政府 もんじゅ廃炉方針を正式決定
NHK NEWS WEB 2016年12月21日
政府は原子力関係閣僚会議を開き、安全管理上の問題が相次いだ高速増殖炉もんじゅについて、時間的、経済的コストが増大しているとして、原子炉として運転を再開せず、およそ30年かけて、廃炉にする方針を正式に決めました。
政府は総理大臣官邸で、菅官房長官、松野文部科学大臣、世耕経済産業大臣ら関係閣僚が出席して原子力関係閣僚会議を開き、福井県の高速増殖炉もんじゅの取り扱いに関する方針を正式に決めました。
それによりますと、もんじゅの運転を再開するまでには最低8年の準備期間が必要で、運転を続けると5400億円以上の費用がかかる見通しであると指摘しています。
そのうえで、もんじゅは時間的、経済的コストが増大しているとして、原子炉として運転を再開せず、およそ30年かけて施設の解体などを行い、廃炉にするとしています。
そして、廃炉作業については、政府が一体となって指導・監督するなど設置者である日本原子力研究開発機構が安全性を確保し着実に進められる新たな体制を構築するとしています。
一方で、将来的には、もんじゅの敷地内に新たな試験研究炉を設置するなどもんじゅを含む周辺地域を高速炉の研究開発の中核拠点の1つと位置づけるとしています。
また会議では、今後の高速炉の開発方針について、フランスと協力して設計する実証炉や、高速実験炉「常陽」など国内外の施設などを通じて、研究開発を進めることも確認しました。
官房長官「政府一丸となって取り組みを」
(省 略)
事業者の機構は陳謝
事業者の日本原子力研究開発機構が都内で会見を開き、児玉敏雄理事長は陳謝した上で「率直に言って、大変残念に思う。国の決定なので、それに従って、廃止措置を行っていく」と述べました。地元・福井県の西川知事が、原子力機構がもんじゅの廃炉作業を行うことを容認できないと主張していることについて、「原子力規制委員会の指摘を踏まえてもんじゅの保守管理の技術は上がっていると思う。第三者から意見を聞きながら、廃炉作業を実施していく」と述べました。
西川知事は、21日午前開かれた政府との会合の場で、去年11月の規制委員会の勧告で、「原子力機構は、原子炉を起動していない段階ですら、安全管理を適正かつ確実に行う能力を有しない」と指摘されたことを引用し、「十分な対応ができない組織と理解しており、こうした組織が今後、廃止措置に向けた準備作業を行うことは、地元としては極めて不安を感じる」と述べていました。
もんじゅが立地する敦賀市の渕上隆信市長は、もんじゅの廃炉が正式に決まったことについて、「納得はしていない。地元の意見を聞きながら調整するとあったが、きょうの決定のどこに敦賀市の意見があったのか、見つけられない」と述べました。そのうえで、「廃炉さえ受け入れられないのに新たな研究炉と言われても、説明が尽くされていないので分からない」と述べ、政府の方針に不満を示しました。
これまでの経緯
もんじゅを廃炉にする一方、高速炉開発は継続するという今回の決定のきっかけになったのが、去年11月、原子力規制委員会が文部科学大臣に出した異例の勧告でした。
高速増殖炉もんじゅは、使った以上の燃料を生み出す夢の原子炉として平成6年に試験運転が始まりました。しかし、その翌年、ナトリウム漏れ事故が発生し、その後もトラブルが相次いで、長期間、停止した状態が続き、これまでにおよそ1兆円が投じられましたが、この22年間の運転実績は250日にとどまっています。
平成24年からの国の検査ではおよそ1万件にのぼる機器の点検漏れが明らかになり、その後も機器の安全上の重要度を決める分類の誤りも多数見つかるなど安全管理上の問題が相次いだため、去年11月、原子力規制委員会は、いまの日本原子力研究開発機構はもんじゅの運転を安全に行う資質がないなどとして、新たな運営主体を示すか、それが出来ない場合は、廃炉も含め事業を抜本的に見直すよう求める異例の勧告を文部科学大臣に出しました。
