2015年8月18日火曜日

川内原発を襲う姶良カルデラ噴火 「日本壊滅のシナリオ」

 姶良(あいら)カルデラは霧島火山とその北部=鹿児島湾北部が形成する直径約20kmの湾の中にあるもので、いまは海底火山です。カルデラの中心部と川内原発との距離は約30kmで、巨大噴火が起きれば最短5分で数百℃の火砕流が到達します。
 
 「破局的な大噴火が起きたら九州は全滅するのだから、原発事故どころではない」というのが田中規制委員長の言葉ですが、勿論間違っています。
 最大の噴火は約2万5千年前に起き、高さ数十mの火砕流が川内原発の敷地近辺を襲い、空中に吹き上げられた火山灰は偏西風に流されて北東へ広がり日本列島の各地に降り積もりました。関東地方では10cmの厚さの降灰があったとされています。
 もしもそのときに川内原発の核燃料が爆発すれば同じように、偏西風に乗って関東地方を含む日本の広い地域を核で汚染します。数十cmの「放射性」火山灰が降り積もればどういうことになるのか想像もできません。
 
 原子力規制委は、巨大噴火は少なくとも川内原発の稼働中には起きないし、巨大噴火はGPSでの観測などで予知できるという見解ですが、火山学者は、噴火が起きないとはいえないとし、海底火山のマグマの挙動を感知して噴火を予知することは出来ないとしています。
 それに不満を抱いた田中委員長は、記者会見の席上で「火山学者はただ予知ができないと言うのではなく、夜も寝ないで研究すればいいじゃないか」と敵意を剥き出しにしましたが、常軌を逸した反応です。
 火山の専門家たちの一致した見解を無視して何が何でも再稼動にのめり込むとは、大変な暴走です。
 
 ハーバー・ビジネス・オンラインの記事を紹介します。
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川内原発を襲う、カルデラ噴火 「日本壊滅のシナリオ
ハーバー・ビジネス・オンライン2015年08月17日 
 8月11日、九州電力川内原子力発電所一号機が再起働した。日本から原発の火が消えてから2年弱。「世界一厳しい」と安倍首相はじめ関係者が口をそろえる「新基準」のもと、電力会社や政府は全国にある原発の再稼働に向けて弾みをつけた格好だ。
 
 東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故から約4年半が経過したが、原発の安全性に関する議論はいまだ結論からは程遠い。その中でも川内原発周辺は、多くの活火山や巨大カルデラに囲まれており、世界的に見ても有数の「カルデラ密集地帯」だと言われている。再稼働第一号となる川内原発は、果たして「もっとも安全な原発」なのだろうか。
 
火砕流が原発を飲み込み、収束作業も不可能な事態に!?
 原発推進派からは、「どうせ破局的な大噴火が起きたら九州は全滅するのだから、原発事故どころではない」という声も聞こえる。それに対して、鹿児島大学の井村隆介教授(火山学)はこう反論する。
「噴火も地震や津波と一緒で、防ぐことはできません。それだけでも多くの人命が失われるでしょう。しかし福島では、原発事故がなければ助かっていた人たちの命まで失われました。それこそ、私たちが学ぶべき教訓です」
 
 特に、川内原発に一番近い姶良カルデラが噴火した場合、その被害は想像を絶する。
「数百度の熱を帯びた火砕流が川内原発敷地内まで到達する可能性があります。そうなれば、原発自体が破壊されるのはもちろんのこと、原発作業員も全員火砕流でやられてしまいます。火砕流と放射能で、外部から救助にも原発の収束作業にも入れないという恐ろしい事態になってしまうのです」(井村教授)
 
“死の灰”が全国に飛散、日本壊滅!?
 そこからさらに、福島の事故より恐ろしいケースも想定される。
「噴火に伴う原発事故の場合、火山灰に放射性物質がくっついて、風に乗って全国に降り注ぐことになります。しかもカルデラ破局噴火の場合、日本最大の地上の火山である富士山と同じくらいの体積の降下物が飛散します。それだけの降下物が放射能を伴って日本中に降り注ぐ可能性を考えないといけません」(同)
 
 そうなれば、日本は壊滅だ。噴火予知と原発の関係についても、井村教授はこう指摘する。
「予知に成功したと言われるフィリピンのピナツボ火山ですら、噴火の予兆を観測したのは3か月前。たとえ南九州の噴火を予知できたとしても、稼働中の原発の燃料棒搬出に間に合うとは思えません
 
 実は九州電力も、カルデラ破局噴火の場合に火砕流が川内原発の敷地内に到達する可能性を認めている。しかし、そのような事態は「原発稼働中には起こらないとする判断は合理的である」として、今回の安全審査をパスした。
 だが、原発稼働中に100%噴火が起こらないという科学的・合理的根拠があるわけではない。その可能性は小さいかもしれないが存在する。3・11も、「起こるかもしれないがその可能性は低い」と思われてきた規模のものだった。原発は「災害が起こらない」という可能性に“賭ける”ようなことがあってもよいものかどうかが、今問われている。
 
 取材・文/足立力也
 コスタリカ研究家、北九州大学非常勤講師。著書に『丸腰国家』(扶桑社新書)『平和ってなんだろう』(岩波ジュニア新書)『緑の思想』(幻冬舎ルネッサンス)など。現在、『丸腰国家』キャンペーンを全国書店で開催中(八重洲ブックセンター、丸善ジュンク堂書店、戸田書店、平安堂、谷島屋、勝木書店、文教堂書店、明林堂書店、リブロ、明屋書店などの各店舗にて)。