LITERAが川内原発の再稼動審査の問題点=非合法性を指摘するレポートを載せました。
ここで書かれている個々の事柄はこれまでもその都度取り上げられてきましたが、こうして並べられると実に恐ろしい「非合法」が行われていることが実感されます。
最初のところで地震学者の石橋克彦氏が規制委への意見書で「審査の手抜き」「過誤」を指摘し、審査をやり直すべきだと批判したことが書かれています。
石橋神戸大名誉教授は地震学(プレートテクトニクス)の権威で、1976年に東海地震説を発表し、阪神・淡路大震災の前年の1994年には、建築基準法の危険性を指摘。2005年には、衆議院予算委員会公聴会で「迫り来る大地震活動期は未曾有の国難である」と強く警告した人です(2006年には『原発施設に関する耐震設計審査指針』の改訂で、地震のデータが反映されないことに抗議して委員を辞任)。
決して規制委の田中委員長が、質問した記者を「石橋信者」などと呼んで片付けられるような問題ではありません。
また自分たちで設けた火山条項を自分たちで無視した田中氏は、一体どう弁解が出来るというのでしょうか。弁解の余地などありません。
彼は記者会見で「巨大噴火が起きれば九州が全滅する。原発の問題ではない」と述べましたが、巨大噴火で多大な被害が出れば原発の爆発は大したことではないというのは、原発事故の特殊性を無視した暴論です。もしも数百℃の火砕流が到達して原発内の核燃料が完全に分解爆発することになれば、それは世界に対して取り返しのつかない被害を撒き散らすことになるからです。
田中氏にはこうした初歩的な分別もないのでしょうか。それではエラそうに規制委員などを務めるべきではありません。記者会見を見た範囲では彼は情緒の不安定な人間という印象を受けます。
彼はまた川内1号機の「30年超運転」が認可されていないことを指摘されると、急遽8月5日に、肝心な耐震性を検討しないまま許可しました。これも恐るべき無責任さで、この先10年間の原子炉などの安全性を一体誰が、どう担保するというのでしょうか。
LITERAは、規制委・田中委員長は“原子力ムラ”の代弁者だからということでレポートをまとめています。
規制委もまことに恐るべき人がトップになったものです。その点は安倍晋三氏と全く同様です。
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川内原発の再稼動審査で行われたおそるべき「非合法」!
手続きすっとばし、学者の警告無視、老朽化耐震審査の先送り…
LITERA 2015年8月11日
今日8月11日、川内原発が再稼動される見込みだ。これまで川内原発についてはいくつも大きな問題が指摘されてきた。どれひとつとっても、それだけで再稼動を認めることの出来ない問題ばかりだ。
にもかかわらず、再稼働が認められた背景には、九州電力、原子力規制委員会、そして安倍政権の無責任でデタラメな姿勢がはっきりと現れている。彼らはまず、再稼働ありきで、そのために平気で「非科学的」なデータをもちだし、ありえないような「非論理的」な解釈をごり押ししてきた。これは、安倍政権が安保法制で明確な「憲法違反」をごり押ししている構図と全く同じだ。
再稼動の審査で、いったい連中がどんなインチキを行ってきたのか。あらためて、指摘しておこう。
■内閣府の想定震度を無視した「審査手抜き」
まず、最初に指摘しておかなければならないのは、川内原発が「基準地震動」を過小に設定、正しい検討手続きを踏んでいないという点だ。
「基準地震動」とは、簡単に言えば、その原発に発生しうる地震の強さの基準だ。電力会社はその基準に対して安全対策をとらねばならない。新規制のガイドラインでは、「内陸地殻内地震」「プレート間地震」「海洋プレート内地震」について検討し「基準地震動」を科学的に作らねばならないとしている。しかし九電は内陸地殻内地震しか検討せず、プレート間地震と海洋プレート内地震を無視したのだ。
この問題については、地震学者の石橋克彦神戸大学名誉教授が規制委への意見書や月刊誌「科学」(岩波書店)で、「審査の手抜き」「過誤」であると指摘、審査をやり直すべきだと批判したのだが、九電も規制委も聞く耳を持たず、「プレート間地震と海洋プレート内地震については、揺れは震度5弱に達せず、原発に大きな影響を与えない」と、はねつけた。
しかし、プレート間地震である南海トラフの巨大地震では、内閣府・中央防災会議が川内原発近くの最大震度は震度5弱に「達する」と予測しているのだ。
これについては昨年、『報道ステーション』(テレビ朝日系)が特集で追及していたが、新規制基準では、原発の敷地内に火山噴火による火砕流などが及ぶ場合は立地不適となり、本来は川内原発もこれに抵触するため再稼働は認められないだろうと考えられていた。
ところが、九電も規制委も、川内原発が稼動している数十年の間に噴火は来ないとして立地不適にしなかったのである。
しかし、審査では火山の専門家は一人も意見を聴取されておらず、火山学者の多くは、数十年の間に噴火しないとは科学的に言えない、と疑義を呈している。九電側はカルデラ噴火が6万年間隔だとしているが、これはただ平均を出しただけで、火山学的はまったく根拠のないものだ、とも指摘されている。
