試験なので、いろんなトラブルは生じるだろうと思っている。安全上、何か問題のあることではないが、慎重にやっていただきたい」と述べた。
 東電によると、柏崎刈羽原発が再稼働すると1基当たり年間約1100億円の収支改善効果があるという。東電が原子力損害賠償・廃炉等支援機構と21年8月に策定した「第4次総合特別事業計画」では、7号機を23年10月、6号機を25年4月に再稼働させると「仮置き」している。

 7号機で想定した再稼働の時期は、既に半年ほど過ぎている。1基約1100億円の収支改善効果は東電にとって大きい。柏崎刈羽原発は12年3月に定期点検のため、6号機が停止して以来、全7基が停止したままだ。これは東電の経営にとって重しとなっている。
 福島第1原発事故の賠償や廃炉費用を捻出するため、東電は柏崎刈羽原発の核燃料の装着を急ぎ、一日も早い再稼働に持ち込みたいのではないか。原発回帰の岸田政権の後押しもあり、東電は再稼働に前のめりになっているのではないか
 さらなる筆者の質問に、東電は「そんなことはない。再稼働は地元の理解があってのことと考えている。再稼働のスケジュールは申し上げる段階にない」と否定した。それ以上は、聞いても多くを語らなかった。
 これまでも東電は柏崎刈羽原発の再稼働を目指してきたが、何度も先送りとなってきた。地元同意は見通せないが、核燃料の装着は東電が原子力規制委のお墨付きを得て、今度こそ本気で再稼働を目指す意思表示であることは間違いない。