2016年12月26日月曜日

26- 原子力ムラは「もんじゅ」を止めるどころか「第2もんじゅ」を目指している

 これまで全く役に立たずの無駄飯食い=金食い虫だった「もんじゅ」がようやく廃炉に決まった・・・国民はそう受け止めています。しかし「もんじゅ」の今後の処置を決めるメンバーは「もんじゅの利権」の中枢にいる5人であり、彼らは「もんじゅはまだ廃炉が決まったわけではない」と言います。
 そういわれて報道をよく読むと廃炉が決定したという書き方にはなっていません。彼らの言うのが正しいというよりも、そういう言い回しで当面の風当たりを避けたという訳でした。
 
 そのメンバーは、「あと8年かけてもんじゅを再稼働させ、その後8年間運転する。その間の経費は年間200億円で合計3200億円+固定資産税などで、最終的に5400億円プラスアルファになる」、と極めて当然の顔をして計画を練っているということです。
 それに加えて「第2もんじゅ」の計画も新たに作られて、ものになるかどうかわからないものに実に合計4兆円の出費を計画することになります。
 
 民間企業であれば年間1億円はおろか1000万円の純利益を上げるために必死で働いているというのが実情です。それを平然と、年間200億円の経費を8年間使い続けてようやく再稼働にこぎつける・・・などと、あとは書くのもばからしい話です。世の中にこれほど旨い話はありません。原子力ムラが、たとえ国を亡ぼす恐れがあっても原発やもんじゅから手は引かない、と考えているのはむしろ当然のことです。
 
 現代ビジネスの記事を紹介します。
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国民負担、総額4兆円!「第2もんじゅ」のずさんな計画書スッパ抜く
税金をドブに捨てる21世紀の大バカ公共事業 
現代ビジネス 2016年12月19日
「週刊現代」2016年12月24日号より
息を吹き返した「ムラの有力者」たちが、また集まって悪だくみしている。廃炉は何とか避けたい。もしダメなら、「2号機」を作ってやる―さんざん血税をムダにしておきながら、まったく懲りていない。
 
「ムラの5人衆」が集結
「(もんじゅは)まだ廃炉が決まったわけではないですよね。将来を考えたら続けるべきだと思いますよ。批判はありますけど、エネルギー資源の乏しい日本にとっては、将来的に絶対に役に立つはずですから」
自宅前での本誌記者の問いかけにこう答えたのは、児玉敏雄・日本原子力研究開発機構理事長。高速増殖炉「もんじゅ」の運営方針を、たった5人で決める政府の「高速炉開発会議」メンバーで、三菱重工副社長まで務めた人物である。原子力ムラの「ドン」のひとりだ。
 
実用化のめどが立たない「もんじゅ」のような高速増殖炉の開発は、米国や英国では断念されている。それなのに彼らは、まだ巨額の税金をつぎ込むつもりなのだ。児玉氏は事もなげにこう続けた。
「これだけデカいプロジェクトですから。そりゃ(実用化の)可能性はありますよ。時間とお金の問題。『もんじゅ』再稼働にはあと8年かかる。さらにその後8年間、(本格的に)稼働させる。毎年200億円はかかります
「年間200億円の税金など安いもの」とでも言いたげである。
「もんじゅ」は、純白の外壁に似合わぬ「税金のブラックホール」だ。これまでに費やされた血税は、総額1兆2000億円。国民の猛批判に屈し、ついに今年9月、「廃炉の方針が政府内で決定した」と報じられたはずだった。
 
にもかかわらず、10月から3回にわたり行われた先述の「高速炉開発会議」では、延命策を書き連ねた「計画書」が、所管官庁の文部科学省によって示された。そしていつの間にか、「もんじゅの延命」「次世代の高速増殖炉=第2もんじゅの開発」という方針が既定路線とされたのだ。「廃炉決定」の報道は何だったのか。
本誌が入手した、「高速炉開発会議」と「計画書」のずさんすぎる内容を見てゆこう。
 
世耕弘成経済産業大臣が主宰する「高速炉開発会議」は、松野博一文部科学大臣、原研理事長の児玉氏、電気事業連合会(電事連)会長で中部電力社長の勝野哲氏、三菱重工現社長の宮永俊一氏の計5人からなる。原子力ムラを代表する、錚々たるメンツが集う場だが、その選定基準は不透明だ。
「『もんじゅ』は本来経産省ではなく文科省の案件ですが、原子力規制委員会から文科省が『ダメ出し』されたこともあって、世耕さんはかなりやる気になっている。今回の会議のメンバーもトップダウンで決めています」(経産省関係者)
 
