福島第1原発の処理水海洋放出計画を原子力規制委が認可したのを受け、福島県原発安全確保技術検討会は26日、放出計画の安全性を確認したとする報告書をまとめました。
構成団体の県と、福島第1原発立地自治体の大熊、双葉両町はいずれもこの報告書の内容を了承しました。県と地元市町村、有識者で構成する県廃炉安全監視協議会は報告書策定に先立ち報告書案を了承しています。
県と大熊、双葉両町の3者は報告書を踏まえ来月、海洋放出のための本体工事の着工を了解するかどうか最終判断します。
なお県の技術検討会は、放出計画の安全性を確認したとする報告書をまとめるに当たり、8つの要求事項をとりまとめました。
東電は3者の了解が得られ次第着工する方針なので、海洋放出に向けた手続きは着々と進みつつあります。
しかし考えてみると、そもそも放流先の海水で希釈して規制値をクリアするという考え自体が本来許されないものであって、もしもそれが許されるなら「水質汚濁防止法」も「大気汚染防止法」も全く不要になって公害防止法の体系は無に帰します。
問題はそういう意識が全くないままに、着々と事態が進行しているということです。
規制委が初期の段階から「海洋放出」を是とする発言をしていたことを含めて、つくづくこの問題は不正常に進行して来ました。
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処理水海洋放出の安全性確認 福島県原発安全確保技術検討会が報告書
福島民報 2022/7/27
東京電力福島第一原発の処理水海洋放出計画を原子力規制委員会が認可したのを受け、福島県原発安全確保技術検討会は26日に県庁で会合を開き、放出計画の安全性を確認したとする報告書をまとめた。構成団体の県と、福島第一原発立地自治体の大熊、双葉両町はいずれも報告書の内容を了承。3者は報告書を踏まえ来月、原発敷地と沖合1キロの放出口をつなぐ海底トンネルなどの本体着工を了解するかどうか最終判断する。
東電は県と両町の了解が得られ次第、着工する方針で、海洋放出に向けた手続きは節目を迎える。ただ、新たな風評被害の発生を懸念し放出に反対する声は根強く、政府と東電が目指す来春の放出開始が実現するかは依然として不透明だ。
報告書策定に先立ち、県と地元市町村、有識者で構成する県廃炉安全監視協議会で報告書案を了承した。その後に開いた技術検討会で正式決定し、同日付で大熊、双葉両町に通知した。
報告書では、技術検討会は再浄化(二次処理)の確実な実施、不具合や自然災害発生時の対応、設備機器の詳細設計や保守管理、工事の安全対策、放射線影響評価などがいずれも適切に計画されていると評価。原子力規制委が計画を認可した点も踏まえ総合的に判断した結果、「周辺地域の安全は確保される」と結論付けた。
ただ、海洋放出は少なくとも30年の長期間に及ぶとされるため、東電に対する8項目の要求事項を付加した。放出開始前の対策では、スケジュールありきではなく安全最優先の工事を求めた。放出開始後の長期的対策については処理水に含まれる放射性物質の確認や分かりやすい情報発信などを盛り込んだ。
県によると、今後は県と大熊、双葉両町がそれぞれ了解するか判断する見通し。両町は各町議会の意向をくんだ上で対応を明らかにするとみられる。
東電が昨年12月に放出計画の事前了解願を県と両町に提出して以降、県廃炉安全監視協議会(部会を含む)は9回、技術検討会は7回、会合を開いて安全性を確認してきた。26日の監視協議会会合では汚染水の発生量低減の必要性に関する指摘も出た。
計画では、処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度が国基準の40分の1未満になるよう海水で薄め、新設する海底トンネルを通じて沖合約1キロで放出する。規制委は22日の臨時会合で計画を認可した。
【福島県原発安全確保技術検討会の報告書のポイント】
◎東電の海洋放出計画は国の規制基準や措置を講じるべき事項を満たしていると確認した。安全対策を確実に実施することで周辺地域の安全は確保される
◎計画実行に当たり、さらなる安全性向上の措置や分かりやすい情報発信の取り組みが欠かせない。このため8つの要求事項を取りまとめた。東電の取り組みを確認していく
■8つの要求事項
(1)処理水に含まれる放射性物質の確認
→測定対象核種を選定する際、除去対象の62核種と炭素14以外についても可能な限り測定し、処理水に含まれる核種の存在を明確にする
(2)処理水の循環・攪拌(かくはん)時の適切な運用管理
→測定試料の均質化については、水に溶けない粒子状の放射性物質を考慮して循環・攪拌する。排出後のタンク底部の残水や沈殿物の残存の影響を適切に監視する
(3)希釈用海水に含まれる放射性物質の管理
→希釈用海水の取水の際、5、6号機取水路から放射性物質が混入しないよう対策する。取水した海水に含まれる放射性物質の濃度を定期的に監視する
(4)トラブルの未然防止に有効な保全計画の策定
→希釈放出設備が重要設備であるとの認識を関係者が共有する。設備トラブルを未然に防ぐため、有効な保全計画を策定する
(5)異常時の環境影響拡大防止のための対策
→処理水の漏えいや意図しない放出などの異常発生に備え、環境影響の拡大を防ぐ機動的対応を迅速かつ確実に実施できる手順書を整備する。訓練に努め、設備面も重層的対策を講じる
(6)安全最優先の工事
→設備や施設の設置の際、短縮されたスケジュールありきでなく、安全最優先で進める。特に海底トンネル整備など海洋での工事は厳しい環境が想定される。不測の事態に備え、リスク評価に基づいた安全対策を徹底する
(7)処理水の測定結果などの分かりやすい情報発信
→測定結果や設備の運転状況は、ホームページなどで常に最新の情報を公表する。安全性に関する数値と比較するなど分かりやすい情報発信に努める。トラブルが発生した場合は速やかに通報・連絡し、放射線の影響などについて正確で分かりやすく情報発信する
(8)放射線影響評価の分かりやすい情報発信
→放射線影響評価結果は、県民に不安を与えることがないよう、自然界のレベルと比較するなどして分かりやすく説明する