経産省は、福島原発の処理費用の不足分2・4兆円を、取りはぐれた「過去分」という口実をつけて40年にわたって国民の電気料金に上乗せして回収します。
これを批判する記事はこれまで何度も紹介してきましたが、東京新聞が新たに「あり得ぬ理屈に反発 電気料金『過去分』とは 」と題して、分かりやすい例をあげてその非を明らかにしました。
曰く 「会社が傾くたびに ”過去の費用を反映していなかった” と請求できるようになったら、どんな企業も生き残れる。企業会計の原則では、過去にさかのぼって費用を変えたり不足分を後から請求することはできないことになっている」
です。
以下に紹介します。
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あり得ぬ理屈に反発 電気料金「過去分」とは
東京新聞 2016年12月15日
経済産業省は、不足する福島第一原発の処理費用を捻出するために、その費用を国民の電気料金に上乗せする。
「賠償費用は過去の電気料金に上乗せしておくべきだった」という理屈をつけて、「過去分」と称した費用を「これから請求する」という。
通常の企業活動や買い物ではあり得ないやり方に批判は絶えない。経産省の理屈をあらためてまとめた。 (吉田通夫)
Q 費用の上乗せを経産省はどう説明しているの。
A 原発事故の賠償のための費用はもっと前から「電気料金に積み立てておくべきだった」と言うのです。この費用を「過去分」と名付けています。
積み立ての起算点は、日本で原発の営業運転が始まった一九六六年。いま大手電力会社の契約者が支払っている年間千六百億円の負担金を基に過去の負担を二・四兆円と計算し、二〇二〇年から四十年にわたり新電力の契約者も含めて幅広く請求するつもりです。
Q 後になって請求するなんてあり得ないのでは。
A その通りです。例えば、つぶれそうになった食堂が「あなたが過去にうちで食べた定食の価格に使った調味料の費用を反映していなかったので、請求します」と言うようなものです。
会社が傾くたびに「過去の費用を反映していなかった」と請求できるようになったら、いいかげんな経営で巨額の負債を抱えた企業でも、生き残れてしまいます。だから、企業会計の原則では、過去にさかのぼって費用を変えたり不足分を後から請求することはできないことになっています。
Q なぜ、ひどいやり方が電気料金ではできてしまうの。
A 経産省は「原発事業は超長期なので、必要な費用をあらかじめ見込むのが難しい」などと釈明しています。実は、〇五年から使用済み核燃料の処理に足りない費用を「取りはぐれた分」として、私たちの電気料金に上乗せしています。
今回の「過去分」も政府が制度変更を、数人の有識者や財界人を集めた審議会で決めようとしています。自民党への根回しもほぼ終えて、このまま押し通すつもりです。