2022年6月13日月曜日

帰還困難区域で初の居住再開 福島・葛尾の復興拠点

 帰還困難区域のうち、福島県葛尾村野行地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)は12日午前8時、避難指示が解除されました。県内7市町村の帰還困難区域で、居住前提の避難解除は初めてです。1日現在、拠点内に30世帯82人の住民登録があり、4世帯8人が帰還を希望しています。

 河北新報が、復興支援に携わる福島大 相双地域支援サテライト長の仲井康通特任教授に、今後の課題を聞きました
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帰還困難区域で初の居住再開 福島・葛尾の復興拠点
                         河北新報 2022年6月12日
 東京電力福島第1原発事故で福島県葛尾村野行地区に設定された帰還困難区域のうち特定復興再生拠点(復興拠点)の避難指示が12日午前8時、解除される。県内7市町村の帰還困難区域で、居住前提の避難解除は初めて
 復興拠点は宅地や主要道路を含む約95ヘクタールで、帰還困難区域の野行地区(1600ヘクタール)の6%に当たる。1日現在、拠点内に30世帯82人の住民登録があり、4世帯8人が帰還を希望している。昨年はコメの試験栽培が行われた。

 居住に向けた復興拠点の避難解除は大熊、双葉両町が今月以降、浪江、富岡両町と飯舘村が来春を予定している。
 居住を前提としない復興拠点の避難解除では双葉、大熊、富岡3町で2020年3月14日のJR常磐線富岡-浪江間(約20・8キロ)の運行再開に伴い、線路や駅周辺の道路などが先行解除された。
 復興拠点から外れた地域の避難解除は今夏にも帰還意向の聞き取りを始め、早ければ24年度に除染を始める方針。

仲井康通氏「地域で連携、復興主導を」 福島大・相双地域支援サテライト長 
仲井康通特任教授
 東京電力福島第1原発事故から11年余りが経過する中、福島県葛尾村野行地区の帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点(復興拠点)の避難指示が解除される。復興支援に携わる福島大地域未来デザインセンター相双地域支援サテライト長の仲井康通特任教授(70)に、今後の課題を聞いた。(聞き手は福島総局・岩崎かおり)

 -帰還困難区域では居住を前提とした初めての解除となる。
 「帰還困難区域の避難指示解除に向けた第一歩であり、非常に良いことだ。ただ、これから帰還困難区域全域をどうするのか、人がどの程度戻るのかという課題は残る。避難から11年がたち、帰還が進むかと言えば難しい」

 -帰還の難しさはどこにあるのか。
 「子育て世代は仕事や子どもの学校、高齢者は医療や介護の面で避難先の生活が安定している。古里への思いや懐かしさはあっても、避難指示解除までの時間がかかるほど、戻るにはかなりの決断が必要になる」
 「比較的早い時期に避難指示が解除された広野町などでは、かなり住民が戻っている。一方、避難から6年がたち一部で避難指示が解除された富岡町や浪江町では1割程度にとどまる」

 -復興拠点の避難指示解除は大熊、双葉両町が今月以降、浪江、富岡両町と飯舘村が来春を予定する。
 「双葉町の場合、初めて住民帰還がかなう本当の第一歩となる。いずれの町でも道路や商業施設などができて、ハード面での復興は進む。帰還というソフト面は、そう簡単ではない生活する上での充実感や生きがいなどを、どう打ち出していくかが鍵となる」

 -原発事故で避難を経験した県内12市町村では移住定住への取り組みも進む。
 「外から来る人は市町村ではなく、広い地域全体に魅力を感じて選ぶため、広域的な魅力の発信が重要。大切なのは、住民が『ここはいい町だ』と誇りを持ち、楽しく暮らすこと。そうならないと、外から人を呼び込むことはできない」

 -今後の復興の在り方は。
 「これまでは、どちらかと言えば国主導で復興事業が進められてきた。原発事故直後はそれで良かったが、11年がたった。国主導の状況が続けば、原発を誘致したときと同じことになるのではないか。地域の思いがしっかり反映される復興でなければならない」
 「双葉町の避難指示が解除されると、少なくとも12市町村全てで住民が戻れることになる。双葉郡や浜通り全体で連携してそれぞれの強みを生かし、地域主導で20年先、30年先の未来を描く必要がある

なかい・やすみち] 兵庫県市川町出身。京都大理学研究科博士課程中退。1981年、福島県に入庁し、産業創出課長などを務め、2012年4月に福島大うつくしまふくしま未来支援センター(現在の地域未来デザインセンター)特任教授に就任し、13年4月から相双地域支援サテライト長。