2022年7月16日土曜日

志賀原発審査 「敷地内断層問題」新たな段階に

 石川県の志賀原発を巡り1号機は活断層の上にあるとして廃炉が決定していますが、2号機については、設備の下を通っている断層のS-1及びS-2・S-6について「上載地層法」では活動性否定できなかったのですが、北陸電力が新たに用いた「鉱物脈法」という評価手法で調査を進めたところ、断層形成年代は少なくとも600万年前に遡るという計算になりました。規制委もこうした評価を現在のところ否定はしていないということで、どういう結論になるか注目されます。

 志賀原発を担当していたテレビ朝日系の記者が解説記事を出しました。

注 「上載地層法」「鉱物脈法」については記事中で簡単に説明されています。
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【解説】志賀原発審査、新たな段階に―「敷地内断層問題」解決すれば審査加速も
                       テレビ朝日系(ANN) 2022/7/15
 石川県の志賀原発2号機が原子力規制委員会に原子炉等設置法に基づく設置変更許可、いわゆる「新規制基準の適合性審査」を申請したのは、2014年8月12日に遡(さかのぼ)る。あれから間もなく8年になるが、依然として審査は続いている。
 原子力発電所の審査は地震、津波などの影響を評価する自然ハザード審査と、原子炉など施設の安全性を審査するプラント審査に大別される。通常、自然ハザードの審査が先行し、その発電所を襲う可能性がある揺れの最大値(基準地震動)や、最も高い津波の高さ(基準津波)の評価が進んで初めて、プラント審査に移行する。しかし、志賀2号機に関しては審査前段の自然ハザードで停滞している。というのも、敷地内にある断層の活動性の有無、言い換えれば、敷地内にある断層が活断層かそうでないかの議論に決着がつかないためだ

   志賀原発審査、新たな段階に―「敷地内断層問題」解決すれば審査加速も
 図は志賀1、2号機の敷地内を走る断層である。このように、志賀原発の敷地内には多くの断層が走っているが、原子炉やタービン建屋下の断層ラインは、現在は確認できないため、建設当初に描かれたスケッチを元に作られている。この多くの断層の中で、S-1とS-2・S-6以外は「活断層ではない」と評価された。しかし、S-1及びS-2・S-6については、2015年7月、規制委が招集した有識者会合が「活動性は否定できない」と結論。さらに、わざわざ専門家のメンバーを入れ替えて開かれた第2弾の有識者会合も、2016年3月、この2つの断層が、新規制基準が「活断層」とする123万年前以降に「活動したと解釈するのが合理的」つまり「活断層」であるとの認識を示した。前の有識者会合より踏み込んだ表現を取った形だ。そして、「追加調査が必要」などとする評価書をとりまとめ、翌4月、規制委もこの評価書を受理・追認している。
 新規制基準では、活断層の上に原子炉を設置できない。また、タービン建屋など重要設備の下に活断層があれば、施設の大規模な改修が求められる。評価書は、志賀1号機原子炉の真下にあるS-1断層について、さらに1、2号機のタービン建屋下を通るS-2・S-6断層についても活断層とした。この結果、1号機は「廃炉」、そして2号機のタービン建屋についても、大規模な改修の必要性が突きつけられた形だ。当時、筆者はニュース原稿でこうした事実を伝えた上で「審査は長期化する可能性がある」と書き加えた。そしてやはり、審査は長期化している。

 しかし、転機は去年1月に訪れた。問題は、建設当初に描かれたスケッチなど限られた資料に基づき評価している点なので、北陸電力はプラント下の断層の延長線上にトレンチ(立坑)を掘って目視観察をしたり、サンプルを集めたりした。詳しくは省略するが、断層の上にある地層(上載地層)の年代から断層の形成年代を測る「上載地層法」では、S-1及びS-2・S-6の活動性は、どうしても否定できなかった。そこで北陸電力は、「鉱物脈法」という別の評価手法で調査を進めた
 断層を横断する鉱物脈があり、その鉱物脈にずれや変形がなければ、断層の形成年代は鉱物脈の形成年代より古いということが言える。断層ができた後から鉱物脈が発達して断層を横切った、ということだ。だから、鉱物脈の形成年代を調べれば、断層の「年齢」も判明する、という理屈である。北陸電力はS-1については3地点、S-2・S-6についても3地点、イライト―スメクタイト混合鉱脈を採取した。
イライト―スメクタイト混合鉱脈は50℃以上で形成されるが、志賀原発の地下において50℃に達するのは地下800メートル。そして、志賀原発近傍の1000年間の隆起速度は約13センチなので、断層形成年代は少なくとも600万年前に遡る、という計算になる。
 何やらSFの世界のような時間軸だが、少なくとも北陸電力はこのようにS-1、S-2・S-6の活動性を否定する評価を規制委に提出した。規制委もこうした評価を現在のところ否定はしておらず、今年秋にも改めて現地調査を実施し、審査会合を開いてS-1とS-2・S-6断層が活断層か否か、結論を出したいとしている。審査は大きく動き始めるのか、注目したい。