2015年9月14日月曜日

放射性汚染雨水の外洋排出基準 設定の見通しが立たず

 福島原発では、時間当たり14ミリ以上の雨が降るたびに、放流規制値1リットル当り80ベクレルを10倍近くも上回る放射性汚染水を海に放出しています。
 福島県は原子力規制委に排出総量などを規制する基準を設けるように要求していますが、規制委は「雨水を規制する法律はないから」と消極的だということです。
 
 なるほど雨水は自然に発生するものなので、その水質などを規制する法律はありませんが、福島原発の場合は、2号機屋上に堆積している濃厚な放射性物質が雨水で洗われるために、以後は放射性排水となって海に放出されているのですから、それを雨水と考える方が間違っています。
 またそのこと自体が「放射性物質を希釈処理してはならないする国際的な基本原則に反しています。
 
 それとも何が混じろうとも雨水は雨水で規制対象外というのであれば、いかなる有害物質であろうとも雨水排水溝に投げ込みさえすれば、乃至は屋根や屋上で混合してしまえばセーフということになって収拾がつかなくなります。
 
 また東電は例によって排水溝の排出先を港湾内へと付け替えようとしていますが、そんなことをしても海を汚染から守ることは出来ません。そんなことに時間と費用を掛けるのであれば、仮設の屋根を設けて雨水が堆積物を流さないようにするべきです。

 規制委は放射性物質を扱う専門機関なのですからもっとしっかりして欲しいものです。
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外洋排出基準設定見通し立たず 第一原発の汚染雨水流出続く
福島民報 2015年9月13日
 東京電力福島第一原発から放射性物質を含む雨水の港湾外への流出が続いている問題で、県から原子力規制委員会に汚染雨水の排出基準を設けるよう求める声が出ているが実現する見通しは立っていない。東電が対策を始めた4月以降、構内の「K排水路」から少なくとも7回、流出が確認された。県は排出総量などを規制する基準を設け、新たな防止策を講じなければ県民、漁業者の信頼を失うと訴える一方、同委員会は「雨水を規制する法律はない」と消極的だ。
 
■処理追い付かず
 K排水路は原子炉建屋周辺の雨水を流すための設備で、港湾外に直接つながっている。放射性物質を含む雨水が流出していることが分かり東電は今年4月、応急対策としてくみ上げ用のポンプ8台を設置。放射性物質の流出を防ぐ水中カーテンで港湾外と仕切られた港湾内に流す準備を整えた。
 東電はポンプ8台をフル稼働させると、毎時約14ミリの降雨まで対応できるとしていた。しかし、8月17日には10分間で3ミリ(毎時換算18ミリ)の想定を超える雨が降った。処理が追い付かず、雨水は排水路のせきを越え港湾外に流れ出た。今回の関東・東北水害では9日と11日に断続的に流出した。
 大雨に見舞われると、排水路が一気に増水し、水があふれ出るため流出量や放射性物質濃度を測れないという。昨年5月、測定できた際は放射性セシウム137が1リットル当たり最大770ベクレルで、法定放出基準である90ベクレルの8倍以上を検出した。
 
■工期短縮難しく
 東電は抜本的対策として、K排水路出口の港湾内への付け替えを進めている。地盤改良工事を進め、間もなく新たな排水ルートの掘削に着手する予定だ。大規模工事のため工期短縮は難しく、完成は来年3月末の見込みになっている。
 東電は半年後には問題が解決するとしているが、県はそれまで同じ事態が繰り返される可能性があるとして早急に対策を講じるよう求めている。本格的な台風シーズンを迎え、流出が相次げば廃炉作業に対する県民の不信が高まるとみているためだ。漁業者は新たな風評が生まれないかどうか心配している。
 県は汚染源とみられる排水路上流部にポンプを増設するよう要望しているが、東電は「上流部では排水路が地下にあるためポンプの構造上、設置できない」と説明している。放射性物質濃度低減のため排水路の清掃を続けているが目立った効果は出ていない。県内部から原子力規制委に排出基準を設定するよう求める声が出ているのは、こうした事情だ。
 高坂潔県原子力専門員は「流出を放置すれば廃炉作業に対する信頼を失う。(規制委は)放出基準を早急に設けるべきだ」と指摘する。
 
■規制法に明記なし
 原子炉等規制法には汚染雨水の取り扱いが明記されていない。原子力規制委は法的根拠がない限り、排出基準を設けるのは難しいとする立場だ。「対応するには法律を変える必要があり、かなりの時間を要する」と明かす関係者もいる。
 東電は「K排水路の付け替え工事が遅れないよう着実に工程を進めていく」としている。
 相馬市の漁業今野智光さん(56)は「漏れ出た雨水と放射性物質の量が分からず不安だ。東電はしっかり調査し、結果を漁業者に示してほしい」と求めている。
 
【背景】
 東京電力福島第一原発で、雨水は主に4つの排水路を通じて港湾外へと流れていた。平成25年夏、地上タンク付近を通る「B」「C」の排水路を通りタンクから漏れた高濃度汚染水が港湾外に流出したため、東電は両排水路の出口を港湾内へと付け替えた。一方、1~4号機西側に設けられた「K排水路」を通じ放射性物質の含まれる雨水が港湾外に流れ出ていた。東電はこの事実を把握していたが、今年2月末まで公表していなかった