2022年7月31日日曜日

海洋放出放出計画「理解不十分」 全国知事会議国への提言をまとめる

 奈良市で開いた全国知事会議で29日福島第1原発汚染水の海洋放出方針について、「関係省庁が一体となって万全な対策を講じるとともに、理解醸成に向け関係者らへの丁寧な説明と真摯な対話を続けるべき」などとする、「東日本大震災からの復興を早期に成し遂げるための提言」を全会一致で採択しました。

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東日本大震災・原発事故11年
処理水放出計画「理解不十分」対策求める 全国知事会議、国への提言をまとめる
                            福島民報 2022/07/30
 東京電力福島第一原発の処理水海洋放出方針について全国知事会は29日、奈良市で開いた全国知事会議で「国内外の理解が十分に得られている状況ではなく、新たな風評被害発生が懸念される」として、国が前面に立って対策を講じるよう求める提言を全会一致でまとめた。政府と東電が目指す放出開始が来春に迫る中、今なお理解醸成が不十分だとの認識を全知事が共有。より実効性のある対策を国に要請する。

 全国知事会議で内堀雅雄知事は「福島だけの問題ではなく日本全体の問題だ」と強調し、全国の都道府県知事に直接、理解と協力を呼びかけた。処理水に関する提言を盛り込んだ「東日本大震災からの復興を早期に成し遂げるための提言」の内容は以下の通り。
 昨年4月の政府方針決定から1年余りが経過し、原子力規制委員会が東京電力の放出計画を認可するなど放出開始へのスケジュールが進む中、処理水への理解が国内外で今なお浸透していない現状を憂慮。「積み重ねてきた復興や風評払拭(ふっしょく)の成果が水泡に帰す懸念がある」と指摘した。関係省庁が一体となって万全な対策を講じるとともに、理解醸成に向け関係者らへの丁寧な説明と真摯(しんし)な対話を続けるべきとした。
 万全な対策を講じても風評被害が発生した場合に備え、地域や業種の実情に応じた賠償基準を早期に具体化するよう訴えた。トリチウムの分離技術を研究開発する機関を明確に位置付け、新技術の動向調査や研究開発を推進し、実用化できる処理技術が確認された場合は柔軟に対応するよう求めた。

 昨年の全国知事会議はリモート開催だっただけに、内堀知事は報道陣の取材に「(処理水問題について)各知事に対面で伝えられたことは非常に重要だった」と意義を強調した。本県の困難な状況について、複数の知事から共感の声が寄せられたという。
 平井伸治会長(鳥取県知事)は記者会見で処理水問題について問われ「非常に難しい事柄だと思う。風評対策などで協力できることがあれば、内堀知事をもり立てていきたい」と述べ、知事会として本県に協力していく考えを示した。
 海洋放出方針を巡っては、原子力規制委が今月に東電の放出計画を認可し、県や大熊、双葉両町などでつくる県原発安全確保技術検討会も安全性を確認したとする報告書をまとめた。東電は地元の了解が得られ次第、本格的な放出設備の工事を始める方針。

■全国知事会がまとめた震災復興に関する提言のポイント

◎処理水処分について国内外の理解が十分に得られている状況ではない。安全性や新たな風評発生を懸念する意見が数多くある
◎処理水問題は福島県だけではなく日本全体の問題として進める必要がある。新たな風評被害発生が懸念されることから、国が前面に立ち、関係省庁が一体となって万全な対策を講じること
◎処理水に関する理解が得られるよう、関係者への丁寧な説明と真摯(しんし)な対話を継続して行うこと
◎特定復興再生拠点区域(復興拠点)外の除染は、帰還意向のない住民の土地や家屋などの取り扱いについても地元自治体と真摯に協議を重ね、その意向を十分に踏まえ、帰還困難区域全ての避難指示解除に向けて最後まで責任を持って取り組むこと
◎福島国際研究教育機構について、国内外の優秀な研究者が集い世界最先端の研究開発が行われるよう、政府を挙げて必要な財源や予算を確保すること