2016年11月26日土曜日

原発避難いじめ 両親・代理人の会見内容を産経新聞が詳報

 福島原発事故で福島県から横浜市に自主避難した横浜市立中1年の男子生徒が小2の時からいじめを受け、小5のときに同級生から計150万円をゆすり取られ不登校となり、現在はフリースクールに通っている問題に関連して、NHKは24日、「学校側は、確認された金額は8万円で本人が率先して渡していたとして、いじめにはあたらないと判断していた」旨を報じました。
 NHKは市教委という公式機関のリーク?なのでそのまま報じたというでしょうが、これではまるで被害者本人の書いたノートの記事がデタラメで、その被害を訴えた両親の主張も虚偽であると言わんばかりです。この報道姿勢は大変に問題です。
 
 これに対して産経新聞は25日の紙面に、この15日に被害者の両親と代理人(黒沢知弘弁護士ら)が記者会見をした内容をしく載せました。
 
 それによると、生徒のノートには
 恐喝に関しては、「(加害生徒の)3人から…お金をもってこいと言われた」「○○○(加害生徒名)からは メールでも 言われた」「人目が きにならないとこで もってこいと 言われた」などときわめて具体的に書かれていて、
 いじめについても、「○○○(加害生徒名) ○○(加害生徒名) には いつも けられたり、なぐられたり ランドセルふりま(わ)される、かいだんではおされたりして いつもどこでおわるか わかんなかったので こわかった」などと具体的に記述してあり、
 学校側の対応に関しても、「いままで いろんな はなしを してきたけど (学校は)しんようしてくれなかった」「なんかいも せんせいに 言(お)うとすると むしされてた」などと書かれてありました。
 
 こうした内容を虚偽としてすべて無視した学校や市教委の対応はどう考えても不自然です。そのうえ問題が発覚した後も、市教委は極力事実関係を伏せる一方で、逆に学校の対応が正しかったかのようなリークを行ったわけで、身勝手というしかありません。
 
 産経新聞の『義憤の報道』に拍手を送ります。
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「ばいしょう金あるだろ」「せんせいにむしされてた」
涙で手記を代読した弁護士が伝えたかったこと
産経新聞 2016年11月25日
 東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した横浜市立中1年の男子生徒がいじめを受けていたのに、学校や市教育委員会が適切に対応していなかった問題。小2で横浜市に家族と移った後、すぐにいじめが始まり、その後、不登校、復学、さらにいじめ、と続き、男子生徒が心安らかに学校に通える貴重な時間が失われた。両親は、学校や市教委に何度も掛け合ったが、なかなか動かず、問題を根深いものにしてしまった。15日に開かれた代理人の黒沢知弘弁護士の記者会見を詳報する。
 
代理人の黒沢弁護士が涙ながらに生徒の手記を代読
 男子生徒は、長年いじめを受けてきたことをふまえ、手記を書いた。
 男子生徒の代理人が本人に代わり、平成27年7月にB5ノート3ページのうち最後の1ページに、いじめに対する思いをつづった手記をゆっくりと読み上げた。
 代理人は、男子生徒の成長を阻害しないという配慮のもと、一部を抜粋して紹介した。
 「(加害生徒の)3人から…お金をもってこいと言われた」
 「○○○(加害生徒名)からは メールでも 言われた」
 「人目が きにならないとこで もってこいと 言われた」
 「お金 もってこいと言われたとき すごい いらいらと くやしさが あったけど ていこうすると またいじめがはじまるとおもって なにもできずに ただこわくてしょうがなかった」
 「ばいしょう金あるだろ と言われ むかつくし、ていこうできなかったのも くやしい」
 「○○○(加害生徒名) ○○(加害生徒名) には いつも けられたり、なぐられたり ランドセルふりま(わ)される、 かいだんではおされたりして いつもどこでおわるか わかんなかったので こわかった。」
 「ばいきんあつかいされて、 ほうしゃのうだとおもって いつもつらかった。 福島の人は いじめられるとおもった。 なにも ていこうできなかった」
 「いままで いろんな はなしを してきたけど (学校は)しんようしてくれなかった」
 「なんかいも せんせいに 言(お)うとすると むしされてた
 ゆっくり、かみしめるように手記を読み進めていったが、後段、代理人は時折、涙をぬぐいながら読みきった。
 代理人は、手記を公表してよいかを本人にも丁寧に確認したところ、むしろ、表に出してほしいという意思を確認し、公表に踏み切ったと説明した。
 少年は、今後、同じような思いをする人が出ないよう、昨夏の自身の思いを手記にし、あえて公表した。
 
両親の根深い不信感
 男子生徒の両親の学校と市教委への不信感も根深いものがある。
 両親は、何度も学校や市教委にいじめの対応を依頼したが、有効な手立てはとられなかった。「普通に学校に通わせたかっただけなのに。時間を返してほしい」と気持ちをコメント。代理人も「率直にいって、学校教育や教育委員会の意味を本質的に忘れているのではないか」と断罪した。
 同席した別の弁護士も「重大事態は、疑いの時点で調査を開始すべき。長期の不登校だけでも重大事態。これを調査しなかった。自ら調査すべきで、調査があることを市も知らせるべき。すべては、遅きに失した」と指摘した。
 
 また、男子生徒が金品を要求され、計約150万円を自宅から持ち出していた件にも言及した。
 加害生徒が「賠償金がたくさんもらっているから金を出せ」という言いがかりで、男子生徒に複数回にわたり数万円、計約150万円を持ってこさせ、ゲームセンターだけでなく、みなとみらいの娯楽施設などで派手に使っていたという。
 ここで原発避難者に対する大きな誤解があったことが浮び上がる。代理人は、男子生徒が持ち出した150万円に、賠償金は一切含まれていない、という事実を説明した。そもそも、自主避難の場合、賠償金は少額で、一般的には、年額4万円程度という。両親は、純粋に生活資金としてとっておいた貴重なお金にも関わらず、「多額の賠償金を手にしている」という加害生徒らの勝手なシナリオから、悲しい結果を生み出した。このことに関しても代理人は「福島に対して理解が足りない」と言い切った。
 
 第三者委員会がまとめた報告書も、市教委は非公表の方針を決して変えなかった。この点も、男子生徒や保護者の考えと大きなズレがあることがわかった。
 代理人は、「親御さんは何らかのプレスリリースがあると期待されていた。ただ、実際に報告されず驚いたと。再発防止のため、どのようないじめがあり、教育委員会にどのような問題があったか公表されるべきではないかと話していた」と説明した。市教委が会見で、いじめの経緯や個人情報を公開しないことを保護者も納得されている、と説明したことについては、「まったくない。加害児童のプライバシーまで公開する必要はないが、何らかの公開を望んでいらした」と説明した。
 
加害児童はいま
 一方、加害児童はどうか。
 現時点で、いじめにメインで関わった当事者らからの聞き取り調査は行われておらず、気持ちもわからないという。特に、いじめの首謀的な役割を果たした生徒らからは、謝罪もない、という。ただ、金品の要求に関わった生徒は十数人いたが、そのうち一部の生徒らからは、返金や謝罪の対応があったという。もっとも、返金額は数万円に過ぎないという。
 男子生徒の保護者は、告訴などというよりも、「報告書の答申がようやく出た状況で、当面は今以上に何をするというより、落ち着きたい」と話してるという。