河北新報が福島原発の“廃炉「本丸」への道 依然険しく”とする記事を出しました。
同記事の書きぶりはとても紳士的ですが、その実態はどうなのでしょうか。
事故後4年半を過ぎたのにいまだに放射能汚染水の処置は何も出来ていません。タンク貯蔵とか今度漁協と合意ができたサブドレン排水の処理後放流は、いずれも応急的な措置であり苦肉の策に過ぎません。
排水処理の切り札とされた凍土壁は、早くも完全凍結ができないことが確認され、これも完成の目処は立っていません。壮大な失敗に終わる可能性が濃厚です。
そしてデブリ(溶融核燃料の残骸)の取り出しに至ってはそれこそ五里霧中で、いつになったら解決するのか見当もつきません。
事故当時原子力が専門の大学教授たちが入れ替わり立ち替わりTVに登場しましたが、放射能の心配は要らないというだけで、今後事故をどのようにして終息させるかについての言及はありませんでした。
いまから思うとそれこそが日本には原発事故の解決能力が欠如していることを示していたのでした。
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<福島第1> 廃炉「本丸」への道 依然険しく
河北新報 2015年09月09日
東京電力福島第1原発の廃炉作業の鍵を握る汚染水対策は、建屋周辺の地下水を海洋放出する「サブドレン」の運用が始まるなど大きく前進した。ただ、最大の難関となる溶融燃料(燃料デブリ)取り出しに向けた本格調査はこれからで、廃炉作業の「本丸」への道は依然として遠く、険しい。
7基の1000トンタンクにつながった黒い配管が、2キロ先の海へ向かって坂を下っていく。8月26日、福島県や地元自治体などで組織する「廃炉安全監視協議会」がサブドレンの設備を視察した。「配管の耐久性は十分か」「海洋放出の運用基準の厳守を」。視察後、委員から質問や要望が相次いだ。
<1年棚上げ>
計画では建屋周辺にある41本の井戸「サブドレン」から地下水をくみ上げ、放射性物質を取り除いて海に放出する。汚染雨水の外洋流出を東電が積極的に公表していなかった「K排水路問題」などで1年近く棚上げとなっていた。
県漁連が8月上旬、「安定的に廃炉を進めることが漁業復興の特効薬になる」と実施を容認。地下水くみ上げが今月3日に始まった。排水は昨年8~11月の試験運用で保管していた4000トン分から始める予定。
<発生量半減>
高濃度汚染水は、1~4号機の建屋地下に流れ込む地下水が溶け落ちた核燃料に触れて発生する。国と東電は(1)汚染源を取り除く(2)汚染源に近づけない(3)汚染水を漏らさない-を基本方針に汚染水対策に当たる。
(2)の具体策がサブドレンだ。昨年5月に始めた「地下水バイパス」で汚染水の発生量を1日300トンまで削減。東電はサブドレン運用で汚染水の発生量を半分程度に減らせると見込む。
(1)に関しても、タンクにためた汚染水の放射性物質濃度を大幅に減らす1次処理が5月末に終了。電源ケーブルなどが通る地下道「トレンチ」に残った高濃度汚染水の抜き取りも7月に終わった。
(3)の鋼鉄製のくいを岸壁に打ち込み汚染水漏れを防ぐ「海側遮水壁」でも、サブドレンの安定稼働を確認後、閉鎖工事に着手する。
福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は8月末の記者会見で「本格的な廃炉作業へギアチェンジできる」と語った。ALPS(多核種除去設備)でも処理できないトリチウムの扱いが決まらないなど課題も多いが、汚染水対策は軌道に乗りつつある。
一方、デブリ取り出しは先が見えない。8月中に実施予定だったロボットによる2号機格納容器内の調査でさえ、投入口付近の遮蔽(しゃへい)ブロックの取り外しに手間取り、見通しが立たない。
[福島第1原発事故]
2011年3月11日の東日本大震災による地震と津波で、福島第1原発の原子炉6基のうち1~5号機の全交流電源が喪失し、原子炉や使用済み核燃料プールの冷却ができなくなった。1~3号機で炉心溶融が起き、1、3、4号機の原子炉建屋が水素爆発した。東電は大気中に放出された放射性物質の量が11年3月だけで90万テラベクレル(テラは1兆)に上ると試算。事故の深刻度は国際評価尺度(INES)でチェルノブイリ原発事故と同じ史上最悪の「レベル7」とされた。