2022年6月16日木曜日

電力不足の宣伝は原発再稼働の布石 再生エネの拡大を志向すべし

 経済学者の金子勝・立大教授が、「電力不足の宣伝は原発再稼働の布石」という趣旨の記事を出しました。夏の電力不足を訴える節電キャンペーンが突然始まったのは、原発再稼働につなげる作戦であり、国民は騙されてはいけないと述べています。
 本来であれば燃料の値上がりの影響を回避するためには、何よりも再生エネ発電を最大限に拡充しておくべきだったのですが、大手電力は原発再稼働の余地を確保するために、様々な手段を使ってそれを妨害して来ました。
 既設の電線網を新電力会社に使わせないように制限を掛けたり、新電力が多く設立されると突然に「容量市場」という分かりにくい方式を作り出して、新電力に負担させたりしたのもそのためでした。結果として日本では再生エネ発電が決定的に遅れて現在にいたっています。
 政府は原発再稼働にこだわるのは止めて、太陽光発電(+蓄電設備)と風力発電の、再生エネ発電の普及にこそ全力を注ぐべきです。
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金子勝の「天下の逆襲」
電力不足は原発再稼働の布石「古い資本主義」に先祖返りする岸田自民のたどる道
                          日刊ゲンダイ 2022/06/15
 夏の電力不足を訴える節電キャンペーンが突然始まった。「プーチンの戦争」が生み出す戦時中の雰囲気にかこつけ、原発再稼働をゴリ押しする動きだ。北海道電力は16カ月連続、東京電力と中部電力は11カ月連続で値上げ。電気料金上昇に電力不足が重なれば、多くの人は「再稼働やむなし」と受け止めるだろう。詭弁に騙されてはいけない
 福島原発事故発生後、原発は止まり、電力不足に陥った。再生可能エネルギーへのシフトを加速する好機だったのに、政府・自民党や経済界の誘導によって、再エネはコスト高で原発は安いというウソが垂れ流されてきた。大手電力会社は原発再稼働を前提に送電網を開放せず、新電力の接続拒否や託送料金を高くし、再エネの普及を徹底的に妨害してきた。この間、再エネは世界で最も安価なエネルギーに進化した。すると、大手電力は新電力に原発事故処理費用や原発・火力発電のコストを押しつけ。ウクライナ戦争による資源高騰のあおりも受け、新電力は次々に倒産している。

 火力発電に頼った北電は胆振東部地震の発生で大規模なブラックアウトを招いた。再エネや蓄電池を普及させれば、停電は一部にとどまり、イザというときに速やかに復旧できる。にもかかわらず、政府は原発、石炭火力、水力などを主要なベースロード電源に位置付け、将来の電力不足を防ぐと称して発電所の維持にかかる費用を新電力にも負担させる「容量市場」をつくった。新電力を潰し、再稼働の流れを確実にするためだ。
 岸田首相の金看板「新しい資本主義」の正体は、古い資本主義への先祖返りだ。原発再稼働もそうだし、金融所得課税強化は資産所得倍増にすり替わり、賃上げ税制はほとんど適用されない。金融緩和を継続し、円安を加速させている。アベノミクスは財政赤字を膨らませて国民をゆでガエルにし、日銀に株を買わせて経営者をシャブ漬けにした。諸悪の根源の安倍元首相が吐き散らしたウソによって公文書や統計は改ざんされ、官僚制を破壊。メディアへの圧力は常態化している。そうした路線を引き継ぐ岸田は、防衛費倍増で日本の重化学工業を米軍事産業のライセンス生産を担う下請けにし、マイナンバーカード普及で世界に遅れるIT業界を丸め込もうとしている。まるで、ロシアのプーチン大統領の国家資本主義を後追いしているかのようだ。
 参院選で自民と補完勢力を勝たせれば、この国はとんでもない産業衰退の道をたどるだろう。経済破綻を引き起こす民主主義の自殺を選んではいけない。

金子勝 立教大学大学院特任教授

1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。