第138回小出裕章ジャーナル(ラジオ)では、
・100万KWhの原発1基当り 海水温+7℃の温排水が70トン/秒出て海を暖める
・漁協への補償金はカネで漁民の口を塞ぐもの
・田中規制委員長は原子力ムラの中心人物だった
などが語られました。
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原発は海温め装置?
「海の水をまず引き込んで、その水の温度を7度上げて海へ戻します。
その流量が1秒間に70トン」
第138回小出裕章ジャーナル 2015年08月28日
西谷文和: 今日は先日、小出先生の書かれた本なんかを読んでると、「原発というのは海温め装置だよ」という一文が出てきたのですが、これはどういうことでしょうか?
小出さん: はい。原子力発電所も火力発電所もいわゆる蒸気機関と私達が呼んでいるものでして、例えば原子炉の場合、水をまず沸騰させるために、ウランの核分裂のエネルギーで水を沸騰させるわけですが、その使ったエネルギーのうち、電気に変換される部分はわずか3分の1しかない。
西 谷 : 3分の1?
小出さん: はい。残りの3分の2の熱は、もうどうにも使いようがなくて捨てるしかないというそういう機械なのです。そしてどうやって捨てるかと言うと、海水を敷地の中に引き込んで、その海水を温めて、また海に戻すというやり方をしているのです。発生した熱のうちの3分の2、つまり本体を海を温めるために使っているというそういう機械ですので、発電所というよりは、むしろ海温め装置と呼ぶべきだと、私が数少ない恩師と呼ぶ水戸巌さんという人が、私が学生の頃に教えてくれました。
西 谷 : 先日、私、新潟県の刈羽原発の所に行ったんですけど、地元の方が「原発の周りにイルカが出る」って言うんですよ。これ、なんか地球温暖化かなと一瞬思うんですけども、もしかしたら、原発があったかいのでイルカが来た、そういうことも可能性としてはありますかね?
小出さん: もちろんあります。今日では、100万キロワットという原子力発電所が標準になっているのですが、その原子力発電所では海の水をまず引き込んで、その水の温度を7度上げて海へ戻します。その流量が1秒間に70トン。
西 谷 : 7度上がった水が70トンも流れてくる?
小出さん: 1秒毎にですね。
小出さん: はい。日本には、1秒間に70トンを超えるような大きな川は、30もないというくらいの巨大な温かい川がそこにできてしまう。全く違う生態系になってしまって、それまで、そこに生きてきた生き物は生きられなくなりますし、あったかい海が好きという今度、生き物がそこに集まってくるということになるのです。
西 谷 : 福島第一原発の漁協を取材した時に、漁師さん達がこそっと、「福一が動いてた時は、なんか巨大なスズキが捕れた」とかおっしゃってましたが。
小出さん: 私は魚類学者じゃありませんのでよくわかりませんが、そんな可能性も含めて、やはりきちっと調べるというのが科学的な態度だと思います。
西 谷 : そうですね。そこで、この7月28日付の毎日新聞に、東電が汚染水放出を漁協に頼んで、漁協はそれを容認しちゃったわけですが、やっぱりこの原子力ムラがこの漁協に対して、あちこちあるパターンなんですけども、かなりそういう補償金なんかを積んでいるということも考えられるんでしょうねえ。
小出さん: もちろんです。要するに、東電としてはカネで漁民の口を塞ぐというようなことをずっとやってきたわけですし、今の福島第一原子力発電所の状況を考えれば、放射能汚染水のコントロール、基本的にはもうできない状況になっているわけですから、あとは漁民の口をカネで封じるという以外ににはやりようがないと思います。
西 谷 : 凍土壁とかいろいろ言ってますけど止まらないですよねえ、この汚染水。
小出さん: 止まらないです。たぶん今後もトラブル何度も何度もあるだろうと思います。
西 谷 : 海への汚染も止まらないし、大気中の汚染もまだまだ下がっていないと思うのですが、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、「自主避難されてる方は、自分は嫌だからということで避難してる人」ということをおっしゃった上でですね、「国が自主避難者を支援する必要はない」という考え方を示したんですが、このことを聞かれてどう感じられてますか?
小出さん: 怒りに震えました。本当に今、苦難に落とされている人達は、何も悪いことをしたわけではないのです。
東京電力が「放射能なんて撒き散らさない」と言ってきたにも関わらず、大量の放射性物質をバラまいた。日本の国も「東京電力の原子力発電所が大事故を起こすことなんてない」と言ってお墨付きを与えてきたわけですけれども、それが全て嘘だったわけです。そのために今、苦難に落とされてしまって、さまざまに言葉では言いようのない多様な困難というのを負わされているわけです。
その人達を何とか支援する、支えるということが東京電力と国のまずはやらなければいけない責任だと、私は思います。そして田中俊一さんも、今は原子力規制委員会の委員長になっていますけれども、もともと原子力ムラ、原子力マフィアの中心人物だったわけで、福島第一原子力発電所の事故に対して重たい責任のある人です。
その人が自分がやったこと、自分が苦難を負わせた人達に対して、「何の賠償もしないでいい」というようなことを言うというのは、本当に異常な世界なんだなと私は思います。
西 谷 : この規制委員会の委員長になっておられるということ自体が問題だということでしょうか?
小出さん: そうです。原子力マフィアの人達を規制委員会などに本当はしてはいけなかったわけですけれども、今の原子力規制委員会は、ほとんどが原子力マフィアの人達が占めてしまっているという状況で、原子力マフィアとしては誰も責任をとらないまま、原子力発電所の再稼働に行きたいということで、原子力規制委員会という組織自身を作ってきているわけですから、本当におかしな世界だなと思います。
西 谷 : これね小出さん、例えば、安倍内閣の下で有識者委員会とか第三者委員会という名前だけがなんか聞いてるんですけども、そこにいるのはみんな安倍内閣のお友達であったり、原子力ムラの方であったりしますから、こういうこと自体が欺瞞だということと考えてもいいんでしょうか?
小出さん: はい。私はそう思います。
西 谷 : わかりました。ほんとにね、自主避難者、まだまだ苦難されております。もっともっと支援が必要だということでしょうね。
小出さん: はい。もちろんです。何の罪もない人達を苦難に陥れたわけですから、国として彼らを支えるというのは、当然やらなければいけないことだと私は思います。
西 谷 : はい、よく分かりました。
小出ジャーナル、自主避難者も支援していこうということで、よく理解できました。
以上、小出裕章ジャーナルでした。小出さん、どうもありがとうございました。
小出さん: ありがとうございました。