福島第一原発の処理水を薄めて海に放出する計画について、原子力規制委は22日、審査書を決定し正式に認可しました。今年5月から行われたパブリックコメントには670件の意見が寄せられたようですが、決定を変更する点はないとして委員全員一致で「審査書」として決定し、正式に認可しました。
設備建設の際に必要な地元自治体の了解や、放出に対する漁業関係者の理解はまだ得られていません。福島中央テレビの2つの記事を紹介します。
併せてハンギョレ新聞の記事を紹介します。文中「国際環境団体グリーンピースが『国際社会が合意した放射線防護の原則における正当化と海洋保護のための国際法を順守していない決定』だと強く批判した」となっているのは、「放射性物質を拡散させてはならない」という国際的な原則を指していると思われます。
そもそも放流先の水を用いて放流元の汚水を希釈するなどは国内の「水質汚濁防止法」でも全く想定していないもので、違法な方法です。
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福島第一原発「処理水」設備計画が正式認可 今後は地元や漁業者から理解を得られるかが焦点・福島県
福島中央テレビ 2022/7/22
福島第一原発の処理水を薄めて海に放出する計画について、原子力規制委員会は、22日審査書を決定し、正式に認可した。
福島第一原発にたまり続ける処理水について、国は去年春に大幅に薄めた上で来年春をめどに海への放出を開始する方針を示した。
原子力規制委員会はその際に必要となる設備などについて、東京電力が策定した計画を審査し「事実上合格」とする審査書の案をまとめ、今年5月からは一般の意見を募ってきた。
22日の会議では、670件の意見を踏まえた上で、変更する点はないとして、委員全員一致で「審査書」として決定、正式に認可した。
一方で、設備建設の際に必要な地元自治体の了解や、放出に対する漁業関係者の理解はいまだ得られていない。
6割が知らない「処理水」の海洋放出計画 求められる情報発信・福島県
福島中央テレビ 2022/7/22
原子力規制委員会が、海へ放出する東京電力の計画を正式に認めた。
22日の原子力規制委員会では、一般で傍聴する人々が、海への放出に反対する声をあげるなかでの認可の瞬間を迎えた。
海洋放出の計画は、処理水に含まれる放射性物質・トリチウムの濃度を、国の基準の40分の1未満にしたうえで、海底トンネルを建設して、沖合1キロから放出するもの。
今回は、工事の安全性を認めたもので、東京電力は県などの了解を得たあとに工事を始める方針。
一方で「海洋放出」の計画については、国のアンケートでは、計画を知らないという人が6割に上り、賛成・反対の声より圧倒的に多いのが現状。
この状況下で計画が進むことに、いわき市の鮮魚店社長・大川勝正さんは「ちょっとずつでも現状を知っていただく、処理水のことも理解していただく人が増えるといい」「魚の魅力もそうだけど、処理水の話をしっかりやってほしい」と話した。
この先、どのように情報発信をするのか、政府の姿勢が問われている。
日本、福島原発汚染水の放出を正式認可…韓国政府、緊急対策会議で対応策協議
ハンギョレ新聞 2022/7/23
グリーンピース「国際法順守しない決定」
日本原子力規制委員会が22日、福島第一原子力発電所で発生する汚染水の海洋放流計画を正式に認可したことを受けて、韓国政府が緊急関係省庁会議を開き、対応策を協議した。
政府は同日、パン・ムンギュ国務調整室長の主宰で「福島原発汚染水の海洋放出に対応する関係省庁会議」を開催したと発表した。同会議には外交部、原子力安全委員会、科学技術情報通信部、海洋水産部、食品医薬品安全処、環境部、保健福祉部、疾病管理庁、文化体育観光部の次官らが参加した。会議では同日、日本原子力規制委員会が福島第一原発の汚染水を海洋放出する設備計画を認可したことに対する今後の対応策が話し合われた。昨年4月、日本政府は福島原発の汚染水の海洋放出を決めており、原発運営会社の東京電力は昨年12月、関連計画を提出した。日本政府は汚染水に含まれた放射性核種の大部分を多核種除去設備(ALPS)で排出基準値以内に処理し、処理できないトリチウムは海水で薄めて排出する方針を取りまとめた。
政府の説明によると、今回の認可以降、日本は汚染水内の放射性核種の再分類と放射線影響評価の再実施、汚染水設備の運用計画の補完、設備に対する使用前の検査など、実際の放出前の諸手続きを踏む計画だ。国際原子力機関(IAEA)モニタリングタスクフォース(TF)も総合安全性の検討結果を発表する予定だ。
政府は「韓国国民の健康と安全が最も重要だという原則のもと、対内外的に最善の対応措置を取っていく」と述べた。また「現在、韓国の専門家および専門機関が国際原子力機関の安全性モニタリングに参加している」とし、「今後も科学的かつ客観的検証が行われ、国際法と国際基準に基づいて汚染水が処理されるようIAEAと協力していく計画」だと明らかにした。さらに「海洋放射能監視体制を拡大し、関連情報を透明に公開する」方針も示した。具体的には、韓国の港湾・沿岸と沿海・近海の海水・海洋生物・海底堆積物に対する放射能モニタリングを最大月1~2回実施するなど、監視を拡大強化することにした。これと共に、日本の原発汚染水の海洋放出が韓国海域に及ぼす影響もシミュレーションを通じて検証していく予定だ。輸入水産物流通履歴申告と原産地取り締まり対象の魚種を拡大していくなど、水産物に対する安全管理も強化する方針だ。合わせて「日本とは2国間のコミュニケーションや協議チンネルなどを通じて、海洋放出の潜在的影響に対する憂慮を伝える一方、韓国独自の安全性の検討に必要な十分な情報提供と原発汚染水の安全な処理のための責任ある対応を持続的に求める計画だ」と明らかにした。
一方、国際環境団体グリーンピースは同日、「国際社会が合意した放射線防護の原則における正当化と海洋保護のための国際法を順守していない決定」だと強く批判した。グリーンピースの気候エネルギー・キャンペイナーのチャン・マリ氏は「汚染水の海洋放出計画はそれ自体で科学的・技術的妥当性が欠けたまま、2050年まで福島第一原発の原子炉を廃炉するという盲目的な目標のもと樹立された」と指摘した。チャン氏は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は今回の決定を傍観してはならない」として、「文在寅(ムン・ジェイン)政権は1年前に国際海洋法裁判所に暫定措置の請求および提訴する案を検討するよう関係省庁に指示したが、それらの措置はまだ履行されていない。福島第一原発汚染水を防ぐためには、168カ国が批准した国連海洋法条約を活用して日本政府に圧力をかけるべきだ」と語った。
キム・ユンジュ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)