2015年9月13日日曜日

原発は敵国にとって格好の標的 小出ジャーナル

 第140回小出裕章ジャーナルを紹介します。
 今回は、もしも戦争になったとき原発が攻撃で破壊されれば、福島原発事故と同じような甚大な被害を受けるので、格好の標的になるという話です。
 またアメリカの原子力潜水艦が日本に寄港していた場合は、あまり大きくない原発に相当する原子炉を搭載しているので、やはり格好の標的になるということです。
 
 文中の太字強調は原文に従っています。
 また原文では「小出さん」と「さん」付けで呼んでいますが、会話の語りだしの位置を揃えるためにここでは「さん」は省略しました。 
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原発への危険「相手の原子炉を破壊してしまえば、爆弾で破壊する以上に膨大な被害を与えられるわけですから、戦争になれば何でもあると覚悟しなければいけません」
第140回小出裕章ジャーナル 2015年09月12日
西谷文和: 今日はですね、テロなどの攻撃を受けた場合、原発はどうなるのかについて、お聞きしたいと思います。
小 出 : よろしくお願いします。
西 谷 : 例えばですね、「首都圏から一番近い原発はどこですか?」っていう質問が出た時に、それは東海ではないかとか、いろいろ思うわけですが、これ一番近いのは横須賀かもしれませんね。
小 出 : そうです。「首都圏から一番近い原発はどこか?」と言われれば、それは東海原発ですけれども、「一番近い原子炉はどこか?」と言われれば、横須賀です。
    ジョージ・ワシントンが今、横須賀を母国にしていますけれども、ジョージ・ワシントンに積まれてる原子炉というのは、あまり大きくない原子力発電所の原子炉ほとんど同じぐらいの規模なのです。
    そして日本の国というのは、「原子炉というものは危険なものだから、ちゃんと安全審査をして、安全性を確認しない限りはお墨付きを与えないのだ」と言ってきたのです。でも、そのちゃんとした安全審査そのものがインチキであって、福島第一原子力発電所の事故が事実として起きてしまったわけですけれども、例えば、日本に入ってくる米国ジョージ・ワシントンを含めた原子力空母、あるいは、原子力潜水艦の原子炉というのは、全く何の審査も受けないまま入ってきてしまっているわけです
    それが事故を起こせば、もちろん発電所の事故と同じような被害が出てしまうわけですけれども、日本の政府は米国のものに関しては自由に行き来させてしまうという、そういうことになっているわけです。私は「日本というこの国は米国の属国だ」とずっと言っていますけれども、原子力の世界にいれば、そのことがよく分かります
西 谷 : ちなみにですね、私イラクを取材するのですが、イラクは1981年にオシラク原子炉というのがイスラエルによって空爆されてるわけですね。 
小 出 : そうです。ミサイルで破壊されました。 
西 谷 : つまり原子炉を持つというのは、もうそれ標的になるというのは、もうこれは世界水準ですよね? 
小 出 : もちろんそうです。戦争をやってる当事国としては、相手の原子炉を破壊してしまえば、爆弾で破壊する以上に膨大な被害を与えられるわけですから、戦争になれば何でもあると覚悟しなければいけません
西 谷 : ということはですよ、今回のいわゆる戦争法案でですね、自衛隊が戦争に組み込まれた場合、おそらくこういうことは想像したくないわけですが、ターゲットとしては、原子炉が一番狙われる可能性もあるということでしょうか?
小 出 : 当然です。ですから日本の今回の戦争法案では、同盟国と一緒に戦争に行くと言ってるわけであって、日本というこの国自身が同盟国という、要するに米国なんですけれども、米国の属国として戦争の片棒を担ぐということを宣言するわけです。
    そうなれば、米国と戦う国にとっては日本は敵国になる。当たり前のことなのであって、日本も攻撃を受けるということは、初めから覚悟しなければいけません
    日本というこの国は、先の戦争で負けてしまったがために、これからどうやって世界の平和をつくっていくべきなのかというなかで日本国憲法ができたわけですし、その日本国憲法の前文には、「自分の国の安全というのを軍隊で守るのではなくて、諸外国の公正と信義に信頼して、我が国の安全を守ると決意した」と書いてあるのです。
