東芝の半導体事業売却をめぐり、日本政府が最大9000億円の債務保証を行うことを検討しているということです。
日刊ゲンダイによると、東芝は先にWH社を連結対象から外す代わりに約8000億円の債務保証をしましたが、それはWH社への債務保証を果たさずに米国の怒りを買うようなことになれば、来年7月に迫っている「日米原子力協定」の更新に影響が出ないようにするためなので、その意味からも政府が東芝を見捨てることはないと確信しているということです。これも原子力問題の暗部に関するものです。
その原子力協定とは日本が非核保有国で例外的にプルトニウムを貯蔵して再処理をしても良いというもので、要するに日本はそのことで核兵器の潜在的保有能力を維持しようとするものです。
NPT(核拡散防止条約)はもともと核保有国が自分たちの権益を守るために作った欺瞞的なものですが、日本は憲法上からもまた唯一の戦争による原爆被災国ということからも、核兵器=プルトニウムの貯蔵を目指すべきないことはいうまでもありません。
そもそも東芝が実質的な破綻に至る過程は余りにも問題があり過ぎて不健全でした。そうしたことに蓋をしたまま1兆円もの血税を投入することは許されません。
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法的整理を強気否定 瀕死の東芝に血税9000億円投入の裏
日刊ゲンダイ 2017年5月18日
「(法的整理は)検討していない」――。今年3月末での5400億円の債務超過を発表した15日の会見で、東芝・綱川智社長はこう言い切った。半導体を共同生産している米ウエスタンデジタル(WD)から半導体事業売却中止を訴えられ、上場廃止も現実味を帯びる中、市場関係者は「なぜ“検討”まで否定できるのか」と首をかしげる。どうやら最後は安倍政権が「面倒を見てくれるだろう」と思っているらしい。強気の姿勢の根拠と言われるのが「日米原子力協定」だ。
15日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、東芝の半導体事業売却をめぐり、日本政府が最大9000億円の債務保証を行うことを検討している――と報じた。半導体技術の海外流出を懸念し、債務保証によって政府系ファンドの産業革新機構を中心とした陣営の買収を後押しする狙いがあるという。菅義偉官房長官は否定したが、東芝救済の公的資金投入は既定路線という。ジャーナリストの横田一氏はこう言う。
「米調査会社によると、2016年の東芝の世界シェアはわずか3%。果たして数千億円単位の血税を投入してまで保護する必要があるのでしょうか。国は “技術の海外流出防止” を理由にしていますが、狙いは別にあると思います」
ささやかれているのが、1988年に発効した「日米原子力協定」だ。「原子力の平和利用」を大義として日米両国の原子力分野の技術協力を約束した協定で、有効期間は30年。来年7月に期限を迎える。日本はこの協定のおかげで、非核保有国で唯一、国内にプルトニウムが貯蔵でき、再処理を許されている。協定を無事更新できるかどうかは「原子力ルネサンス」をうたう安倍政権にとって “死活問題” なのだ。
■これは第二の東電だ
平時なら淡々と期間が更新されるはずの協定なのだが、米国が注視しているのは、東芝の米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の行方だ。東芝は、3月に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請したWH社を、連結対象から外す代わりに、約8000億円の債務保証をした。東芝本体が法的整理なんて事態に陥れば、債務保証も怪しくなり、WH社の経営再建は困難になる。大統領選でトランプを支持したラストベルトの労働者約8000人の雇用が失われることにもなりかねないのだ。
元東芝技術者の後藤政志氏が言う。
「東芝がWH社への債務保証を果たさず、米国の怒りを買うようなことになれば、日米原子力協定の更新に影響が出る可能性があります」
安倍政権のホンネは何が何でも東芝の法的整理を避け、米国に迷惑をかけたくないだけ。協定を無事更新して、原子力利権を死守したいのだ。これじゃあ、ゾンビ・東電と全く変らない。