2022年7月23日土曜日

23- 海洋放出 今後のスケジュール 国と東京電力に求められること ほか

 福島テレビが「 ~ 海洋放出 今後のスケジュール…国と東京電力に求められること」という記事を出しました。海洋放出の関連工事は23年4月までに間に合いそうなのですが、国と東京電力が「関係者の理解なしではいかなる処分も行わない」という約束をどう守るのかがポイントです。
 「理解を得るべき関係者」が誰なのかが曖昧としていますが、相馬双葉漁協乃至全国漁協がそれから外れることはあり得ません。少なくとも彼らが理解を示すかどうかがポイントです。
 産経新聞は、タンクを増設すれば構内の敷地が逼迫するので放出の時期を遅らせるのは不可能と述べていますが構内の敷地が逼迫して廃炉作業の妨げになる」というのは東電が脅しをかけているだけで、当初更に7号機~10号機も計画していたくらいですから、敷地が逼迫するなどということはありません
 併せて週刊金曜日の記事も紹介します。
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原発処理水の海洋放出 今後のスケジュール…国と東京電力に求められること
                           福島テレビ 2022/7/22
◆関連施設の設置工程
東京電力は、福島県と大熊町、双葉町の事前了解が得られればすぐに本格工事を始められるように準備を進めている。
海底トンネルなど必要な設備を作るのは技術的な問題はないと地元から了解が得られて8月から工事が始まった場合、設備が完成して使用前の検査が行われるのは、2023年4月中旬頃という想定だ。
東京電力が目指す2023年春頃には間に合う想定だが、時期ありきではなく、丁寧な説明により理解を得られるのかが大切になる。
処理水を貯めるタンクの容量が満杯となるのは、2023年春とされてきたが、汚染水対策が進んだことなどから夏から秋へと延びている。

◆国と東京電力の対応
国と東京電力が「関係者の理解なしではいかなる処分も行わない」という約束は「関係者」が誰なのか、そして「理解」をどう図るのかは曖昧なままだ。
魚の飼育を始めとした新たな風評対策の発信などを通じて、どのようにして多くの人に関心を持ってもらうのか。
国と東京電力の真摯な対応が改めて求められている。


東電処理水放出認可 地元合意形成に猶予なく
                            産経新聞 2022/7/22
東京電力福島第1原発の処理水放出計画は22日に正式に認可され、海底トンネルの本格的な工事に向けて立地自治体の了解を取り付ける局面へと進んだ。令和5年春頃とした放出開始時期が近づくなか、反対論はなお根強く、設備が整ったとしても放出に踏み切れるかは不透明な状況が続く。貯蔵タンクの容量にも限りがあり、放出を先送りすることになれば、廃炉作業にも影響を及ぼしかねない。

放出設備の工事を本格的に始めるには規制委の認可に加え、東電が福島県と大熊町、双葉町と結んだ協定に基づき、事前にそれぞれの了解を得る必要がある。立地自治体によると、その可否は「設備の安全性の観点から行われ、風評対策などとは分けて進められる」(大熊町)ことになる。
ただ、実際に放出を始めるには、地元の合意形成は不可欠だ。政府と東電は「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と説明してきた。東電は認可後のコメントでも「説明を尽くし、継続して懸念や関心に向き合い、一つ一つ応えていく」との姿勢を表明した。しかし、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が6月に「断固反対」とする特別決議を全会一致で採択するなど、同意を得る糸口は見いだされていない

一方、同原発では当初に比べて抑制されてはいるものの、現在も1日当たり約130トン(3年度実績)の汚染水が発生している。タンクに貯蔵された処理水は7月14日時点で約130万トン。すでに約1千基あるタンクも容量全体(137万トン)の96%を使っており、5年夏から秋頃にかけて満杯となるとされる。
タンクを増設すれば、構内の敷地が逼迫(ひっぱく)し、廃炉作業の妨げになりかねない。地震での漏洩(ろうえい)リスクも付きまとう。政府と東電が目標とした5年春頃の放出開始時期は迫りつつあり、合意形成に費やすことができる時間は長くはない。(玉崎栄次)


