(社説)泊原発停止5年 「再稼働ありき」見直せ
北海道新聞 2017年5月6日
北海道電力泊原発が全面停止してから、5年になった。
北電は停止当初、電力不足の危機を訴えた。
しかし、東京電力福島第1原発の事故後、道民の意識は明らかに変化し、節電が定着した。5年間ではっきりしたのは、原発なしで電力を賄えるという事実である。
それでも北電は、今後も「再稼働ありき」の姿勢をとり続けるのだろうか。
泊原発3基のうち、原子力規制委員会の審査が進んでいるのは3号機である。
その3号機も、再稼働のめどは立っていない。規制委が、泊原発が立つ積丹半島の沖に海底活断層があると想定して影響を再検討するよう、北電に指示したからだ。
活断層は、予想される地震や津波の大きさ、つまりは原発の安全性を左右する。北電が、自らの見立てが異なっていた事実を重く受け止め、より厳しい想定に見直すのは当然だ。
安全対策の強化は、発電コストの上昇に直結する。
災害時の防潮堤の地盤沈下や、防波堤の流失に備える対策も求められ、すでに安全対策費は2千億円台半ばに達する見込みだ。
まして、海底活断層の影響で対策を上積みすれば、さらに費用がかさむ。北電は、原発のコストが経営の重荷になる可能性に、正面から向き合うべきだろう。
そうでなくても電力需給面での再稼働の必要性は薄れつつある。
国の認可法人、電力広域的運営推進機関が公表した2025年度までの道内の電力供給の余力は、需要が高まる1月でも、必要水準の2~3倍となる見通しだ。
とりわけ、19年以降は液化天然ガス(LNG)火力の石狩湾新港発電所が稼働し、供給力が飛躍的に増える。
老朽化した火力発電所の稼働率が下がっても、泊3号機が動けば「余剰分」の拡大は確実だ。
泊原発停止後、北電は火力発電所の燃料費増加を理由に2度にわたって電気料金を値上げし、顧客の北電離れを招いている。
値下げは泊の再稼働が前提と繰り返すが、原発のコストがかさむ中、それが唯一なのか。LNG火発の稼働も見据えた一層の経営努力を求めたい。
北海道新聞社が先月行った全道世論調査では、再稼働を「認めるべきでない」と答えたのは59%に上った。北電は、選択肢の狭い「再稼働ありき」の考え方を見つめ直す時ではないか。