東京新聞 2015年8月28日
東京電力福島第一原発の事故で、被災者を含む国内外の約三千八百人が、同原発の原子炉を製造した米ゼネラル・エレクトリック(GE)と東芝、日立製作所の三社に損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が二十八日、東京地裁であり、原告側は「東電だけでなくメーカーも事故の責任を負うべきだ」と主張。メーカー側は争う姿勢を示した。
原子力損害賠償法は原発事故で電力会社などの「原子力事業者」以外は賠償責任を負わないと定めている。原告側は、この法律は「製造者の責任を問う権利を妨げており、違憲で無効」と主張。「三社には原発の構造上の欠陥を知りながら放置した過失がある」と指摘。メーカー側は「三社が責任を負わなくても被害は賠償される。違憲ではない」と主張した。
原告の一人で福島県郡山市の森園和重さん(53)は意見陳述で「低線量被ばくを強要され続け、放射能に汚染された土地に戻れずに自殺する人も後を絶たない」と被災地の窮状を強調。「原子炉の欠陥が指摘されながらメーカーは責任を追及されていない。利益のみを追求し責任を逃れる理不尽極まりない現状を、許さないでください」と訴えた。
原告は福島県の三十四人を含む国内の約千四百人と韓国や台湾などの約二千四百人。メーカーの賠償責任を認めさせることが訴訟の最大の目的のため、請求額は一人当たり百円とした。
◆原告に元設計者も
「メーカーの責任は決定的に大きい」。閉廷後、原告らは東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。原告の一人で元東芝の原子炉格納容器設計者だった後藤政志氏(66)は、賠償責任を否定するメーカー三社の責任の大きさを厳しい口調で訴えた。
後藤氏自身は、福島第一原発には関わっていないが、「(放射性物質の拡散につながった)水素爆発がなぜ起きたか。一番分かっているのはメーカー。責任がないとは口が裂けても言えないはずだ」と声を絞り出した。
日本の脱原子力運動を支えた核化学者の故・高木仁三郎氏の妻で「高木仁三郎市民科学基金」事務局長の久仁子さん(70)も「海外では事故のたびに安全性を見直してきた。日本では見直しの検討さえせず、今回の事故の遠因になった。メーカーの責任を問わない仕組みのままでは、将来の安全はない」と訴えた。