2022年4月28日木曜日

柏崎刈羽原発のテロ対策不備は「柏崎刈羽固有の問題」規制委報告

 柏崎刈羽原発でテロ対策の不備が相次いで発覚した問題で、原子力規制委は27日、他の原発との比較の結果、テロ対策の責任者が他の業務を兼ねているためテロ対策に当たる時間が5分の1などと少ないことや、関連会議に参加していない点などが明らかになり、一連の問題は柏崎刈羽原発固有のものだったと認定しました。

 規制委は今後、追加検査を継続し、核物質防護を巡る業務環境や組織文化など8項目について東電の対策を評価。最終報告書をまとめた後、是正措置命令を解除するかを議論するということです
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柏崎刈羽原発のテロ対策不備は「柏崎刈羽固有の問題」規制委報告
                             毎日新聞 2022/4/27
 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)でテロ対策の不備が相次いで発覚した問題で、原子力規制委員会は27日、改善策の実効性や問題の背景に関する検査の中間報告をまとめた。他の原発との比較の結果、テロ対策の責任者が他の業務を兼ねているためテロ対策に当たる時間が少ないことや、関連会議に参加していない点などが明らかになり、一連の問題は柏崎刈羽原発固有のものだったと認定した。
  上空から見た柏崎刈羽原発
 柏崎刈羽原発では昨年、敷地内への侵入を検知する機器が16カ所で故障し、うち10カ所でずさんな代替措置しかとられていなかったことや、運転員が同僚のIDカードを使って中央制御室へ不正侵入したことなどが相次いで発覚した。東電は昨年9月に原因などをまとめた報告書で、追加の生体認証装置の導入など36項目の改善策を提示。これについて規制委が検査を進めていた。

 規制委の検査では、他の電力会社を含む国内全原発のテロ対策担当者や、東電社員らに聞き取りを実施。その結果、柏崎刈羽原発だけが、テロ対策の責任者が関連会議に参加しておらず、対策本部で執務に当たる機会も極端に少なかった。他原発では、侵入検知器の故障時の対応などにも問題は見られなかった。そのため、一連の不備は「他電力に共通する問題や東電の全社的な問題ではなく、柏崎刈羽原発に固有の問題だ」と断じた。

◇踏み込んだ指摘なし
 ただ、なぜ柏崎刈羽原発だけで一連の不備が起きたかについての踏み込んだ指摘は無かった。
 一方、東電の報告書については、複数の侵入検知器が同時期に故障したことへの技術的な原因分析や、現場の発電所員に関わる組織の弱みなど3項目の検証が不十分だとして、再検証を要求。改善策の中に、現場実態に即した実効性のあるテロ対策のマニュアル策定も入れるよう求めた。
 原発再稼働の前提となる今後の検査については、経営陣の関連業務への関与など8項目を重点的に確認するとした。昨年4月に出された核燃料の移動禁止命令の解除には、この8項目の改善が必要となる。【吉田卓矢、土谷純一】


柏崎刈羽原発、核物質管理の責任者が別の仕事兼務…
   防護業務の比率は「5分の1」
                             読売新聞 2022/4/27
 東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)のテロ対策に重大な不備が見つかった問題で、原因や改善状況を調べてきた原子力規制委員会は27日、中間報告書をまとめた。報告書は、核物質防護管理の責任者が別の仕事を兼務し、防護業務の比率が「5分の1程度」と他の原発より著しく低かったなどとして同原発固有の問題だと結論づけた。
 同原発を巡っては、所員が他人のIDカードを使って中央制御室に不正に入った問題が昨年1月に発覚。侵入者を検知する複数の設備が長期間故障していたにもかかわらず対策が不十分だった問題も判明し、規制委は昨年4月、事実上の運転禁止命令となる「是正措置命令」を出していた。
 規制委の事務局である原子力規制庁は、昨年10月から同原発で追加検査を実施。核物質防護の実態を調べるため、東電以外の全電力会社も調査した。
 その結果、柏崎刈羽原発の核物質防護管理の責任者は労災事故の対応業務なども兼任しており、規制庁の調査に対し防護関連の業務比率が「5分の1程度」と回答。核物質防護に関する会議に出席せず、防護本部への出入りも少なかった。
 他の電力への調査では、これほど業務比率が低い責任者はいなかったという。このため規制委は報告書で一連の問題を「他電力に共通する問題や東電の全社的な問題ではなく、柏崎刈羽原発に固有の問題」とした。
 一方、同原発内で行われた複数の工事で安全を軽視し、コストダウンを優先させる不適切な指示や技術検討があったかについても調べたが、報告書では「形跡はなかった」としている。

 規制委は今後、追加検査を継続し、核物質防護を巡る業務環境や組織文化など8項目について東電の対策を評価。最終報告書をまとめた後、是正措置命令を解除するかを議論する。最終報告書をまとめる時期については明言していない。
 原子炉等規制法は、原子力施設を持つ事業者に対し、核物質防護管理の責任者を少なくとも1人置くことを義務付けている。