2022年7月27日水曜日

海洋放出「環境整備」名目に 準備工事先行 不信感増す

 東電は海洋放出計画が原子力規制委員会に認可される前から、処理水が通る深さ18mの立て坑や、沖合約1kmの放出口付近の掘削など認可対象外の準備工事を進めてきましたが、福島県内からは「地元の了解を得てから始めるのが筋」「来春放出のスケジュールありき」と反発の声が上がっています

 原子力規制庁や福島県は立て坑や海底の掘削などの準備工事は原子炉等規制法など法令による制約はなく、着工しても問題ないという見解ですが、県内からは道義上の問題があると指摘する声が上がっています。現実に海底トンネル用に7300立方の土砂を取り出すなどしている訳で、地元の了解は不要には無理があります
 東電が完全に来春放出のスケジュールで走りだしていることに、相馬双葉漁協の菊地昌博副組合長は「計画が認められたことと、海洋放出の是非は別問題だ」と語気を強めます
 国や東電の姿勢は地元の反発を招いています。
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【理解と了解 処理水海洋放出】
「環境整備」名目に 準備工事先行、不信感増す
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 東京電力福島第一原発の処理水海洋放出計画が原子力規制委員会に認可される前から、東電は処理水が通る深さ十八メートルの立て坑や、沖合約一キロの放出口付近の掘削など認可対象外の準備工事を進めてきた。東電はこの工事を「環境整備」と位置付けているが、県内からは「地元の了解を得てから始めるのが筋」「来春放出のスケジュールありき」と反発の声が上がる。地元の合意が得られぬまま、来春ごろの放出開始に突き進む東電の前のめりな姿勢が福島県民の不信感を増幅させている。

 東電は二十五日の定例記者会見で、準備工事のうち海側で五月上旬から進めてきた作業を完了したと発表した。海洋放出に使う海底トンネルの着工認可は規制委から得た。「今後は(県外で製作していた鉄筋コンクリート製の)放出口を小名浜港に運搬する」。担当者は次の予定を淡々と説明した。
 処理水放出に向けた準備工事などの状況は【図(省略)】の通り。東電は昨年十二月、原発構内の海側で海底トンネルにつながる立て坑の掘削に着手。五月には処理水の放出地点となる原発の沖合一キロで海底掘削を始め、約七千三百立方メートルの土砂を取り出した。立て坑の底部には海底トンネルを掘り進めるためのシールドマシンも既に運び込まれている。

 原子力規制庁によると、立て坑や海底の掘削などの準備工事は東電が規制委に審査を申請した実施計画に含まれていない。原子炉等規制法など法令による制約はなく、着工しても問題ないという。県も「法規制はなく、国の認可などは必要ない」との見解だ。東電は「認可や了解が得られない場合に原状回復できる範囲で進めてきた」と主張する。
 一方、地元との合意形成が進まずに準備工事が先行する状況に、県内からは道義上の問題があると指摘する声が上がっている。「海は大切な仕事場だ。(沖合一キロの海底掘削などの)工事についても地元の了解を得てから始めるのが筋ではないか」。いわき市漁協役員の男性漁師(59)=いわき市=は憤りを隠さない。県原子力安全対策課にも「認可や了解を前提とした見切り発車だ」などと東電を批判する意見が寄せられているという。

 処理水をためるタンクの満杯時期は二〇二三(令和五)年春ごろから同年秋ごろに先延ばしできる見通しとなっても、東電は放出時期を二〇二三年春ごろのまま堅持。海底トンネルなどの着工時期は六月から八月に遅らせつつ、完成時期は二〇二三年四月のままとした工程表を今月に発表した。男性漁師は「完全に来春放出のスケジュールありきの対応だ。やり方がおかしい」と東電への不信感をあらわにする
 相馬双葉漁協の菊地昌博副組合長(68)=相馬市=は「計画が認められたことと、海洋放出の是非は別問題だ」と語気を強める。海洋放出が始まれば、次の世代の漁業者らも影響を受け続けるのではないかと懸念する。「国や東電は若い漁業者も含めて関係者の声に真摯(しんし)に耳を傾け、あらゆる対策を尽くすのが先だ」と注文を付けた。