2022年6月2日木曜日

02- 志賀原発に活断層問題 新たな調査法で進展するか

 志賀原発の敷地内に1号機の真下を通るS1断層など10本断層があり、1でも活断層と評価されれば廃炉を余儀なくされます。

 16年4月、国の有識者会合は活断層と解釈するのが合理的だ」との判断を下しました。それに対して北陸電力は約100億円の費用をかけて様々な調査を実施し新たな調査方法「鉱物脈法」を取り入れ、10本あるすべての断層で少なくとも1つは鉱物が割れていないことを提示しました。
 22年5月の審査会で原子力規制委は、「活断層を疑うような点はみられない」との評価に変わりましたが、「写真だけではあいまいな部分もある。現地調査でしっかりと確かめたい」とされました。
 現地調査は、年内雪が降る前に実施される予定です。石川テレビが報じました。
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新たな調査法で進展 志賀原発に活断層はあるのか? 年内にも現地調査へ…再稼働へ前進か?
                                FNNプライムオンライン(石川テレビ) 2022/6/1
志賀原発1号機の真下を通るS1断層。2016年には国の有識者会合で「活断層と解釈するのが合理的」と評価されている。しかし北陸電力は新たな調査方法で「活断層ではない」と主張している。
志賀原発が停止して11年。原子力規制委員会が出した結論とは…。
   【画像】北陸電力の志賀原発

福島第一原発事故後の新基準で…活断層となれば廃炉の危機
新潟県佐渡市とともに「能登の里山里海」として、日本で初めて世界農業遺産に認定された石川県能登地区。そのちょうど真ん中にある石川県志賀町には2つの原発がある。それが志賀原発だ。
そんな志賀原発を抱える北陸電力に、2012年、激震が走った。
2011年の福島第一原発事故を受けて、国は原発再稼働について新たな規制基準を設けたが、この中に、「12万年~13万年前以降に活動した活断層の上に原発の重要な施設は建てられない」というものがあったのだ。仮に原発がすでに建っていても、活断層と分かれば廃炉を余儀なくされる。

有識者会合の委員明らかに活断層だ
志賀原発 1号機の真下を通るS1断層。建設当時のスケッチを見た委員の一人がこのように発言した。
しかし、志賀原発1号機の建設工事が始まったのは1988年で、1993年には営業運転を開始している。この時、国と専門家は同様のスケッチを見ているが「波による浸食」という北陸電力の主張を認め、建設を許可している。そして、スケッチで描かれた地層は建設工事によって削り取られているのだ。
このままでは廃炉を余儀なくされてしまう…、そう考えた北陸電力は、原子炉のそばにトンネルを掘るなどして、S1断層の活動性がないことを訴えてきた。

「活断層と解釈するのが合理的」2016年 有識者が指摘
しかし2016年4月、国の有識者会合はこう結論付けた。
有識者会合活断層と解釈するのが合理的だ
実はこの結論が出る2年前、北陸電力は、電気出力は1号機の倍以上となる志賀原発2号機(2006年に営業運転開始)の審査を申し入れている。志賀原発を重要な電源の一つとみなしている北陸電力にとって、審査を先行させることで再稼働に道筋をつけるためだった。
この2号機の審査会合が、S1が活断層と指摘されてから2ヶ月後の2016年6月に始まった。そこで問題となったのが、志賀原発の敷地内にある10本の断層だ。この中には、S1も含まれる。

「活断層ではない」北陸電力が主張した新たな証拠
敷地内にある10本の断層のうち、1つでも活断層と評価されれば志賀原発は廃炉を余儀なくされる。北陸電力は約100億円の費用をかけて様々な調査を実施した。活断層と評価した有識者の評価をどのように覆すか。取り入れたのは新たな調査方法「鉱物脈法」だ。
これは600万年より前にできたと見られる鉱物を顕微鏡で調べ、断層と疑われるところで、その鉱物が割れていないことを証明するもの。600万年より前にできたとみられる鉱物が割れていなければ、その断層は12万年~13万年前以降に活動していない証拠となる。
北陸電力は10本あるすべての断層で、少なくとも1つは鉱物が割れていないことを提示し、「活断層ではない」と主張した。
そして迎えた、2022年5月の審査会合。原子力規制委員会の評価は…
原子力規制委員会のメンバー活断層を疑うような点はみられない。おおむね評価する

年内に現地調査実施も再稼働への道のりは遠く…
新たな調査方法を提示し、北陸電力は2016年に示された有識者会合の判断を覆した。しかし原子力規制員会はこう付け加えた。
原子力規制委員会のメンバー写真だけではあいまいな部分もある。現地調査でしっかりと確かめたい
慎重な判断を示した原子力規制委員会。北陸電力は「現地調査でしっかりとお見せする」と胸を張って答えた。
会合後、現地調査の意義を記者団に問われた原子力規制委員会は…
原子力規制委員会のメンバー活断層の疑いがあるから現地調査に行くわけではない。北陸電力の主張は資料だけを見れば、矛盾することはない。ただし、評価対象の断層の中には、1つの鉱物の結果だけで「活断層ではない」としているものもある。私たちが現地で実物を見れば「活断層ではない」と、より自信をもって言い切れる。雪が降る前、年内には現地調査を実施したい

志賀原発の敷地内にある断層が「活断層ではない」と判断されれば、北陸電力は、再稼働に向けたスタートラインにようやく立つことができる。しかし、現地調査が年内に実施されても、その後に、現地調査を評価する審査会合が開かれることが決まっている。そしてさらにその後、地震や津波などの想定が正しいかや、それに対する安全性に問題がないかなどが厳しくチェックされる。
さらに再稼働のいちばんのハードルは、住民の理解だ。北陸電力は1999年、志賀原発1号機で国内初の臨界事故を起こしながら隠ぺいしていた過去がある。

ロシアのウクライナ侵攻や円安による物価高、さらにはカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を、全体としてゼロにすること)を掲げる日本にとって、原発は重要なエネルギーと位置付けられている。北陸電力も志賀原発の再稼働を目指していて、国も事業者もその思惑は一致している。
しかし、福島第一原発事故を経験した私たちにとって、志賀原発の再稼働は必要なのかどうなのか。現実的に再稼働まで時間がかかる今だからこそ、私たちは今後のエネルギー政策をどうするか議論する必要がありそうだ。 (石川テレビ)