2015年9月13日日曜日

「除染ごみ」行き場なし 震災から4年半 栃木

 福島原発事故に伴う除染で発生した放射性ゴミの処分が出来なくて困っているのは福島県に留まりません。
 福島県では、汚染土壌は国が設置した中間貯蔵施設に運ばれるというところまでは一応決められています。ただ実際には最終処分場がまだ宙に浮いているので、建前どおりには進んでいません。
 
 しかし福島県外ではそうしたことすらまだ決まっておらず、除染で発生した汚染土壌の大半が住宅や施設の敷地に埋設されているということです。環境省は福島県外での「汚染土壌の処分基準づくりを検討する」としていますが、事故から4年半が経過したのにいまだに応急処置のままになっているわけです。
 狭小な日本で原発を運転するのは元々無理だということを改めて認識させられます。
 
 東京新聞が栃木県の実態についてレポートしました。
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「除染ごみ」行き場なし 震災から4年半 栃木
東京新聞 2015年9月12日
 東京電力福島第一原発事故から四年半となった。県内で放射線の問題が取り上げられる機会は減ったように感じるが、今も五市町で住宅や民間施設の除染が続いている。除染事業そのものは数年内での完了が見込まれるが、国が除染で出た汚染土壌の処分方法を示していないだけでなく、本来処分できる除去後の廃棄物の扱いも難しい。事故から時間がたつにつれて見えづらくなっていく除染の実態に触れ、考えた。(大野暢子)
 
■未定
 那須町の山中の細い道を進むと、階段状になっている地形が姿を現した。「表面には雑草を生やしています。外から目立たないようにしたいので」。土地を管理する不動産会社の男性がこう説明した。一見、遊休地に見えるが、地中には周辺の住宅除染で出た土壌など約四千立方メートルが埋められている。
「仮置き場」と呼ばれるこの施設を、那須町が造ったのは、昨年の初夏のことだ。男性は続けた。「住民も必要性を理解してくれている。ただ、いずれは掘り返し、別の場所へ移してもらえると思っています」
 
 国の指針では、汚染土壌は最終処分までの間、市町が設けた仮置き場に保管するか、困難な場合は除染現場の敷地に埋め、一時保管することになっている。福島県の汚染土壌は、国が設置した中間貯蔵施設に運ばれるが、福島県外では処分の道筋が示されていない。
 那須町には二〇一三年度末現在、一万立方メートル以上の汚染土壌があるが、仮置き場は二カ所のみ。町民の間には土壌を一カ所に集めることへの不安が根強く、大半が住宅や施設の敷地に埋設されている現状がある。
 
 環境省の担当者は「福島県外でも汚染土壌の処分基準づくりを検討する」としているが、実現のめどは立っていない。地元には「処分基準はいつ示されるのか」という不安がくすぶる。
 
■難航
 課題は、汚染土壌だけではない。除染で発生した落ち葉や木の枝などの廃棄物は法律上、一般的な可燃物と同様に焼却処分できるが、現実の処分はそう簡単には進んでいない。
 こうした廃棄物は、那須町が約二十四万立方メートル、那須塩原市が約四千四百立方メートルを抱えている。ただ、大半は焼却処分のめどが立たないまま汚染土壌と同様、除染をした住宅や施設の敷地内に埋められている。
 那須塩原市は当初、同じ地区内の廃棄物をまとめて保管する方法を検討したが、地元の理解を得られずに断念した。国の指針通りに処分を進めようにも、焼却施設や最終処分場周辺の住民から了解を得られなければ、現在の保管場所から掘り出すことさえできない。
 汚染土壌や除染廃棄物は、原発事故の「負の遺産」の一つだという重い事実がある。国が将来、国内のどこかに汚染土壌の最終処分場を建設する際、建設地に選ばれた地域では強い反発が起きる可能性もある。
 
 取材の最後に聞いた、県北部の自治体職員の言葉が、胸に突き刺さった。
 「除染が終わっても、その先に残される問題の方がずっと大きいんです」
 
 <県内での除染> 国は原発事故を受け、平均的な空間放射線量が毎時023マイクロシーベルト以上の市町を「汚染状況重点調査地域」に指定。栃木県では那須、那須塩原、日光、大田原、矢板、鹿沼、佐野、塩谷の8市町が該当する。実際の除染作業は各市町が策定した除染実施計画に基づいている。