2015年8月30日日曜日

福島第一原発周辺のモミに異常

 環境省が、福島第一原発近くの放射線量が比較的高い地域に生えているモミの木を調べたところ、幹の先端が欠けるなどの異常が通常より高い割合で現れていることが分かりました。
 異常が見つかった割合は、放射線量が毎時およそ34マイクロシーベルトの場所で98%、毎時およそ20マイクロシーベルトの場所で44%、毎時およそ7マイクロシーベルトの場所では27%でした。

 分析を行った放医研では原発事故で放出された放射性物質が影響している可能性があるとしていて、分析結果はイギリスの科学雑誌、サイエンティフィックリポーツのウェブサイトに掲載されました。

 なお、記事中で「野生動植物調査では、約80種を調べた結果、モミ以外で異常は見られない」とされていますが、福島県で捕獲されたヤマトシジミ(蝶の一種)の奇形英科学誌ネイチャーに発表)やツバメの尾羽根などの奇形その他が既に報告されています。
 また高度汚染地域での小動物の個体群サイズ著し縮小、個体数の著しい減少が確認されています

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福島第1原発事故 モミの木に異変 幹の先端、芽が出ず
 線量高い場所ほど多発
毎日新聞 2015年08月29日
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県の帰還困難区域内で、2012年以降にモミの木の生育異常が増加しているとの調査結果を、放射線医学総合研究所の渡辺嘉人主任研究員らが28日、英科学誌サイエンティフィックリポーツに発表した。放射線量が高い場所ほど異常な木の割合が高く、放射線の影響の可能性がある。チームは「放射線との因果関係やメカニズムを解明するにはさらに研究が必要だ」としている。
 
 チームは大熊町と浪江町の計3カ所と、比較対象として北茨城市でそれぞれ111〜202本のモミの木を調べた。
 
 その結果、放射線量が最も高い大熊町の調査地(毎時33・9マイクロシーベルト)では97・6%で、幹の先端の「主幹」と呼ばれる芽がなかった。主幹がないと生育が止まる。放射線量が同19・6マイクロシーベルトと同6・85マイクロシーベルトの浪江町の2カ所の調査地では、それぞれ43・5%と27%に異常が見られた。一方、北茨城市(同0・13マイクロシーベルト)では5・8%にとどまった。
 
 環境省が11年度から実施している野生動植物調査では、約80種を調べた結果、モミ以外で異常は見られないという。針葉樹は放射線の影響を受けやすいことが知られており、旧ソ連・チェルノブイリ原発事故後には、ヨーロッパアカマツなどで異常が出たという報告がある。メカニズムは分かっていない。
 
 チェルノブイリ事故の環境影響に詳しい笠井篤・元日本原子力研究所研究室長は「チェルノブイリで木に影響が出た地域の線量は今回の調査地点よりけた違いに高い。気象条件など自然環境要因も考慮し、慎重に原因を調べる必要がある」と指摘する。 【渡辺諒】


正常に生育しているモミ=放射線医学総合研究所提供


生育異常を起こしたモミ。先端の「主幹」と呼ばれる芽がない=放射線医学総合研究所提供
生育異常を起こしたモミ。先端の「主幹」と呼ばれる芽がない=放射線医学総合