さらに問題なのは、そもそも火山の影響評価では審査基準を達成することが不可能なことだ。新規制基準火山影響評価ガイドでは、火山活動のモニタリングと火山活動の兆候は把握時の対処を適切に定めることが条件とされている。つまり、モニタリングで噴火の兆候を把握できることが前提条件とされており、その条件で、川内原発の火山審査は合格した。
しかし、火山学者は火山の兆候把握は不可能だと言っているのだ。それも一人、二人の火山学者だけが言っているわけではない。「我々は巨大噴火を観測したことがない。どのくらいの前兆現象が起きるか誰もしらない」と語った火山予知連絡会の藤井敏嗣会長はじめ、ほとんどの火山学者が否定しているのだ。これは安保法制での憲法学者と同じ状況である。
それならば審査合格を見直して、まずガイドラインを修正せねばならない。それが「科学」というものだ。火山学会も、このガイドラインの修正を要求した。
しかし規制委はこれも無視した。いや、無視しただけではなく田中委員長は、「そんな巨大噴火が起きれば、九州が全滅する。原発の問題ではない」と言い放った。これは子供でもインチキだと分かる詭弁だろう。巨大噴火でも重大な災害であるのに、それに複合して原子力災害まで同時に起きてもいいというのか。更に言えば、規制委は原発の安全規制のために存在している。それならば、粛々と巨大噴火に対する原発の立地条件を審査するのが職務である。
もし田中委員長の主張通りに巨大噴火を想定するのが無意味なら、それこそガイドラインを修正し、「巨大噴火は検討しない」と書かねばならない。田中委員長のゴマカシ強弁はとても科学者の姿勢とは思えない。
■老朽化による1号機耐震審査をしないまま認可
川内原発の審査については他にも多くの問題があるが、最近も唖然とするような事態が起きている。
運転から30年経過した原発は、新規制基準の適合性審査とは別に、規制委の認可を得なくてはならないと原子炉等規制法で規定されている。川内原発1号機も昨年7月に30年を迎えていたが、九州電力の申請が遅れ、この7月時点でも審査は終わっていなかった。
ところが、規制庁、規制委は川内原発については、この老朽化についての審査・認可なしに再稼動を認めようとしていたのだ。それが可能なら、30年経過してもいつまでも原発を稼働できることになる。
そこで、菅直人元首相が老朽化審査の認可前の再稼動は違法ではないかという質問主意書を提出。すると、突如、規制委は審査を早め、川内原発の老朽化申請を認可したのだ。しかも8月5日。再稼動の前の週だ。
さらに驚くのは、老朽化した設備等が想定される地震動に耐えられるかの評価が一部間に合わなかったために、九電がその評価を1年間先送りするとし、規制委もそれを認可してしまったことだ。つまり、川内原発は、老朽化によって地震に耐えられるかもわからないまま、今日、再稼働されるということだ。
■原子力規制委・田中委員長は“原子力ムラ”の代弁者
ここまでくると「非科学的」「非論理的」どころか、「手続無視」「非合法」の超法規的再稼働の強行だが、いったいなぜ、こんな無茶が通ってしまったのか。
九州電力が再稼働を急ぐのはわかるが、これでは、石橋教授の言う通り、独立した審査機関であるはずの規制委が九州電力の「使い走り」となっているといわれてもしようがないだろう。
しかし、考えてみれば、これは当然の結末といえるかもしれない。この原子力規制委員会のトップに座る田中俊一委員長は、東北大学卒業後、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)に入所。2004年には同機構の副理事長に就任し、その後も内閣府原子力委員長代理(07~09年)、日本原子力学会会長(09年)を歴任した、完全なる”原子力ムラ”の住人、いや村長といってもいいような存在なのだ。
それが委員長に抜擢された背景には、震災翌月に研究者15人と国民に謝罪を表明し、福島で除染活動に取り組んできたことがあったとされるが、これも除染利権がらみだったのではないかと言われている。
田中委員長の除染活動には、田中氏の関係する原子力関連企業のスタッフが参加しており、そのうちの1社はその後、除染事業を次々と受注したことが「週刊朝日」(朝日新聞出版)の報道で、明らかになっている。
そして、原子力損害賠償紛争審査会の委員に就任すると、その“原子力ムラ”の本質を徐々に露わにし始める。自主避難者への賠償に異を唱え、100ミリシーベルトの被爆を「影響は大きくない」と、早期帰還を主張。電力会社の賠償を減らすことが目的のような動きを始めた。
規制委の委員長に就任後も、その態度は露骨だった。就任直後の国会では、「出来るだけ早く審査する」と何度も発言した。早く審査しろとは国民は言っておらず、むしろ、3.11の反省に立ち、安全性を厳格に規制するために規制委を作ったはずだ。それが、まるで電力会社をはじめとする原子力ムラの要望に応えるのが使命であるかのような発言を連発した。
こうした原子力ムラを代弁する言動は、再稼働推進を掲げる安倍政権が発足すると、さらにエスカレート。そして、強行されたのが、川内原発の再稼働だったのである。
しかも、田中委員長が下劣なのは、これだけ政治的な判断をしながら「規制委は再稼働するかどうかは判断しない」「川内原発は新規制基準に適合したと判断しただけで、安全と認めたわけではない」と自らの責任をあらかじめ回避していることだ。
川内原発と、無責任のきわみである田中委員長をこのまま放置しておいたら、第二の福島第一原発事故が発生するのは必至だろう。 (松崎 純)