福島第1原発事故後、原子力業界が人材確保に苦慮しています。再処理施設の人員は、運転の最盛期だった1994年ごろは協力会社を含めて約1000人でしたが、施設の維持管理が主になった現在は約760人に縮小しました。国内の原発は廃炉時代を迎え、24基が廃炉になり作業に30~40年程度を要します。安定的な人材確保は欠かせないのに対して業界を志す学生は少なく、毎年開いている合同企業説明会「原子力産業セミナー」の参加学生数は、10年度は1903人でしたが、21年度は380人にとどまりました。
茨城新聞が報じました。
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原子力人材足りぬ 苦慮する業界 除染や解体、深刻さ増す
茨城新聞クロスアイ 2022/4/5
東京電力福島第1原発事故後、原発への逆風がやまず、原子力業界が人材確保に苦慮している。国内は「廃炉時代」を迎え、原発関連の東海再処理施設も廃止が決まっている。施設を畳むには長期間を要する中、担い手の先細りが懸念される。脱炭素社会の到来で原発に再び脚光が当たる流れもあり、関係者は風向きの変化に期待する。
■若手少なく
「長期にわたる廃止措置で非常に重要かつ困難な課題。対応を定期的に報告してほしい」
2月28日、原子力規制委員会の審査会合。廃止措置に入る日本原子力研究開発機構(原子力機構)東海再処理施設(茨城県東海村)の審査で、人材確保が議題となり、規制委側が念押しした。
原発の使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出す「再処理」をする同施設は、2007年に運転停止、14年に廃止が決まった。施設は再処理に伴って生じた高レベル放射性廃液を抱え、廃止には約70年かかる。
会合で原子力機構は、運転経験者の退職や職員の年齢構成の偏りを挙げ、「廃止措置を担う若手技術者の人材確保と技術継承が困難な状況」と説明した。
原子力機構によると、再処理施設の人員は、運転の最盛期だった1994年ごろ、協力会社を含めて約1000人。施設の維持管理が主になった現在は約760人に縮小した。定年退職の増加や採用控えが重なり、職員は40~50代が多く、20~30代が減った。除染や解体が本格化すれば人手はさらに必要となる。
原子力機構の担当者は「20年後に管理職の年齢層が足りなくなる」と見通しを語る。中途採用を実施するほか、施設を熟知する運転経験者の知識などをデータベース化し、技術継承を図る考えだ。
■需給ギャップ
日本原子力発電東海第2原発(東海村)は2011年3月の東日本大震災後、運転停止が続く。国内で同型原発は稼働しておらず、社員を他電力に出向させ、別型原発の運転を経験させている。
国内の原発は廃炉時代を迎える。建設中も含めた60基のうち24基が廃炉になり、作業に30~40年程度を要する。安定的な人材確保は欠かせない一方、業界を志す学生は少ない。
日本原子力産業協会(東京)は原子力関連の合同企業説明会「原子力産業セミナー」を毎年開いている。10年度の参加学生数は1903人だったが、原発事故後は大幅に減り、21年度は380人にとどまった。参加社数は事故後、34社に下がったものの、最近は増加傾向で、21年度は65社に上った。人材の〝需給ギャップ〟状態に、同協会の担当者は「人材確保の難しさが表れている」と話す。
■「親が反対」
大学側も「原子力離れ」に悩む。茨城大(水戸市)の大学院は09年度、原子力工学を全般的に学ぶ教育プログラムを立ち上げた。福島第1原発事故の逆風で参加学生は減少、約3年前にプログラムを縮小した。
原子力教育を担当する関東康祐教授は「原子力を志望して親に反対された学生もいた。再稼働が進まず、学生にとって魅力的ではない」と語る。その上で「専門的な教育を受けていない人が原子力に関われば、事故の確率も上がる」と、人材難による安全への懸念に触れた。