経産省が2030年度に目指す電源構成のうち、原発の占める割合を「20~22%」とする報告書をまとめる際に、国民からの意見:「パブリックコメント」で、原発への依存度をさらに引き下げるかゼロにするよう求める意見が約9割に上っていたものを無視していたことが分かりました。
政府は「パブリックコメント」の全体傾向や詳細は明らかにしませんでしたが、東京新聞が寄せられたすべての意見を公開請求して、約3400ページの文書を分析した結果分かりました。
原発については1617件の意見があり、うち依存度を引き下げるかゼロにするよう求める意見は1449件で、89・6%でした。
政府原案が「22~24%」とした太陽光や風力など再生可能エネルギーに関する意見は延べ1606件で、うち91・7%の1472件が「もっと増やす」ことを要求していました。
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公募意見の9割が「原発多すぎ」 電源構成で異論「黙殺」
東京新聞 2015年10月26日
経済産業省が2030年度に目指す電源構成(エネルギーミックス)のうち、原発の占める割合を「20~22%」とする報告書をまとめる際に国民から意見を募った「パブリックコメント(意見公募)」で、原発への依存度をさらに引き下げるかゼロにするよう求める意見が約9割に上っていたことが分かった。寄せられたすべての意見を本紙が情報公開請求して取得し、分析した。 (岸本拓也)
政府は国民から意見を募集しながら全体傾向や詳細は明らかにしなかった。構成目標の最終決定にも反映させておらず、一般の人々からの異論を「封殺」するかのような国民軽視の姿勢が浮き彫りになった。
経産省は今年六月に電源構成の原案を示し、六月二日~七月一日まで意見公募を実施。メールやファクスなどで二千五十七件(本紙集計)が寄せられた。しかし、同省は意見の全容を示さず、七月十六日に原案通り構成を決定。その際、件数と意見を部分的に抜粋し公表したにとどまった。
本紙は開示された三千三百八十六ページの文書すべてを分析、内訳を分類した。
原発については千六百十七件の意見があり、うち依存度を引き下げるかゼロにするよう求める意見は千四百四十九件で、89・6%だった。原案の依存度を支持するか、さらなる拡大を求める「維持・推進」は三十八件で2・4%にとどまり、賛否の判断が困難な意見は百三十件で8%だった。
原発比率引き下げを求める理由は「老朽原発の稼働を前提としていて事故が心配」「使用済み核燃料の処分方法が解決していない」などが多かった。
政府原案が「22~24%」とした太陽光や風力など再生可能エネルギーに関する意見は延べ千六百六件(原発への意見と重複分含む)。うち91・7%の千四百七十二件が「もっと増やす」ことを要求。原案の支持か、比率引き下げを求める意見は十四件(0・9%)にとどまった。
行政手続法は各省庁が重要な指針などを決める際は意見公募し結果を公表するよう定めているが、公表範囲は各省庁の裁量に委ねられている。民主党政権下の一二年、将来の原発比率を決める際は政府は公募意見約八万八千件を分析、87%が「原発ゼロ」を支持していることを公表していた。
<電源構成見通し(エネルギーミックス)> 中長期的に日本がどんな電源に発電を頼るかについての比率。この見通しに沿う形で、政府は規制や財政支出を行い、電力各社も原発の運営方針や、再生エネルギーの活用策を決めるため、日本のエネルギー政策の基本となる重要な数字。家庭の省エネ目標もあり、国民生活へのかかわりも深い。2030年度時点の見通しは、14年4月に安倍政権が閣議決定したエネルギー基本計画に基づき、経産省の審議会の報告も反映し今年7月に策定した。