2022年6月17日金曜日

復興拠点で避難が解除されても見通せぬ帰還 福島

 大熊町に設定された特定復興再生拠点区域(復興拠点)について、政府と大熊町などは16日、今月30日に避難指示を解除する方針を明らかにしました。避難指示解除は古里に戻りたい住民には吉報となりますが、実際に帰還できるのは少数とみられます

 復興拠点では当面コンビニエンスストアや医療機関が再開する見通しも立たたず居住するにはあまりにも不便であることや、夫婦間でも、一方が帰還を望んでも他方が反対で実行できないなど様々な困難さがあります。
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原発事故11年「私の知らない大熊に」 避難解除、見通せぬ帰還
                             毎日新聞 2022/6/16
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の帰還困難区域のうち、大熊町に設定された特定復興再生拠点区域(復興拠点)について、政府と大熊町などは16日、今月30日に避難指示を解除する方針を明らかにした。
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 原発事故の発生から11年3カ月あまり。立ち入りが厳しく制限されてきた帰還困難区域の避難指示解除は、古里に戻りたい住民には吉報となる。一方で実際に帰還できるのは少数とみられる。すでに大熊町は企業や新たな住民を呼び込む再開発事業に乗り出しているが、先行きは見通せない。
 大熊町は福島第1原発が立地する自治体の一つ。避難指示が解除される復興拠点には、福島第1原発の最寄り駅として栄えたJR常磐線大野駅も含まれる。2017年以降、国費で優先的に除染が進められ、電気や水道などのインフラも整備された。21年12月には事前に申請した住民向けの「準備宿泊」も始まった。

 だが、実際に登録したのは対象約2200世帯、約5900人のうち18世帯49人にとどまった。復興拠点では当面コンビニエンスストアや医療機関が再開する見通しも立たないうえ、避難先で職場や進学先を見つけて新たな生活基盤を築いた人は多い。今月4、5日にあった住民説明会では、帰還を望む人たちからも先行きを不安視する声が多く上がった
 こうした中、町は国の交付金を活用し、大野駅周辺の民有地を買い取って再開発事業を進めている。駅西口には原発の廃炉関連企業などが入居するビルや商業施設を建てる計画だ。吉田淳町長は「帰りたい、移住したいと思われる魅力あるまちづくりをする」と語る。
 ただ、こうした対応が住民の背中を押すとは限らない。自宅を解体せずに残した女性は(71)は「周囲は更地ばかりで、帰るたびに私の知らない町になっている」とこぼす。かつて東電の社員だった男性(70)は修繕した自宅で家財道具や日用品を新調し、庭の雑草を刈るなどしてきた。だが妻に帰還の意思はなく、一人で帰還する気にはなれない。「多少不便でも俺はここで死にたい。でも母ちゃんが来ないんじゃ無理だ」と言い、今後も準備宿泊と同様、避難先と大熊町の2軒の自宅を行き来するつもりだ。【尾崎修二】