再生可能エネルギー発電は地球温暖化の防止や発電コストの低減の切り札になるものですが、日本では政府の取り組みが弱くて大幅に遅れています。
関西電力の「蔵王山麓」風力発電計画に対して地元が反発しています。地元の反対はここだけではなくで、太陽光発電や風力発電などの再生エネ事業が景観を含めた環境問題で各地で地元と摩擦を起こしているようです。これは狭小な日本だけの問題ではなく世界中で起きている問題で、地域主導型の再エネ事業じゃないとなかなか実現は難しいということです。
東日本放送が取り上げました。
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関西電力の「蔵王山麓」風力発電計画に地元反発 環境に優しいはずの再生可能エネルギー事業が各地で摩擦
khb東日本放送 2022/7/13
関西電力が宮城県川崎町で計画している風力発電について、地元は猛反発しています。環境に優しいはずの再生可能エネルギーですが、摩擦は各地で起きています。
蔵王連峰を望む川崎町で、コーヒー専門店を営む栗谷さん夫妻。地元の人や観光客らにコーヒーやランチを出しています。4年前、2人の子どもと仙台市から川崎町に引っ越してきました。
コーヒー専門店を営む栗谷愛さん「美しいでしょ。美しいんです。この町」
田植え直前のころには、水の張られた田んぼに逆さ蔵王が映ります。
コーヒー専門店を営む栗谷愛さん「四季折々この場所で写真を撮るのが楽しみなんです」
■関西電力が蔵王山麓での風力発電計画を発表
ところが5月下旬。その蔵王の山ふところに、高さ140メートルから180メートルほどの風車を最大で23基建てる計画を、関西電力が発表しました。
コーヒー専門店を営む栗谷将晴さん「テレビか何かの報道だと思いますけどね。それで、びっくりして」
蔵王をめぐる景観への影響が避けがたいことや、予定地が蔵王国定公園にかかっていることも明らかになり、環境への影響を調べる県の審査会からも厳しい批判が上がります。
村井宮城県知事「事業実施想定区域に国定公園を含めていることが異例であるなどなど、非常に厳しいご意見が出ました。もっともなご意見だと受け止めています」
■宮城県の審査会からも厳しい批判 計画の見直しを
6月下旬。関西電力は住民説明会で、計画の見直しを強調しました。
関西電力市橋公平部長「宮城県の審査会で先生のご指摘を真摯に受け止めまして、国定公園エリアの方には設置しないといたしましたので、(最大23基から最大)19基と減らしております」
蔵王の御釜からの眺望のイメージ図を示しました。一般家庭の約6万世帯分の電力をまかなえ、地球温暖化につながる二酸化炭素の排出削減にも効果があると説明し理解を求めました。それでも住民からの反発や批判はやみません。栗谷さんも出席し発言しました。
コーヒー専門店を営む栗谷愛さん「資材の運搬や建設のために広大な森林を伐採するということです。観光業への打撃や土砂災害の危険性、美しい蔵王の景観への影響など、他にも問題はたくさんあります。これが本当に環境問題の解決策だと言えるのでしょうか」
■地元からも強い反発
反対意見書は川崎町に寄せられたものだけでも約3700人に達し、町長たちも厳しい態度で臨んでいます。
小山修作川崎町長「白紙撤回された方が良いのではないかと」
村上英人蔵王町長「景勝地から見たものを壊すようなことはぜひやめてもらいたい」
関西電力多田隆司常務「私どもが非常に反省しているのは、地域の皆様の蔵王への思いとか、畏敬の念とか、十分ご理解することができていなかった。(環境アセスメントの次の段階である)方法書に進めるかどうか、これも含めて、しっかり考えていきたい」
そもそもどうして蔵王の山ろくに計画したのでしょうか。
関西電力市橋公平部長「(風の強い)風況が良い所。送電線が近くにあって空き容量がある所」
こちらは国の研究機関が公開している、風況の地図です。年平均の風速が強い場所が濃い色で塗られています。蔵王山ろくは、風況の良い適地だと関西電力は言います。
風力や太陽光など再生可能エネルギーの普及を目指す動きは、福島第一原発の事故の後、日本でも本格化しました。再エネの電気を作れば、一定の価格で買い取ってもらえる固定価格買い取り制度が2012年にスタート。手続きや規制の緩和なども導入を後押ししました。
その結果、風力と太陽光は環境アセスメントの対象となる大規模なものだけで全国に400件超。計画が進むにつれ、反対運動も各地に広がっています。
景観や自然への影響のほか、土砂災害を招くリスクなども反対の理由になっています。
エネルギー問題に詳しい東北大学東北アジア研究センター明日香壽川教授「グリーン対グリーンの対決みたいなものが起きている。問題になるくらい、ある意味、再生可能エネルギーが身近な存在になってきた」
明日香教授は、コスト面でも経済的効果の面でも再エネの導入こそが重要だと強調。その上でキーワードに「地域主導」と「地産地消」を挙げます。
エネルギー問題に詳しい東北大学東北アジア研究センター明日香壽川教授「(再エネをめぐる摩擦は)仙台(周辺)だけでなく日本だけでなく、世界中で起きている問題であってやはり地域主導型の再エネ事業じゃないと、なかなか実現は難しい」
コーヒー店を経営する栗谷さん夫妻は、店で出すランチの食材の大半を自前で作ったり、町内の農家から仕入れたりして食の地産地消に取り組んでいます。そんな栗谷さん夫妻は、電気の地産地消も思い描きます。
コーヒー専門店を営む栗谷愛さん「小さな水力発電を作って研究している方とか、実際、川崎でやり始めている方がいるんですね」
NPO法人川崎町の資源をいかす会では、町内の農業用水を使った水力発電に取り組んでいます。
現在は、近くの街灯をともすほどの規模ですが、将来の売電に向けて調査を進めています。
コーヒー専門店を営む栗谷愛さん「エネルギーに関しても、これから何年かかけて地産地消に持ってくのが、良いんじゃないかと考えています」
地球の温暖化を防ぐために、明日香教授は、無理な我慢を伴わない取り組みを提案しています。
買う電気を環境に優しい再エネで作られているものにする。
太陽光パネルを屋根などにつける。
エアコン、冷蔵庫といった家電を効率の良いものに替える。
長い目で見るとお財布にも優しい取り組みがありそうです。