東電は福島原発事故の処理費用として現時点で21・5兆円を見込んでいますが、それで収まる保障はどこにもありません。通常それだけの出費が予想されれば会社は維持できないので倒産するはずですが、東電に限っては国による手厚い資金援助のスキームが事故直後から進められる中で、従来通りに維持され昨年度は史上空前の利益を挙げました。
事故処理費については、当面必要な分の一部は税金を投入し、それでも不足する分は政府機関から借用しています。その返済分は電気料金に加算することで捻出するので、結局はすべての事故処理費用は国民の負担になります。
その結果メガバンクからの貸付金(長期・短期融資を併せて約6兆円)はすべて保護されて、事故以来総額1993億円の利子が払われました。株主の権利も同様に100%保護されています。
通常であれば被災者への賠償を最優先するとともに国民への理不尽な責任転嫁を避けるために、銀行筋も「貸し手責任」として債権放棄や利子の減免をするものですが、東電の事故ではそのいずれもしていません。要するに東電に関しては貸し手の銀行や株主も、全て特別扱いが行われているということです。
しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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3大銀など原発事故後 東電から利息1993億円
貸し手責任 果たさぬまま
しんぶん赤旗 2017年1月3日
福島第1原発事故を引き起こした東京電力が、長期・短期の借り入れをするメガバンク(巨大銀行)などに2011年3月から16年6月までに累計1993億円もの利息を支払っていたことが2日までに、日本共産党の塩川鉄也衆院議員と本紙の調べでわかりました。政府が、損害賠償・廃炉・除染など21・5兆円に膨らむ原発事故費用を電気料金値上げや税金投入で国民に押しつけようとするなか、メガバンクなどの貸し手責任が厳しく問われます。
11年3月~16年6月
東電の内部資料をもとに試算すると11年3月から16年6月までの長期借入金の返済額は2・16兆円、支払い利息は1883億円。短期借入金の返済額は3・77兆円、支払い利息は110億円。合計1993億円にものぼります。
東電を破たんさせず資金繰りが困難になったらいつでも何度でも国が資金援助する「賠償スキーム(枠組み)」づくりが直後からすすめられました。「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の「委員会報告」(11年10月3日)は “債権放棄などは困難” とし、東電が全金融機関に送付した文書に「金利減免や債権放棄といった類の支援を、当社から要請することはないと申し添えます」としていたことを明らかにしています。
東電(単体)の借入金の残高は、有価証券報告書等によれば16年3月31日現在、長期借入金2・62兆円、短期借入金0・49兆円とばく大。主な借入先と金額(上位6社)については、日本政策投資銀行9173億円、三井住友銀行8246億円、みずほ銀行4321億円、三菱東京UFJ銀行2504億円、三井住友信託銀行1800億円、日本生命保険相互会社1369億円(16年3月31日現在)。上位6社で大部分を占めている形です。
その一方、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループ、三菱東京UFJ銀行の3メガバンクは15年に、自民党の政治資金団体、国民政治協会に各2000万円の献金をしたことが明らかになっています。
国民負担最小化とエネ政策の転換を
塩川鉄也議員の話
原発事故の被害者にとって許されない話です。政府は、現行の枠組みを維持したまま、さらに巨額の際限ない国民負担を押しつけようと画策していますが、国民は誰も納得できないでしょう。東電の経営責任、メガバンクの貸し手責任を問うなど、国民負担の最小化を図り、原発・エネルギー政策を根本的に転換すべきです。