2022年6月6日月曜日

社説:島根原発「同意」 避難計画に不安が残る(京都新聞)

 中国電力島根原発(松江市)の再稼働について地元同意手続きがそろい、中国電は安全対策工事が完了すれば、来年度にも再稼働を目指しますが、京都新聞が「避難計画に不安が残る」とする社説を出しました。
 同原発は全国で唯一県庁所在地に立地し、30キロ圏内には約46万人が住んでいて、全国で3番目の多さです。松江市要支援者5~30キロ圏に約2万8千人、5キロ圏内に約1700人居住しそれぞれ全国最多です。
 仮に避難計画が書類上で出来上がっていたとしても、実際にその通りに避難できるという「実効性を有している」ことが死活的に重要です。本来はその点が再稼働できるどうかを決める最後の関門なのですが、これまで司法でも、唯一の例外を除いてそれを考慮して来ませんでした。
 例えば2000台のバスが必要であるという計画なら、それだけのバスと運転手が実際に確保できるという保証が必須ですし、要支援者に対して必要な支援者が確保できるのというのが絶対的な条件になります。
 泊原発では先日、津波対策が不十分という理由で再稼働が認められませんでした。それと同様に、島根原発でも住民が安全に避難できるという保証がなければ再稼働は認めるべきではありません。
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社説:島根原発「同意」 避難計画に不安が残る
                             京都新聞 2022/6/4
 中国電力島根原発(松江市)の再稼働について、島根県の丸山達也知事は同意を表明した。
 地元同意手続きがそろい、中国電は安全対策工事が完了すれば、来年度にも再稼働を目指す。
 ただ、同原発は全国で唯一県庁所在地に立地し、避難計画が必要な30キロ圏内には約46万人が住んでいる。全国で3番目の多さで、事故時に住民が円滑に避難できるのか、懸念は拭えないままだ。
 避難計画の実効性が問われている。

 同原発2号機は昨年9月、原子力規制委員会の審査に合格した。30キロ圏内に入る島根、鳥取の2県6市のうち、既に島根県以外の首長は再稼働に同意していた。
 丸山知事は、再生可能エネルギーだけで電力を賄えないとして、「原発の再稼働は現状においてやむを得ない」と説明した。「不安や心配のない生活を実現するためには、原発はない方がよく、なくしていくべきだ」とも述べ、苦渋の判断だとした。
 原発と県庁は約9キロしか離れていない。原発事故が起きれば、緊急対応の中枢を担う行政機能がまひする恐れがある。

 住民避難計画については、政府の原子力防災会議が昨年9月に了承した。避難先は岡山、広島両県を含む計69市町村が指定され、広域にわたる。
 だが、地元の市民団体などが30キロ圏内の住民を対象に行った意識調査では、避難計画を「知っている」と答えたのは約半数で、うち6割が計画の内容を「不十分」と評価した
 地震や積雪などの被害が重なれば、避難道路の寸断や渋滞も起きかねないとの声がある。国や自治体、事業者は住民が抱く不安を直視しなくてはならない。

 水戸地裁は昨年3月、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)を巡る住民訴訟で、実現可能な避難計画が整えられていないとして、運転を認めない判決を出した
 共同通信が2020年12月~21年1月に実施した原発立地・周辺自治体アンケートによると、松江市では要支援者が5~30キロ圏に約2万8千人、5キロ圏内に約1700人居住し、それぞれ全国最多だった。高齢者らの避難が容易でないことが浮き彫りになっている。
 支援方法や人員確保など「机上の計画」で済ませてはならない。避難訓練などを重ね、実現できるのか真摯(しんし)に検証して備えることが、原発再稼働の大前提だ。