    ですから、どこか同盟国とか自分の仲間なんていうことをつくって、また別の国を差別して敵国をつくるというようなことはしない、「諸外国の公正と信義に信頼する」と言ってるわけです。そうやって日本が70年間まがりなりにも戦争に行かなかった、戦争で死者を出さなかったという歴史を築いてきたのですけれども、安倍さんはもう今や同盟国と一緒に戦争に行くと、相手という敵国をつくるということを言ってるわけですから、大変危険な状態に今、落ちていっていこうとしているわけです。
西 谷 : ここで、ちょっと川内原発のことについてお聞きしたいのですが、日本の原発、全部止まってましたよね? つい最近まで。そこで、有識者がというか科学者がおっしゃってたのはですね、4年間止めていたわけですから、燃料プールがかなり冷えていると、水冷でやっていたものが。それがだいぶ冷えたので、空冷ね、空気で冷やす、より安全な方法にも持っていけたのではないか。しかしここで、また動かしたので、また燃料プールを冷やさないといけない。つまりこの再稼働をするということによって、さらにまたこの水冷でいかなあかんというね、リスクが高まるのではないかとおっしゃってましたが、これはどういうふうに考えたらよろしいでしょうか? 
小 出 : もちろん、そうですけれども、ちょっと今の西谷さんの説明の仕方、誤解があるかもしれませんので、ちょっと発言させて下さい。
    原子炉というのは、ウランを核分裂させて動かすわけですけれども、核分裂させた直後の燃料の中には膨大な核分裂生成物というのが溜まっていて、猛烈に発熱しています。ただし核分裂生成物の中には短い寿命の放射性物質があって、それは原子炉の運転を止めれば、かなり素早く減っていってくれるのです。
    ですから原子炉を止めて、使用済み燃料プールの中に燃料を移して、何年か経てば発熱量がずいぶん減ってくれて管理がしやすくなる。場合によっては、水冷などしなくて空冷でも冷やせるという状態になるわけです
    実際に、川内原子力発電所も4年間全く動いていなかったわけですから、原子炉を動かして生み出された核分裂先生物のほとんどは寿命を迎えて減ってくれていて、これからなら、まあ空冷でもなんとかなるだろうというところまで来ていたわけですけれども、また原子炉の中で核分裂の連鎖反応を始めてしまいましたので、原子炉の中で新たに核分裂生成物がどんどんまた生み出されてしまうということになっているわけです
    事故にでもなれば、福島第一原子力発電所の事故でそうであったように、原子炉が溶けてまうという危険も抱えてしまったわけですし、仮に原子炉の中で溶けなかったとしても、それを一度、使用済み燃料プールの中に移したとしても、そこでまた発熱を続けてしまう、空冷で管理するということがもうできなくなってしまったという、そういうことです。
西 谷 :  再稼働するということによって、そうなってしまったということですね?
小 出 : そうです。ですから再稼働なんてもともとしてはいけなかったわけですし、やればやるだけ新たな危険というものを私達が抱えてしまうということになりました
西 谷 :  特に、川内原発は断層の近辺に建ってるということや火山があるということやいろいろ言われてますけど、前もおっしゃったように、原発というのは天井が薄いので、例えば大きな火山岩がドンと落ちただけでも潰れちゃいますよね?
小 出 :  天災というのは、私たち全く想像もつかないようなかたちで、ある時に襲ってくるわけです。福島第一原子力発電所の事故だってそうでしたし、川内原子力発電所の原子炉建屋の上に、大きな火山岩が落ちてくるということだって、誰も期待はしないけれども、起こり得ると思っていなければいけないと思います。
西 谷 : わかりました。テロという攻撃に関しても、そういう火山ということに関しても、もう非常に脆弱なつくりであるということですね?
小 出 : そうです。
西 谷 : はい。本当に、再稼働というのを止めなければいけなかった、今からでも遅くないと思いますねえ、もう止めないといけませんね。
小 出 : はい。そう思います。
西 谷 : はい、よくわかりました。小出さん、ありがとうございました。
小 出 : ありがとうございました。