2016年11月20日日曜日

20- 浜松駅前で金曜アクション

原発 浜松駅前で毎金曜訴え200
中日新聞  2016年11月18日
◆虎ひげさん 「負の思い」歌い続ける
 JR浜松駅北口で毎週金曜日に市民が脱原発を訴える「さよなら原発の夕べ」が十八日、二百回を迎える。脱原発ソングを歌う呼び掛け人のギタリスト「虎ひげ」こと太田明伸さん(53)=浜松市南区=は、「原発は故郷を奪う。それを知った以上、表現しないわけにはいかない」と、原発がなくなるその日まで歌い続ける思いだ。
 
 ♪優しい同情の涙も五年は一昔、えぐられた胸を隠して生きてゆく-。夕暮れの浜松駅に響く歌声。足を止める人は少ないが、その存在感は無視できない。
 
 高校時代に「セックスピストルズ」や「ザ・クラッシュ」などのパンクロックに憧れてギターを始め、就職してからも今まで、趣味で続けてきた。
 原発に興味を持ち始めたのは福島第一原発事故後の二〇一一年八月。放射性物質による汚染への懸念から被災地の松を使った京都市の「五山の送り火」が中止された騒動に、「被災者は傷ついているのに失礼だ」と頭にきた。だが、勉強をしてみると、放射線が危険で、どれだけ子どもを持つ親に不安を与えているかが分かった。
 その後は地域の脱原発の勉強会に参加。福島県の被災者たちに話を聴くたび、原発政策の理不尽さや、世間の無関心さへの怒りが頭の中で音楽になった。これまでに十数曲、作詞作曲した。
 
 脱原発ソングを路上ライブで初めて披露したのは一二年の春ごろ。当初は単独ライブを続けていたが、一三年一月ごろ、ふと、「仲間が多い方が訴えが届きやすいのでは」と思った。会員制交流サイト(SNS)で呼びかけると、主婦や教師、会社員などが反応し、金曜アクションとして行動を取ることになった
 声を張り上げても、行き交う人の反応は薄く、視線も冷たい。脱原発ソングに熱中することに、趣向が合わないバンドの仲間とは疎遠になり、関西の電力会社で働く親戚とも気まずくなった。失ったものも大きい。
 だが、黒人奴隷が起源とされるブルースや、階級格差のある社会への反発を表現したパンクロックなど、音楽は人の悲しみや、苦しみを表現してきた。「今こそ、原発に対する負の思いを音楽で表現しなくてはいけない」と、音楽に対する独自の姿勢を貫く。
 
 浜松は原発から半径三十キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)からは外れる。とはいえ、事故が起きれば影響を受けかねないのに、街は危機意識が低いように感じる。だからこそ「僕たちは看板と同じ。原発に反対する市民の存在が忘れられないためにも、声を上げ続けなければいけない」と思う。
 第二百回のさよなら原発の夕べは十八日午後六時半から、浜松駅北口の駅前広場で開催される。(小沢慧一)