2016年11月23日水曜日

福島原発の現場作業で白血病を発症 男性が東電を提訴

 福島原発事故の収束作業に従事した際、東電の被曝対策が不十分だったため白血病を発症したなどとして、北九州市の元原発作業員の男性(42)が22日、東電などに約5900万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。
 男性は1210月~1312月、原発事故の収束作業などに従事し、少なくとも約20ミリシーベルトの放射線を浴び141月に急性骨髄性白血病と診断され、その後、鬱病も発症しました
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元原発作業員 白血病「被ばく原因」 東電を提訴
毎日新聞 2016年11月22日
 東京電力福島第1原発事故後の廃炉作業などに従事し、白血病にかかって労災認定を受けた北九州市の元原発作業員の男性(42)が22日、東電と九州電力に約5900万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。「白血病の原因は放射線被ばく労働の可能性が高い」として、原子力損害賠償法に基づき慰謝料などを求めている。震災後、放射線被ばくによる労災が認定された原発作業員による提訴は初めて。 
 
 訴状によると、男性は2011年10月~12年3月、福島第2原発と九電玄海原発(佐賀県)で建設会社の溶接工として勤務。12年10月からは福島第1原発4号機の原子炉建屋で、使用済み核燃料を取り出すための足場の設置工事に約半年間従事した。同原発構内では13年12月まで働き、被ばく線量は15.68ミリシーベルト、他原発も含めて計19.78ミリシーベルトに上った。 
 男性は14年1月に急性骨髄性白血病と診断され、労災を申請。厚生労働省の検討会は、被ばくから1年以上たって発症した▽年間被ばく線量が5ミリシーベルト以上--などの白血病の労災認定基準を満たしているとして「放射線業務に起因したと判断するのが妥当」と判断し、労働基準監督署が15年10月に労災認定した。男性は白血病の症状は落ち着いているが、働けない状態という。 
 原賠法は、原子力損害の賠償責任は無過失で原子力事業者が負うと規定。原発事故後、被災者や企業が訴えた裁判で賠償が認められたことがあるが、元原発作業員の裁判例はないとみられる。東電は「適切に対処する」、九電は「内容を検討し適切に対応していく」とコメントした。【伊藤直孝】 
 
「捨て駒じゃない」 
 「自分らは捨て駒じゃない」。元作業員の男性は提訴後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、東京電力への不信感をあらわにした。白血病が労災認定されたことを報じた昨年10月の新聞記事で、東電が「協力企業の作業員でコメントできる立場にない」との談話を出したことに、「何ひとつ謝ってくれない。ショックと怒りがこみ上げた」と言う。 
 男性は事故から7カ月後、「福島のために」と原発で働くことを決意。家族の反対を押し切って、2次下請けの従業員として溶接工を務めた。放射線から身を守る鉛ベストの数が足りず、着用せずに作業したこともあったという。約3年前、風邪のような症状が出て、受診すると白血病と診断された。死の恐怖からうつ病になったが、「息子がランドセルを背負う姿が見たい」とつらい抗がん剤治療に耐えた。
 
 会見で、代理人の海渡雄一弁護士は「東電の責任を明らかにすることで制度改革につなげたい」と提訴の意義を語った。男性は「今も高線量の中で働く作業員が福島にいる。今後がんを発症する人にとっての励みになれば」と訴えた。 
 原発事故後に福島第1原発で働いた作業員は今年3月末までに4万6974人いるが東電社員以外の作業員が約9割を占め、廃炉作業を支えている。厚生労働省によると、がんを発症したとして労災申請したのは11人。男性を含む2人が認められ、5人が審査中という。【関谷俊介】