2022年4月10日日曜日

島根原発安全協定 鳥取 停止要求の項目新設/島根県は県以外は再稼働同意

 島根原発2号機を巡り、同社と周辺自治体の鳥取県、同県の米子市、境港市は8日、安全協定を改定し、県が原子炉の運転停止を要求できるとする項目を新たに定めました。周辺自治体の協定に運転停止を求める権限が明記されるのは全国初ということです。ただし再稼働への事前了解権は盛り込まれず、「事前報告」という文言にとどまりました。

 島根県側の30キロ圏の6自治体は再稼働に同意し残るは議会の意向を踏まえて島根県が判断するのみとなっています
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島根原発安全協定を改定 鳥取、停止要求の項目新設
                             共同通信 2022/4/8
 中国電力が再稼働を目指す島根原発(松江市)を巡り、同社と周辺自治体の鳥取県、同県の米子市、境港市は8日、安全協定を改定し、鳥取市の知事公邸で調印式を行った。県が原子炉の運転停止を要求できるとする項目を新たに定めた。県によると、周辺自治体の協定に運転停止を求める権限が明記されるのは全国初
 県側が要求していた島根県と松江市には認められている再稼働への事前了解権は盛り込まれず、「事前報告」という文言にとどまった。再稼働する際は鳥取県側に意見があれば中国電は誠意を持って対応するが、同意を得ることは義務付けられない。


残るは島根県 島根原発2号機再稼働判断、なお残る課題
                           毎日新聞 2022年4月8日
 中国電力が再稼働を目指す島根原発2号機(松江市、出力82万キロワット)について、地元自治体による同意の手続きが最終局面を迎えている。3月末までに松江市のほか、原発から30キロ圏の周辺6自治体が同意した。残るは議会の意向を踏まえて島根県が判断するのみとなっている。一方、避難計画では事故発生時の住民の避難先に岡山、広島両県も含まれているが、計画の実効性などの課題は残されたままで、「再稼働ありきで進んでいるのでは」など疑問視する声も上がっている。
 2号機は東京電力福島第1原発と同じ「沸騰水型」で、県庁所在地に建つ唯一の原発。再稼働を巡っては、松江市が2月、他に先駆けて同意を表明。3月に入り、島根県の出雲、安来、雲南の各市と鳥取県、同県米子、境港両市の周辺6自治体も相次いで同意した。松江、出雲、米子、境港の4市では、市民団体が署名を集めて再稼働の是非を問う住民投票条例制定を直接請求したが、軒並み議会で否決され、改めて民意が問われることはなかった。
 松江市の上定(うえさだ)昭仁市長は同意を表明する際、「安全性、必要性、避難対策、地域経済への影響を重視し、熟慮を重ねた」と説明。避難計画については繰り返しの訓練と継続的な検証が必要としつつ、「現時点では最善」との考えを示した。また、特殊鋼関連企業が集まる安来市の田中武夫市長は「地域経済のためにも、市民の安全安心を担保できるのならやむなし」と再稼働の必要性を強調した。
 一方、避難計画の実効性や放射性廃棄物の最終処分などを不安視する声は根強い。関係自治体の議会でも「地震などの自然災害と原発事故が同時に発生したら逃げられないこともあり得る」「核燃料サイクルは破綻し、処分のめどが立っていない」などの批判的な意見が上がった。
 懸念の声は、遠く離れた広島県でも上がった。県境に位置し、避難計画で約6800人の避難者を受け入れることになっている庄原市。市議会は3月、再稼働に反対する委員会発議の決議案を賛成多数(賛成11、反対8)で可決した。
 決議では、自力で避難が難しい人の支援や自然災害で避難ルートが使えない場合の対応など避難計画の実効性に多くの課題があることを指摘し、「(住民の命と安全の)保証がないまま再稼働すべきではない」と明記。30キロ圏内の自治体との認識の違いが明確になった。決議案を提案した赤木忠徳市議は「事故が起きればもちろん避難者を受け入れる。ただ、避難計画はあまりにも具体性に欠けるのではないか。再稼働を認める前に、原発の安全性を含めて確実なものにしてもらいたいという思いがある」と強調する。
 再稼働に同意するのか、最終判断を下す島根県の丸山達也知事は「関係自治体や県議会などの判断を踏まえて総合的に判断する」と述べるにとどまる。島根県以外の同意が出そろい、再稼働に向けて道筋がついたようにも見える。そんな中、一石を投じた庄原市議会の決議については「幅広く意見をいただく立場なので参考にしないといけない。(再稼働に)プラスには働かない」と含みを持たせる。
 脱原発を訴える保母武彦・島根大名誉教授(地域経済学)は「避難計画などの問題が解決していない中、再稼働は拙速」と指摘。ロシア軍がウクライナの核施設に攻撃を仕掛けたことなどを踏まえ、「新たに考えなければならない対策が浮上している。一度立ち止まって議論を深めるべきだ」と警鐘を鳴らす。【目野創、松原隼斗】