2017年5月12日金曜日

柏崎刈羽原発の新基準の審査は大詰め でも再稼働は見通せない

 柏崎刈羽原発の新規制基準に関する審査が大詰めを迎えています
 この審査途中で免震重要等の耐震強度についての隠蔽が明らかになったことから、規制委は東電に申請書再提出するよう要求する事態になりました。
 それが再提出されて大きな問題がなければ審査は終了する見通しですが、 “合格証” である「審査書案」提示されるのは夏以降とみられます
 
 しかし審査に「合格」したとしても再稼働にはつながりません。
 米山隆一知事、再稼働には慎重「福島原発事故の検証が終わらない限り、再稼働の議論はできない」と繰り返し述べています。東電の担当者「審査に合格しても私たちは地元に対してすぐに再稼働をお願することができない」と話しています。
 柏崎刈羽原発の再稼働を巡るその間の事情を産経新聞が報じました。
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柏崎刈羽原発の新基準の審査大詰めも…それでも見えぬ再稼働
産経新聞 2017年5月11日
 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の新規制基準に関する審査が大詰めを迎えている。合格すれば、事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型と呼ばれるタイプの原発で、新基準の審査を終えるのは初めて。東日本の原発としても初のこととなる。ただ、審査に合格したとしても、すぐには動かせない事情があるようだ。
 
審査に3年半…背景に東電の「独善的」体質
 「ここまで長い道のりだった」
 東電の幹部がそう語るように、同原発の審査は難航。1年半程度で審査を終えている原発もある中、25年9月の申請からすでに3年半以上が経過している。
 「先行する他原発の審査を参考にしない独善的な体質があり、その結果、審査をやり直すといった手戻りも多かった」。規制庁の幹部は、審査が長期化した背景をそう語る。
 時間がかかった要因の1つが耐震性の証明だ。耐震計算は通常、建設時に行った手法で説明するが、新潟県中越沖地震の経験から東電は「より実態に近い計算ができる」と、新たな手法を提案。妥当性の証明に時間を要した。
 昨年10月には規制委の指摘を受ける形で敷地を解析したところ、一部が液状化し防潮堤が傾く可能性が判明。事故時の対応拠点を3号機から5号機に変更し、審査をやり直した。
 補助的な事故対応拠点として検討していた免震重要棟も、途中で耐震不足が判明。事故時には使用しない方針に転換した。同問題では東電社内の情報共有体制の問題も露見させ、規制委が広瀬直己社長を呼んで申請書の再提出を求める事態にまで発展した。
 
 規制委の田中俊一委員長も「(福島第1原発)事故の原因になった東電の問題はいろいろ指摘されているが、まだ反省が隅々まで届いていない」と手厳しい。
 
新社長からのヒアリングも必須
 審査は申請書の再提出が行われ、大きな問題がなければ終了する見通しだが、規制委が “合格証” である「審査書案」を提示するのは夏以降とみられる。
 東電の広瀬社長が6月の取締役会で退任するためで、規制委も後任社長の小早川智明氏から直接話を聴く意向を示している。
 原発の審査では、設備面だけでなく、原発を安全に運転する能力を有しているか否かについてもみている。東電については田中委員長も「事故を起こした当事者ですから、ほかの電力会社と同じような判断でいいのかということは、多分、国民の方もなかなか納得できないだろうと思う」と、慎重に審査する方針で、「合格」を与える前に、トップから直接話を聴くことは不可欠と判断した。
 
福島事故の検証に3、4年
 残る手続きをすべて終え、審査に「合格」したとしても、再稼働の時期は見通せない状況にある。再稼働に不可欠な地元の同意が得られる見通しが立っていないからだ。
 東電の担当者は「審査に合格しても私たちは地元に対してすぐに再稼働をお願することができない」と話す。
 通常、電力会社が新基準の審査を受けるのは再稼働をするためだが、柏崎刈羽原発の場合、「安全対策を専門的な立場からチェックしてもらう」(広瀬社長)という理由で、当時の泉田裕彦新潟県知事に申請の了解を得ている。すぐに再稼働を申し入れても、「話が違う」と一蹴されかねないのだ。
 泉田前知事の路線を引き継いだ現職の米山隆一知事も、再稼働には慎重な姿勢を示しており、「福島原発事故の検証が終わらない 限り、再稼働の議論はできない」と繰り返している。
 県は近く、「福島の事故原因」「健康や生活に及ぼす影響」「避難方法」の3点についてそれぞれ専門家を入れた検証委員会を立ち上げる予定で、独自に福島第1原発事故の検証作業に着手する。米山知事は検証作業には3~4年かかるとの見通しを示している。