福島原発の建屋周辺の井戸から汚染地下水をくみ上げ、浄化後に海へ放出する「サブドレン方式」を実施してから14日で1カ月を迎えました。
その目的は、建屋地下部分の破損箇所から建屋内に流入する1日300トンの水量をとりあえず半減させることにあったのですが、現在サブドレンの水量を日400トンに増大させたのにもかかわらず減っていないということです。
東電は建屋の周辺地下から一定水量をポンプで排出すれば、その分が建屋内に流入する水量から減じるという単純な想定をしたようですが、それは現実にマッチしていなかったということです。
建屋内に流入する水量は建屋内外の水位差によって定まり、何点かの実測で式の係数も把握できます。問題はサブドレンによって外側の地下水位がどれほど低下するかの把握ですが、それはロクに検討していなかったということになります。
加えて凍土壁の凍結も、地下水位がコントロールできないことには始められないと言い出しました。そんな話はこれまでになかったことですが、その後に気づいたということなのでしょうか。
凍土壁が完全に凍結できないという問題も多分進展していないことでしょう。
いずれにしてもこのままでは汚染水の発生を抑えることはできません。
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「汚染水」なお1日300トン サブドレン放出1カ月
福島民友ニュース 2015年10月15日
東京電力福島第1原発の建屋周辺の井戸から汚染地下水をくみ上げ、浄化後に海へ放出する「サブドレン計画」で、原発港湾内への浄化地下水の放出を始めて14日で1カ月を迎えた。東電はこれまで12回、計約8784トンを放出したが、運用は手探り状態。汚染水をためるタンクの容量は限られており、サブドレン計画で建屋への地下水流入減少が期待されるが、効果はいまだ確認されていない。
様子見の段階
「11月ごろには効果が表れてくるといいのだが...」。資源エネルギー庁の木野正登汚染水対策官は、はやる気持ちを抑えながら話す。建屋に流れ込む1日約300トンの地下水は建屋内の高濃度汚染水と混ざり、約300トンの新たな汚染水となって毎日増え続ける。政府と東電はサブドレンからの地下水くみ上げで一日も早く流入量を減らしたいが、様子見の段階だ。
建屋周辺を流れる約800トン(東電推定)の地下水を一気にくみ上げると建屋内と水位が逆転し、高濃度汚染水が外部に流出する恐れが指摘されている。東電は、くみ上げ量の管理で「安全運転」に徹しており、9月3日の運用開始時から段階的に約3倍の1日約400トンまで増やしてきた。
しかし、構内の地上タンクに保管可能な汚染水の総量が約95万トンなのに対し、多核種除去設備(ALPS)などで浄化した水は約70万トンに上る。東電は残り約25万トンについて「保管容量に余裕はある」と楽観視するが、汚染水の発生量が減る段階に至っていないのが現状。現時点で建屋への流入量に変化はなく、東電は今後の状態を見極めながらくみ上げ量を増やす方針だ。
熱視線
サブドレンと護岸の井戸「地下水ドレン」の運用開始に向け漁業者が計画を認める条件とした「海側遮水壁」は、計画から1年遅れで今月末にも完成する。東電は港湾内に流出する汚染地下水の量を1日当たり約400トンから約10トンにまで減らせると見込んでいる。
漁業者は海側壁の完成で本県沖の環境改善を期待しており、試験操業が続く本県の漁業再生に向けた追い風となる。県漁連の担当者は「数値の変化など好材料がそろえば、試験操業の海域拡大も議論に上がるだろう」と熱視線を送る。
凍土壁への影響
海側壁の完成は、政府と東電が切り札とする陸側の「凍土遮水壁」の建設も左右する。凍土遮水壁は建屋周辺の地中に氷の壁を造り、汚染地下水の流れを止める仕組みで、サブドレンで地下水位を安定して管理できなければ、凍結を始められないためだ。
凍土壁の工事は順調に進んでいる一方で、原子力規制委員会は凍結開始の見通しについて「サブドレンの運用を見極め、水位を完全に管理できると証明できてからだ」と慎重な姿勢を崩さない。汚染水対策の加速には、東電が現場の安全対策を徹底しながら、サブドレンの運用を軌道に乗せられるかが焦点となる。