福島県から横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題を受け、横浜市教育委員会は10日、「東日本大震災や原発事故で避難した児童生徒は『特に配慮が必要』」と明記した、いじめ防止基本方針の改定案をまとめ、同日の市議会の常任委員会に示しました。
なんともささやかな改善案というしかありません。
本当の問題点は、教師が自己の保身上「いじめを認めたがらない」事実があって、それを校長を含む学校が是認してしまうのに加えて、教師出身者が多く占めている教育委員会もそれに異議を唱えないという馴れ合いがあることの筈です。
参考までに、弁護士ドットコムニュース「生徒自殺、なぜ学校や教育委員会は『いじめ』を認めたがらない?」を紹介します。
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東日本大震災や原発事故で避難の児童生徒「特に配慮」
横浜市がいじめ防止方針案
産経新聞 2017年5月10日
東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した男子生徒(13)へのいじめ問題を受け、横浜市教育委員会は10日、東日本大震災や原発事故で避難した児童生徒は「特に配慮が必要」と明記した、いじめ防止基本方針の改定案をまとめた。同日の市議会の常任委員会に示した。
改定案では、震災や原発事故の避難者だけでなく、性同一性障害など性的マイノリティーや発達障害のある児童生徒について、いじめ防止のために学校が特に配慮する必要があると指摘。「日常的に特性を踏まえた適切な支援をする」とした。
児童生徒や保護者の申し立てがあった場合、重大事態かその疑いに該当すると明示。調査は「事実関係が確定した段階ではなく、『疑い』が生じた段階で速やかに開始しなければならない」と記した。
3月に公表されたいじめ問題の最終報告書は、いじめ防止対策推進法に対する学校や市教委の認識が不十分で対応が遅れたと指摘していた。
改定案は6月に市民から意見を募集した上で、9月末に正式決定する予定。
生徒自殺、なぜ学校や教育委員会は「いじめ」を認めたがらない?
仙台の事件を考察
弁護士ドットコムニュース / 2017年5月8日
仙台市で4月26日に起きた市立中学2年の男子生徒(13)の自殺をめぐり、学校や仙台市教育委員会の対応に批判が集まっている。いじめをすぐに認定しなかったからだ。
仙台市では2014年と2016年にも、いじめで中学生が自殺している。しかし、今回事件の起きた学校では昨年6月と11月に実施したアンケートでは、亡くなった生徒が「いじめられている」「無視される」などと回答していたにもかかわらず、悲劇を防げなかった。
今年4月に着任した校長は4月29日の記者会見で、「一方的ではなく、互いに(悪口を)言い合っていたので、双方を指導して解消した」などと説明。仙台市教委も「いじめかどうか断定できない」とし、当初はいじめだと認めなかった。
ところが、報道陣から次々に質問が飛ぶと会見後、市教委は一転して「いじめがあったことは否定できない」と発言。校長も後日、「いじめと言うべきだった」といじめを認めた。弁護士ドットコムニュースが、その理由を尋ねたところ、市教委は「アンケートで本人が申告している以上、法律上はいじめと認識すべきということで、訂正した」と説明した。
市教委や学校の対応をどう見たのか。学校のトラブルにくわしい髙橋知典弁護士に聞いた。
●教育委員は、学校の主張をそのまま受け入れてしまいがち
「私自身が関わった案件でも、教育委員会や学校が、いじめを認めようとしないということはよくあります」。髙橋弁護士はこのように話す。
「結果としてはいじめを認定してもらうに至りましたが、例えば、身体中にケガをしていながら、いじめはなかったとされたことや、『きもい』『うざい』『臭い』と複数名の生徒に言われていても、被害者側が招いた結果の口論であり、いじめには該当しないと主張されたこともあります」
髙橋弁護士はその理由を、「現場の教員があげた意見を、学校と教育委員会がそのまま受け入れてしまっているのではないか」と指摘する。
「今回の記者会見で、教育委員会は、学校が主張するとおり、いじめはなかったとの説明を繰り返していました。記者に指摘されて初めて、見つかった資料もあったようです。
本来、教育委員会は、学校とともにいじめの事件を調査し、学校の調査が不十分であれば、これを指導する立場にあります。しかし、実際には記者会見のように外部の客観的な視線や批判に触れないと、学校側の説明をそのまま受け入れてしまうことがあるのです。
学校側からすれば、責任問題になることは避けたいでしょうし、教育委員会の構成員の多くが学校現場から異動してきた教員であることなどから、馴れ合いが起きているという事情も作用しているのではないでしょうか」
●いじめアンケートの難しさ
髙橋弁護士は、今回学校が行った、いじめアンケート前後の対応が適切だったかを調査すべきだと指摘する。
「いじめを受けている子が、アンケートに『いじめはない』と回答したり、『ある』としていても、その後の聞き取り時に『ない』と答えたりすることがよくあります。
たとえば、アンケートの後、先生がいじめっ子たちに表面的な注意をするだけであれば、今まで以上に陰湿ないじめにあうでしょう。いじめがあったと回答しても、どうせ先生は助けてくれない。この結論に至った子どもたちは、いじめの事実を先生に話すことはありません」
今回の事件では、亡くなった生徒はアンケートに対し、2度「いじめられている」と回答。学校側はその後、本人と加害者の双方を指導し、被害申告がなくなったことから、いじめは止んだものと判断していたそうだ。
「先生に言ってもいじめは終わらないという確信を持った子どもたちは、より確かな絶望感に直面してしまいます。もしかしたら、亡くなった生徒もそういう心境になっていたのかもしれません」
●情報の基本的な扱い方から直すべき
髙橋弁護士によると、こうした対応は仙台市に限ったものではないという。では、いじめ問題について、学校や教育委員会はどう対応していくべきなのかだろうか。髙橋弁護士は「答えは一つではない」と前置きしつつ、「証拠等資料の収集方法や分析方法の周知を徹底すべき」だと強調する。
「いじめ調査については、普段子どもと接している先生たち以上の適任者はいないでしょう。しかし、担任の先生などの関与の深い教員による調査だけでは、教室は平穏であったということを肯定する証言の方が、先生にとっても都合が良いためか優先されてしまいます。
例えば、担任以外の先生によって、当事者だけでなく、現場に居合わせた他の子どもたちに個別に聞き取りをするなど、具体的な調査を行う必要があるでしょう」
【取材協力弁護士】
高橋 知典(たかはし・とものり)弁護士
第二東京弁護士会所属
学校・子どものトラブルについて多くの相談、解決実績を有する
都立高島高等学校での教育シンポジウム、テレビ・ラジオ等の出演
東京こども専門学校非常勤講師としても活躍
事務所名:レイ法律事務所