2022年7月28日木曜日

【処理水海洋放出】「安心」の了解はまだだ

 福島民報が「~ 海洋放出 『安心』の了解はまだだ」とする記事を出しました。

 東電(や規制委)は、トリチウム水の海洋放出に向けてのハード的な「環境整備」に余念がないようですが、肝心の「海洋放出は地元関係者の了解を前提とする」との約束事には一向に取り組もうとしません。
 これこそが何よりのソフト面での「環境整備」なのにどうしてなのでしょうか。合意が得られずに暗礁に乗り上げることを懸念しているからというのは、最早この段階では理由になりません。何故この間その努力を放置していたのか、いまこそ誠心誠意説得に努力すべき段階です。
 それとも規制委にも東電にも「海洋放出」以外は念頭にないようなので、最終段階では問答無用で強引に実行しようとしているのでしょうか。
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【処理水海洋放出】「安心」の了解はまだだ
                            福島民報 2022/7/27
 東京電力福島第一原発にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出に向けた東電の事前了解願に対し、県と原発が立地する大熊、双葉両町は近く判断を下す見通しとなった。安全性の了解があっても、安心感が高まらなければ、県民はさらなる風評に苦しむ。処理水に対する国民理解が一向に深まらない現状では、来春を目標とする海洋放出を日程通り始めるべきではない
 原子力規制委員会は二十二日、海洋放出の設備や手法に関する東電の計画を正式に認可した。これを受けて、県、立地町などでつくる県原発安全確保技術検討会は二十六日、計画は適切と評価し「周辺地域の安全は確保される」と報告書で結論づけた。結論に沿って知事と両町長が了承の判断をすれば、それ以降、地元が意見を述べる機会はなくなる。手続き上は海洋放出が可能な状態が生まれる

 東日本大震災と原発事故によって、本県が被ってきた風評被害の上乗せを防ぐには、安全の評価とともに、安心感の醸成が求められる。本来は同時並行で進めなければならないが、「安心」は置き去りにされている印象が強い。政府、東電の消費者らに向けた情報提供などの取り組みが十分ではないのに加えて、東電への不信感が「安心」が広がっていかない要因となっているのではないか。
 東電は、海洋放出計画の「環境整備」の名目で関連工事を進めている。昨年十二月には、原発構内の海側で海底トンネルにつながる立て坑を掘り始めた。今年五月に開始した沖合一キロ付近の放出口は掘削工事をほぼ終えた。放出口には鉄筋コンクリート製で、縦十二メートル、横九メートル、高さ約十メートルの構造物を設置するが、既に完成しているという。
 規制委員会が認可する半年以上前から、準備に取りかかっていたことになる。「環境整備」と、計画に沿って行う本格工事の違いが分かりにくく、そもそもなぜ「環境整備」が必要なのかが判然としない。海洋放出ありきのように進む一連の動きは県民の不信感を増幅させている。「安心」の了解を得る一歩は信頼をどう積み重ねていくかだと肝に銘じるべきだ

 県の検討会の報告書では、本格工事の安全確保や放出後の各種測定結果の分かりやすい発信など八項目の東電への要求事項を盛り込んだ。事前了解願に対する県などの判断の際には、東電が直ちに取り組むべき県内外への情報発信などの要求を掲げてもらいたい。東電がどう応えるか。注視したい。(安斎康史)