トヨタ系の自動車販売会社などでつくるユーグループは25日、本社ビルの改修に合せて、水素エネルギー利用システムを導入したと発表しました。
太陽光発電の電力で製造するグリーン水素を、特殊金属を利用した貯蔵施設に貯蔵し、それを燃料電池式発電設備に供給して、自社ビルのピークカットや非常時の電源として活用するもので、完全な2酸化炭素ゼロの発電設備になります。
このシステムの大きな特徴は、水素の貯蔵に水素を効率的に取り込める水素吸蔵合金タンクを採用している点です。30℃以下の温度にして10キロ(1Mpa)程度の圧力をかけて水素を吸蔵させることで、水素を約1000分の1の体積に圧縮して貯蔵できます(水素の放出時には50℃以上に加熱)。
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再エネ水素を特殊合金に貯蔵して活用、トヨタ系ユーグループが自社ビルに導入
スマートジャパン 2022/7/28
トヨタ系の自動車販売会社などでつくるユーグループ(長野市)は2022年7月25日、本社ビルの改修に合せて、水素エネルギー利用システムを導入したと発表した。太陽光発電の電力で製造するグリーン水素と燃料電池を利用し、ビルのピークカットや非常時の電源として活用する。
⇒ 設置した水素製造装置・水素吸蔵合金タンクなどの設備
システムを導入したのはユーグループの本社「プリズムビル」。ビル2階のテラスに20kWの太陽光発電、水素を製造する水電解装置、水素を貯蔵する水素吸蔵合金タンク、蓄電池、定格出力100kWの純水素燃料電池を設置した。
この一連の水素製造・利用システムは清水建設が開発した「Hydro Q-BiC」を採用している。BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を通じ、再生可能エネルギーの余剰電力で製造した水素を、必要に応じて電力としてビルなどの建物に供給できるシステムだ。
このシステムの大きな特徴が、水素の貯蔵に水素吸蔵合金タンクを採用している点。これは清水建設と産総研が共同開発した、水素を効率的に取り込める特殊合金を利用した貯蔵システムで、30度以下の温度にして1Mpa程度の圧力をかけて水素を吸蔵し、50度以上に加熱して水素を放出する仕組み。
水素を約1000分の1の体積に圧縮して貯蔵できるため、気体のまま圧縮する方式や液化する貯蔵方法よりコンパクトに水素を保管できるという。また、扱いやすい環境で水素の貯蔵・放出ができることに加え、一般的な合金と異なり着火の危険性がなく、消防法においても「非危険物」として区分されるため、貯蔵・運用に関して有資格者不要で扱える、レアアースが含まれていないといったメリットがあるとしている。20年で約3%程度しか劣化しない長寿命も特徴だ。
今回は450Nm3、蓄電量量ベースでは674kWhに相当する水素を貯蔵できるシステムを導入した。
災害時には非常用電源としても活用
今回導入した「Hydro Q-BiC」では、太陽光発電の余剰電力で水素を製造する。BEMSの制御により必要な水素を燃料電池に送って発電を行い、建物のピークカットなどに利用する計画だ。なお、発電を担う燃料電池は東芝製の純水素燃料電池「H2Rex」を採用している。燃料電池で発電する際に発生する予熱は、温室に供給して野菜や果物の栽培にも生かす計画だという。
ユーグループでは長野市と災害時の対策支援に関する協定を締結しており、今回導入したシステムは災害時にも活用される。災害時などにはビル1~3階を開放し、避難所や防災拠点として利用する計画で、その際には「Hydro Q-BiC」をビルの照明などの非常用電源として活用する。
なお、システムを導入したプリズムビルは、今回の改修によってZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を図っている。ZEBの改修において水素エネルギーシステムを建物に導入する取り組みは、日本初の事例としている。