勧告を受けて文部科学省は、外部の専門家で作る検討会で問題点の検証や新たな運営主体に必要な要件を議論し、原子力機構からもんじゅの運転部門を切り離して電力会社やメーカーの協力を得て新たな法人を設立する案を軸に経済産業省など関係省庁と協議しました。しかし、もんじゅを存続させた場合、5400億円以上の追加の費用が必要になることや原発の再稼働に向けた審査などの対応で余裕がない電力会社やメーカーから協力が得られない可能性が高いことなどから政府内ではもんじゅの存続は難しいという声が強まりました。
そしてことし9月の原子力関係閣僚会議では、もんじゅを廃炉も含め抜本的に見直すとともに、核燃料サイクル政策は維持したうえで、今後の高速炉開発の方針を策定すると表明していました。その後、政府は、もんじゅの次の段階にあたる「実証炉」の開発方針を検討する高速炉開発会議を発足させ、フランスが計画している実証炉の「ASTRID」への開発協力や国内の高速実験炉「常陽」などを活用し平成30年をめどに開発の具体的な工程表を策定することを決めました。来年から策定が始まる工程表の議論では実証炉の規模や構造などを検討することにしていますが、具体的な実施主体や建設場所をどうするのかといった難しい問題が残されています。
もんじゅ解体は国内初 さまざまな課題が
政府は、高速増殖炉「もんじゅ」について、およそ30年かけて解体を行い、廃炉にすると決定しましたが、解体コストは少なくとも3750億円に上るほか、もんじゅのようにナトリウムを扱う原子炉を解体するのは国内では初めてで、技術的にもさまざまな課題があります。
文部科学省によりますと、もんじゅの廃炉は、まず核燃料の取り出しに5年半がかかり、これを含めて30年かけて施設を解体するとしています。試算では、費用は少なくとも3750億円に上り、このうち施設の解体などにかかる費用は1350億円で、設備の維持管理費が2250億円、核燃料の取り出しなどに150億円かかるほか、使用済み燃料プールの耐震強化など新たな規制基準に対応するのための費用がさらにかかるとしています。
また、日本原子力研究開発機構が平成24年に行った試算によりますと、もんじゅの解体に伴って発生する放射性廃棄物の量は4万トン近くに上ると見られています。このうち1500トン余りについては、深い地層やコンクリート製の容器での処分が求められる放射性物質の濃度が比較的高い廃棄物だということで、現段階では、具体的な処分場などは決まっていません。また、ナトリウムを扱う原子炉の解体は国内では初めてで、機器や配管から付着したナトリウムをどう安全に取り除くのか、技術開発も必要になるということです。原子力機構によりますと、もんじゅの場合、運転期間が250日と短かったことで、運転に伴って発生する半減期が2年半ほどの放射性ナトリウムの発生量は比較的少ないとのことですが、処分方法などについては決まっていないということです。
一方で、フランスやアメリカ、イギリスではこうしたナトリウムを扱う原子炉の解体はすでに始まっています。このうちフランスにある高速増殖炉「フェニックス」では、2009年に運転が停止して以降、解体作業が行われていて、ことし10月までに300体ある原子炉の核燃料のうち、30体を取り除いたということです。原子炉に入っているナトリウムについては、すべての燃料を取り除いたあとに回収し、放射性物質を取り除くことにしていて、その後、塩酸で中性化し、塩水として川に放出するとしています。原子力機構は、こうした海外の経験も参考にしながら、もんじゅの解体を進めていくとしています。
もんじゅ」技術的に廃炉のめどは全く立っていない
テレビ朝日 2016年12月8日
福井県の高速増殖炉「もんじゅ」について、政府は今月中に廃炉を正式決定しますが、その一方で、技術的にもんじゅを廃炉にするめどは全く立っていないことが分かりました。
もんじゅは普通の原発とは異なり、冷却に水ではなく、ナトリウムを使っています。原子力機構などによりますと、原子炉を直接、冷やすナトリウムは放射線量が高いことなどから、取り除くめどは全く立っていないということです。また、廃炉の前提になる燃料の取り出しも最短で6年かかるとしています。政府は廃炉に向けた研究拠点を福井県内に作るとしていますが、廃炉にする方策がないため、研究せざるを得ない実態が浮かび上がります。一方、廃炉には巨額の税金が投入される見込みですが、政府は費用の見積もりを公表していません。