2015年8月13日木曜日

SPEEDI予測 政府も「不確実」として防災基本計画から外す

 日本の原発規制基準は深層防護の(=過酷事故時、.放射性物質の放出による放射線影響の緩和  住民の避難を欠いた欠陥商品ですが、それを更に徹底する決定が行われました。
 
 原発事故の際に放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に放射性物質の拡散範囲や量を予測するSPEEDIについて、政府は7月、防災基本計画で住民の避難に活用しないことを決めました。
 その理由は「予測が不確実なため」というのですが不可解なことです。
 
 福島原発事故時には行政の不手際でSPEEDIの情報を生かすことができませんでしたが、スーパーコンピュータが打ち出す放射能汚染予測情報は事故後の実測値(原発から北西方向のある範囲が濃厚に汚染)とほぼ一致するほど正確なものでした。
  (2011年3月12日~4月24日積算値
 
 この一体どこが不正確だというのでしょうか。
 そもそも政府のこの決定は3月頃規制委が突如、SPEEDIを使わないという不可解な決定をしたのをそのまま追認したものです。
 
 規制委=政府の案は、原発から5キロ圏は即避難とする一方、5~30キロ圏は屋内退避を基本とし、空間放射線量の実測値が毎時500マイクロシーベルトに達したら避難することにして、その時点でSPEEDIを「参考にする」というものです。
 ということはまず5キロ圏の人たちは何の情報も与えられない中で、自分たち逃げる方向を決めるしかなく、その他の人たちは空間線量が500マイクロシーベルトに達するまでは住宅に留まって被曝し、それ以上になったところで初めてSPEEDI情報を「参考にして」避難するというものです。
 
 規制委=政府の言い分は、住民被曝することになってもそれが「世界のスタンダードな方法だ」というのですが、なるほどSPEEDIを持たない国ではそうするしかないのでしょうが、それはSPEEDIを持ちながら活用しないことの理由には決してなりません。
 
 500マイクロシーベルト/時の高さもさることながら、それを現在の定点観測で遺漏なくキャッチしようというのはあまりにもラフな考え方です。 観測点は少なくとも現在の10倍以上の密度で敷設する必要があるのではないでしょうか。そうでなければ、濃厚なプルームをキャッチし損ねて住民が重大な被曝をする惧れがあります。
 
 結局規制委にも政府にも深層防護 第5層の考え方が欠落しているので、住民を被曝から守ろうという考えは希薄です
 そもそもこうした重大なことを、原子力ムラの代理人である規制委と同じような政府で決めてしまっていい筈がありません。
 先ずは政府の息のかかっていない有識者に判断を仰ぐべき事項です。
 
  (関係記事)
2015年4月20日 「SPEEDI」は使用せず 規制委が不可解な決定 
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緊急時放射能予測:政府「不確実」防災基本計画から外す
毎日新聞 2015年08月12日
 原発事故の際に放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に放射性物質の拡散範囲や量を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)について、政府は7月、国や自治体の災害対応の基礎となる防災基本計画で住民の避難に活用しないことを決めた。「予測が不確実なため」としているが、住民避難で予測を参考にするとしてきた自治体や住民は反発している。
     
 SPEEDIは原発事故時の避難に活用すると位置づけられていたが、東京電力福島第1原発事故では予測の公表が遅れ、住民に無用の被ばくを強いたとして国が批判された。
 
 原子力規制委員会は2012年に新たな原子力防災指針を策定。原発から5キロ圏は即避難とする一方、530キロ圏は屋内退避を基本とし、空間放射線量の実測値が毎時500マイクロシーベルトに達したら避難すると定めた。この時点で指針はSPEEDIを「参考にする」とし、同時期、防災基本計画も予測結果を「公開する」とした。
 
 だが、今年4月に指針からSPEEDIの記述が消え、7月には防災基本計画からも除外された。原子力規制庁幹部は「放射性物質の流れた方向が予測と異なることもあり不確実だ。実測値の基準では被ばくを完全には防げないが、世界でもスタンダードな方法だ」と説明する。
 
 国の「SPEEDI外し」に、新潟県の泉田裕彦知事は7月の中央防災会議で「被ばくが前提の避難基準では住民の理解は得られない」と訴えた。また、11日に再稼働した九州電力川内(せんだい)原発の地元、鹿児島県薩摩川内市などで開かれてきた避難計画の説明会でも、自治体はSPEEDI活用の考えを伝えていた。市内で子供3人を育てる大中美子さん(48)は「被ばくありきの避難計画では引っ越さないと子供は守れない」と国の姿勢に憤る。【関谷俊介、杣谷健太】
 
◇SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)
 事故を起こした原発から送られてくる放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に、放射性物質の拡散範囲や量、大気中の濃度などを予測するシステム。現在は原子力規制委員会が運用し、予測結果は原発の立地する周辺自治体などに送信される。1979年の米スリーマイル島原発事故をきっかけに120億円以上かけて開発され、東京電力福島第1原発事故当時は文部科学省所管の原子力安全技術センターが運用していた。