2015年10月28日水曜日

伊方再稼動 大分市民も街頭で批判 建設自体が間違いと専門家

 伊方3号機原発の再稼動に対して、地元愛媛県や伊方原発から45キロ圏の地域を一部有する大分市民や大分県民から、26日知事の再稼働同意表明への抗議原発事故への懸念不安の声が相次ぎました。
 
 地元愛媛県の「伊方原発をとめる会」(松山市)などの市民団体は26日、中村時広愛媛県知事の再稼働同意表明に抗議する集会を県庁前で開きました
 
 大分市の市民グループ「311いのちのわ」さよなら原発おおいた実行委員会は、26日、愛媛県知事が再稼働に同意したことに対して抗議声明を発表するとともに、大分市中心部に立って、「経済より人の命を守る選択を」などと、市民に脱原発を呼び掛けました。
 
 また伊予市沖などで断層調査を続けてきた高知大学総研特任教授の岡村真氏(地震地質学)は26日、知事の再稼働同意を受けて、伊方原発8キロ以内という距離に日本最大級の活断層「中央構造線」が走っているのにそれを過小評価していること「事故時は政府が責任を持って対処する」との首相発言には何の意味もないこと、避難計画の実効性が疑問であることなどを指摘しました。
 そして原発の建設自体が間違いであったと批判しました。
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「声」届かないまま 伊方原発 |大分
大分合同新聞 2015年10月27日
  四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)が立地する同県の中村時広知事が伊方3号機の再稼働に同意した26日、豊後水道を隔てた大分県では、県民から原発事故への不安や懸念の声が相次いだ。市民グループは街頭に立ち、「万が一の際、大分への影響は計り知れない。住民の安全を無視した拙速な判断だ」と批判した。
 
 伊方原発から45キロにある大分市佐賀関。漁で年に数回、原発近くに船を出すという漁業藤沢高幸さん(70)は「安全面が心配。事故が起きないとは言い切れない」と指摘した。サービス業衛藤和範さん(68)も「福島の事故を忘れているのではないか。知事の同意は信じられない」と顔をしかめ、2人とも「再稼働には反対だ」と語気を強めた。
 主婦の阿部千津子さん(66)は「近くの原発が再稼働するのは、良い気持ちはしない。事故の影響を考えると恐ろしい」。小学生の子どもがいる古中佐知子さん(39)は「親として安全な環境を残してあげたいが、生活のことを考えると原子力に頼らざるを得ないかもしれない」と複雑な表情を浮かべた。
 晴れた日には、対岸の伊方原発が見える国東市でも、さまざまな意見が聞かれた。歯科衛生士の馬場美由紀さん(42)は「原発について考えることはなかったが、今後は万が一に備えて対策を考えておく必要がある」。農業の河野久孝さん(73)は「福島の事故を経験し、電力会社もしっかり対応するだろう。心配していない」と話した。
 松山地裁で係争中の伊方原発運転差し止め訴訟には、大分県内からも106人が参加している。原告の河野泰博県平和運動センター事務局長(66)は「愛媛だけの問題ではない。少なくとも、愛媛県知事は司法の結論を見極めた上で判断すべきだ。多くの人の命を無視している」と断じた。
 
 一方、広瀬勝貞県知事は26日の定例会見で、中村知事から25日に「明日、(再稼働の同意を)表明しようかと思っている」と連絡があったのを明らかにした。広瀬知事は「地元の知事が総合的に判断したと思う。やむを得ないのではないか」と述べた。
 佐藤樹一郎大分市長は「四国電力は安全対策に万全を期し、迅速かつ確実に情報公開していただきたい。市は県と連携し、原子力災害対策を進める」とのコメントを出した。
 
愛媛県庁前でも
 【大分合同・愛媛伊方特別支局】伊方原発の再稼働に反対する「伊方原発をとめる会」(松山市)などの市民団体は26日、中村時広愛媛県知事の再稼働同意表明に抗議する集会を県庁前で開いた。
 午後6時から、約80人が「再稼働許さん!」「民意無視」などと書いた紙を持ち、県職員や通行人に「同意は県民の思いと懸け離れている」「県や議会は再稼働ありきの議論しかしていない」などと訴えた。
 とめる会の草薙(くさなぎ)順一事務局長(75)は「今日は知事が県民を侮辱した日。心から震える怒りを持っている。知事同意があっても、抵抗して反対し続ける」と話した。
 
「命守る選択を」 市民団体抗議活動
 市民グループ「311いのちのわ」さよなら原発おおいた実行委員会(松本文六委員長)は、愛媛県知事が伊方原発の再稼働に同意したことを受け26日、抗議声明を発表。「伊方原発は中央構造線に近く、重大事故が起きれば瀬戸内海は死の海となる。電力は足りており、日本一危険な原発を再稼働させる根拠はない」と訴え、文書を愛媛県庁にファクスで送った。
 会員ら約20人は大分市中心部に立ち、「経済より人の命を守る選択を」などと、市民に脱原発を呼び掛けた。
 市民団体「原発いらない!」グループ・大分のメンバー3人も同市の九州電力大分支社前で街頭活動をした。グループの島田雅美さん(68)は「東京から遠い九州、四国が狙われた。愛媛県知事の判断に憤りを感じている。大分県の行政、県民も再稼働問題と正面から向き合い、声を上げてほしい」と話した。 
 
 
「地震を過小評価」高知大学総合研究センター岡村真・特任教授
大分合同新聞 2015年10月27日
近くに活断層 建設自体が間違い
 「伊方原発を動かすということであれば、私たちはここに住めなくなることを覚悟しなければならない」
 伊予市沖や別府湾などで断層調査を続けてきた高知大学総合研究センター特任教授の岡村真(まこと)氏(地震地質学)は26日、知事の再稼働同意を受け、こう指摘した。
 
 岡村氏は、伊方原発の問題点を三つ挙げる。
 一つ目は、原発から8キロ以内という近さの海域に日本最大級の活断層「中央構造線」が走っていること。「四国電力は『過去1万年は動いた形跡がない』として、大地震がない前提で3号機を建設してしまった」
 同社は基準地震動(耐震設計の目安となる揺れの強さ)を徐々に上げて最大650ガルとしたが、岡村氏は「他の原発より低く、地震を過小評価している。補強工事をしても、ボロ屋に突っかい棒をするようなものここに造ったこと自体が間違い」と話す。
 二つ目は、立地自治体で再稼働容認論を大きく後押しした「事故時は政府が責任を持って対処する」との首相発言。「重大事故が起きれば取り返しがつかない。国民は福島を見て『一度事故が起きれば首相でも手を付けられない』と学びつつある。首相の言質が取れたからオーケーだというのは全くおかしい」
 三つ目は周辺住民の避難。「地震の後にたくさんの人がどう逃げるのか」と計画の実効性を疑問視。放射性物質の拡散は避難計画が定められている原発から半径30キロ圏にとどまらず、気象条件次第で大分、高知、広島などにも及ぶ可能性があるとした。