2021年10月18日月曜日

岸田首相に「復興に前向きな姿勢を」 地元から注文

  17日、就任後初めて福島第1原発どを視察した岸田文雄首相に、県内の自民党関係者らからは「もっと復興に前向きな姿勢を示してもらいたい」と注文がつきました。

 福島市の主婦からは「処理水や復興拠点外の除染の問題など課題が多いのに、復興についての発信が弱い」と指摘や、郡山市の自民党員の男性からは「復興へのトーンダウンを感じざるを得ない。震災から10年たつとそんなものなのかな。(福島訪問も)パフォーマンスに映る」との感想が出されました。
 富岡町で暮らす辺見さんは「(互いの意見を)否定も断定もせず、対立することなく対話を重ねていくことが地域を一つにする」と、地元住民と移住者が融和できるまちづくりを求め大熊町職員として町の復興に努める喜浦さんは「町を震災前の姿に近い形に戻すことが移住者にとって安心して生活を送るための糧となる」と、移住者の視点で課題を指摘しました。
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岸田首相が福島第1原発視察 「復興に前向きな姿勢を」地元から注文
                         河北新報 2021年10月18日
 岸田文雄首相が17日、就任後初めて福島県を訪れ、東日本大震災で事故が起きた東京電力福島第1原発(大熊町、双葉町)などを視察した。19日の衆院選公示直前の福島行脚に、復興相と沖縄北方担当相の兼務問題で浮上した「復興軽視」との見方を払拭(ふっしょく)したい思惑ものぞく。県内の自民党関係者らからは「もっと復興に前向きな姿勢を示してもらいたい」と注文がついた。
 首相は17日午前に第1原発を訪問。東電幹部から燃料取り出しの進捗(しんちょく)状況や海洋放出方針が決まった処理水について説明を受け「地元との信頼関係を大事にしっかり作業を進めてほしい」と求めた。
 午後は全住民が避難を続ける双葉町で帰還困難区域に入り、来年の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)を視察。区域外も手付かずの現状を車中から確かめた。富岡町では避難解除後に帰還した住民ら4人と懇談した。
 視察後、首相は記者団に「処理水は先送りできない重要課題だと痛感した。さまざまな懸念払拭に全力で取り組まねばならない」と強調。約1年半後に迫った処理水放出に漁業者らが反対し続けた場合の対応を問われ「先の状況について予断を持って申し上げることは控える」と語った。視察には西銘恒三郎復興相と内堀雅雄知事が同行した。
 衆院選を自民公認で戦う県内の立候補予定者の陣営は「追い風になる」と首相の訪問を歓迎。党県連幹部は「復興相兼務の件で『被災地が忘れられた』と言う人も多いが、岸田さんは話を聞いてくれる人。復興政策をしっかりアピールしてほしい」と望んだ。

「復興軽視」払拭したい思惑のぞく
 復興相の兼務で新内閣の復興への向き合い方が問われた。首相は「福島の復興再生に全力で取り組む」と慌てて発信したが、冷ややかに見る有権者は多い。
 福島市の主婦(80)は「処理水や復興拠点外の除染の問題など課題が多いのに、復興についての発信が弱い」と指摘。郡山市の自民党員の男性(70)は「復興へのトーンダウンを感じざるを得ない。震災から10年たつとそんなものなのかな。(福島訪問も)パフォーマンスに映る」と話した。


被災地の地域再生に意欲 岸田首相、住民と意見交換
                         福島民友 2021年10月18日
 岸田文雄首相は首相就任後初となる17日の本県視察で、双葉、浪江、富岡、大熊4町で復興に奮闘する住民と車座で意見交換した。「国民の声を聞く力」をアピールする岸田氏は、住民の意見を踏まえながら「これからの地域の在り方や可能性、方向性を考える上で大変参考になる」と、被災地の地域再生に意欲を示した。
 意見交換は富岡町の文化交流センターで行われ、冒頭のみ公開された。4町の住民を代表し、双葉町で建築資材店を経営する伊藤拓未さん(31)=双葉町出身、同町にある東日本大震災・原子力災害伝承館で働く横山和佳奈さん(23)=浪江町出身、富岡町のまちづくり会社に勤務する辺見珠美さん(32)=東京都出身、大熊町職員の喜浦遊さん(40)=長崎県出身=の4人が参加した。
 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の一部解除に伴い、昨年8月に古里で建築資材店を開業した伊藤さんは「廃炉事業と隣り合わせの地域。安全面を考慮して帰還できる体制づくりを」と要望した。東日本大震災当時、津波で祖父母を亡くした横山さんは「教訓を忘れずに伝えていくことが人の命を守ることにつながる」と、震災の記憶を風化させない取り組みの重要性を訴えた。
 2012年に川内村に移住し、現在は富岡町で暮らす辺見さんは「(互いの意見を)否定も断定もせず、対立することなく対話を重ねていくことが地域を一つにする」と、地元住民と移住者が融和できるまちづくりを求めた。新聞社勤務を経て大熊町職員として町の復興に努める喜浦さんは「町を震災前の姿に近い形に戻すことが移住者にとって安心して生活を送るための糧となる」と、移住者の視点で課題を指摘した。
 意見交換会後、伊藤さんは「岸田首相は住民一人一人の顔を見て意見を聞いてくれた。思いは伝わった」と振り返った。