第1回会議では、その「ドン」たちが次々にこんな前口上を述べた。
〈(「もんじゅ」は)投資に見合う価値があると考えております。もんじゅ研究計画に示された残されたミッションを遂行することは我々の使命〉(児玉氏)
〈(高速増殖炉は)重要な国家基幹技術であり、国際競争も激しくなる中で、我が国として必ず保持し続けるべき大事な基幹技術体系だと思っております〉(宮永氏)
いきなり「もんじゅは大事」「絶対に潰すわけにはいかない」という礼賛から始まるのだから、開いた口がふさがらない。
利権がありすぎて潰せない
さっそく議題は「もんじゅ」を維持した場合の莫大なコストの予測へ移る。司会の世耕氏に促され、文科省研究開発局長が言う。
〈大きなコストといたしましては、まず最初の運転保守・維持管理のための経費がございます。これは、今現在、毎年約200億円程度かかっておりますが、再開までの期間と運転期間合わせた16年で約3200億が必要〉
〈工事費につきましては、現在1300億円を見込んでおります。(中略)人件費及び「もんじゅ」の固定資産税等がかかりますので(中略)運転終了までの16年間で5400億円プラスアルファの費用がかかる〉
 
このとき配られた文科省の資料には、さも当然のように「『もんじゅ』は平成36年(2024年)までに運転を再開、その後平成44年(2032年)まで出力100%で運転を続ける」と、年表形式で記されている。
「原子力ムラのドン」たちは、このメチャクチャな計画にも違和感を抱かなかったかもしれない。しかし国民からすれば、「ちょっと待った」と言いたくなる。原研の元上席研究主幹で、「もんじゅ」での勤務経験もある技術者の田辺文也氏が言う。
 
『もんじゅ』は30年以上の歴史をもつ巨大プロジェクトです。三菱重工などの基幹企業、地元業者など多くの権益が複雑に絡み合って、簡単には変えられない。国民の生命や財産を左右するプロジェクトなのに、そもそも『見直す』という選択肢がないし、国民の声を聞く気もないのです」
建造から30年あまりの間に、「もんじゅ」はたった883時間―つまり1ヵ月ほどしか発電していない究極の「ムダ飯食い」である。高速増殖炉の開発を続ければ、巨額の赤字が今後も膨らんでゆくのは確実だ。
今回の「高速炉開発会議」でも、文科省の担当者は今後の売り上げ見込みについて〈売電収入は約270億円〉とさりげなく触れている。5400億円以上かけて、たったの270億円しか儲からないというのだ。しかし、誰一人「おかしい」と声を上げる者はいなかった
 
人が死んでも無反省
この後、議論は「もんじゅ」の後継となる原子炉、名前もまだ決まっていない「第2もんじゅ」とも言うべき巨大事業の話題へ進んでゆく。
11月30日に開かれた第3回会議の「検討課題」には、〈今後の実証炉開発を進めるに当たって〉とある。「もんじゅ」は、まだ実用化前の「原型炉」。その次の段階、つまり実際の発電に使える「実証炉」を作る―これが、いつの間にか既定路線とされているのだ。
この時、意気揚々とプレゼンしたのは、「もんじゅ」建造の際にも中心となった三菱重工である。同社の担当者が使った資料にはこうある。
 
〈「もんじゅ」の炉心設計や安全評価等のエンジニアリングや、主要機器の設計、製作、現地工事、保守などを分担させていただき、その各段階における高速炉開発最先端設計技術や人材を蓄積させていただいて参りました〉
〈蓄積された高速炉開発技術を有効に活用し中核メーカとして高速炉の開発に取組んで参りたいと考えております〉
延べ1ヵ月しか稼働せず、たびたび冷却材のナトリウム漏れ事故を起こし、東日本大震災直前の'10年には3・3トンの中継装置が炉内に落下、担当課長が自殺を遂げた―
そんな「もんじゅ」の過去を省みないだけでなく、あろうことか「第2もんじゅ」の開発に突き進む。信じられないことに、これが国民の目の届かぬ密室で、たった5人の会議で決まったのである。
これまで「もんじゅ」にかかった1兆円超のコストに、最終的な廃炉費用は含まれない。一説にはおよそ4000億円かかると言われるが、これから作るという実証炉が「もんじゅ」同様役立たずなら、同額以上のコストがかかるのは必至。ムダ遣いされる税金は、総額4兆円は下らない
 
超党派議員連盟「原発ゼロの会」メンバーの、自民党衆院議員・秋本真利氏が言う。
「以前、経産省の役人が予算の説明に来た際、稼働するめどが立たない高速増殖炉の予算を上げてくるので、私は『いつ動くか分からないのに、何で今年予算がいるの?』と聞きました。すると彼らは『いやいや、3年後には動いてることになってますから』と言って聞かない。
高速増殖炉には電力会社もカネを出していますから、開発を止めて資産をゴミにするわけにはいかない。だから誰も止められないんです」
どうしても動かしたい人たちに、もはや論理は通用しない。新聞やテレビが決して報じない実態を、国民はまず知って、怒りを表明するべきだろう。