2016年11月4日金曜日

福島原発事故賠償も新電力に負担を要求 経産省

 経産省は一時は福島原発の賠償費用は新電力には負担させないという意向を示していましたが、6兆円を上回る規模に膨らんでいる賠償費用について、2日の経産省の委員会において、電力の自由化で新たに参入した事業者にも負担を求めるかどうか、今後検討するように求めました
 その理由は、原子力事故の補償のための資金は「事故以前から確保されるべきだった」が、「電気料金に算入することができなかった」ため、「安い電気を利用した需要家に遡って負担を求めるのが適当」などとし、「自由化の下で、受益者間の公平性をどのように考えるか」という表現で、新電力に移った利用者にも賠償関連の費用を負担させたいということのようです。
 いずれにせよ国民が負担することでは違いはないのですが、ここでは新電力のコストメリットを削減しておこうというわけです。
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福島原発事故賠償で新電力にも負担要求、経産省検討
ロイター通信  2016年 11月 2日
[東京 2日 ロイター] - 経済産業省は2日、東京電力福島第1原発事故被害者への賠償金の支払いを支援する現行制度について、東電を含む原子力事業者以外にも対象を広げて負担を求める方針を打ち出した。
原発を持たない新規参入の電力事業者(新電力)の利用者にも負担させる方向で議論を進める構えだ。電力自由化や原発事故の課題を議論する有識者会議で方針を提示した。
 
<補償制度、過去に遡って消費者負担求める>
福島事故によって、それ以前の国の制度では大規模な原子力災害が発生した場合、被害者補償にまったく対応できない実態が露呈した。
経産省がこの日、有識者会議に提出した資料は、原子力事故の補償のための資金は、「事故以前から確保されるべきだった」が、「措置が講じられず電気料金に算入することができなかった」ため、「安い電気を利用した需要家に遡って負担を求めるのが適当」などと記載。
「自由化の下で、受益者間の公平性をどのように考えるか」という表現で、新電力に移った利用者にも賠償関連の費用を負担させる意向をにじませた。
電力小売り市場では、今年4月から一般家庭まで自由化対象を拡大。原発を持たない新電力を消費者が選択できるようになったが、経産省の方針が制度化された場合、大手電力から「離脱」した消費者にも原子力に絡む費用負担が続くことになる。
会議に参加した委員からは、事故以前に確保すべきだった金額について「どう考えて算出するのかわからないと、議論のスタートラインに立てない」との指摘が聞かれた。
 
 
福島原発事故賠償、新電力も負担案 電気代に上乗せか 経産省方針
東京新聞 2016年11月3日
 経済産業省は二日、東京電力福島第一原発の事故被災者への賠償費を工面するため、自由化で新規参入した電力会社(新電力)も含めた幅広い電力利用者に「過去に原発の電気を利用した分」として追加負担を求める方向で検討に入った。同日の有識者会合「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の作業部会で方針を示した。上限の見えない負担を過去にさかのぼって全国の電力利用者に費用請求する方針には「分かりにくい」として委員から異論が噴出した。
 
 原発事故の賠償費用は、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に東電など原発を持つ大手電力会社が「一般負担金」などを納めて用意する仕組み。同機構は福島第一原発事故後の二〇一一年八月につくられ、同事故の被災者への賠償金もここから出している。
 一般負担金は電気料金を通じ消費者が負担。一方、新電力など原発を持たない会社は負担義務がなく、電気料金にも含まれない。
 経産省は「本来は電力会社が原発事業を始めた(一九六〇年代)時から、事故に備えて一般負担金を積み立てておくべきだった」と説明。大手から新電力に移行した消費者も含め負担金を請求する考えだ。
 作業部会では委員の識者らから「大手電力会社の負担金を見直すのが先決」「大きな国民負担の話なので、国会で議論するべきだ」などと異論があがった。
 
 福島第一原発の廃炉費用は東電の利益から出させる方針。だが、同省は東電が自社の利用者や新電力に課す、電線利用料「託送料金」を高止まりさせることで捻出する構想を示した。東電管内の関東の国民にとっては新電力を含め電気料金が下がりにくくなる。消費者の負担増になることは避けられない。(吉田通夫)