汚染水海洋放出めぐり東電がきれいな海を「約束できない」発言?
                            週刊金曜日 2022/7/22
 東京電力福島第一原発の敷地内にたまる汚染水(処理水)をめぐる話し合いの場で、海洋放出に反対する市民たちに対して東電の担当者が問題発言をしていたことが分かった。「きれいな海を残してください」という市民の訴えに対して、「約束できない」と答えたという。東電は「意味の取り違えがあった」と釈明しているが、はたしてそうか。
 複数の関係者への取材によると、問題発言があったのは、5月13日に東京都内で行なわれた東電と市民グループ「これ以上海を汚すな!市民会議」との協議。冒頭の写真撮影の後、メディアを退出させた話し合いの最中、市民側として参加した女性がこう話した。
「私には2人の娘がいます。福島県は自然に恵まれたとてもきれいなところです。そんな福島が大好きです。どうかお願いです。私の娘たちに福島のきれいな海を残してあげてください。残してくれることはできませんか?」
 女性の問いかけに応えたのは、東電原子力・立地本部の井口誠一原子力センター所長。以下のようなやりとりがあった。
女性「海に放射性物質を流してほしくないんですが、私はさっき、娘たちにきれいな海を残してくださいとお願いしましたが、その約束はしていただけるんですか?」
東電私たちの企業として、そこの部分を約束するまではできないと思っています」
女性「お願いしているんですけど、そのお願いは聞いていただけないんですか?」
東電『お受けいたします』としか言えないですね」

 この「約束できない」発言に対して、市民側は「原発事故の責任を省みない発言だ」と抗議。5月25日、東電側に文書で発言の撤回と謝罪を求めた。東電側は6月10日付で以下を文書で回答した。

〈5月13日の対話で「約束できない」と発言したのは、ALPS処理水の海洋放出の見直しに対して「約束できない」と発言したもので、海を汚さないことに対しての発言ではありません。当社は、国の規制基準や各種法令等を確実に遵守することで、海を汚さないよう努めてまいります。〉

意図的? ずれた回答
 前述の通り、市民側は「きれいな海を残して」とくり返し訴え、それへの約束を求めた。会話の流れをふり返れば、明確だ。仮に東電側が回答した通り、井口氏の発言が〈海洋放出の見直しに対して「約束できない」と発言したもの〉であったならば、井口氏は市民の訴えに対して意図的にずれた回答をしたのか。あるいは、市民の切実な声をいい加減に聞き、見当違いの回答をした、ということになる。不適切な対応だったと言わざるを得ない。
 東電・福島第一廃炉推進カンパニーの広報担当者は筆者の取材に対し、「意味の取り違えはあったのかもしれませんが、当社としては海洋放出の見直しの約束を求められたと理解しました。当社としても海を汚すつもりはありませんし、市民の方々も含めて、関係者の皆様のご理解を得るために真摯に取り組んでまいります」と話した。「発言の撤回や謝罪はしないのか」と聞いたが、回答はなかった。

 市民側の不信感は募るばかりだ。5月13日の話し合いに参加した「これ以上海を汚すな!市民会議」の織田千代・共同代表(福島県いわき市在住)はこう指摘している。
市民と直接向き合う場であんなことを平気で言えるなんて気がしれない、というのが実感です。市民からの声に対して、心のこもらない言い逃れやその場しのぎの発言ばかりです。原発事故を起こした企業としての責任を感じているとは思えない。東電の信頼性は地に落ちているとしか言えません
 汚染水の海洋放出をめぐっては、福島県と大熊、双葉両町が設備工事の着工を了承するかが目下の焦点になっている。市民の不信を募らせる東電の対応ぶりも検討材料にすべきだろう。                (牧内昇平・フリー記者、2022年7月22日号)