原発は運転開始後40年で廃炉になるのが「原子炉等規制法」による原則なのに、このところ立て続けに「延長」が認められてその延長幅は最長20年となっています。
原発の耐用年数はもともと30~40年だろうと想定されていて、原子炉圧力容器の劣化度を調べるテストピースは確か30年分しか取り付けられていなかった筈です。
それが福島原発事故後に「運転期間は原則40年」とすることが原子炉等規制法に盛り込まれ、不思議なことに、同時に規制委の審査を通れば「1回に限り最長20年の延長」を認める規定も盛り込まれました。
30年が40年になり、それが一気に60年になるとは呆気に取られる話です。
配管の補強や交換などは40年経ってからも可能ですが、核分裂で発生する中性子を浴びて劣化する原子炉圧力容器が60年持つという保障は得られるのでしょうか。その間に脆性破壊遷移温度が著しく上昇しないと何故保障できるのでしょうか。
そんな危険性を持つ60年への延長が次々と規制委に認められている実態は明らかに異常です。
喉元過ぎれば熱さを忘れると言いますが規制委の態度が理解できません。
河北新報が原発の40年ルールが無視され、極ごくの例外であった筈の60年延長が『原則』化している実態を批判しました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
社説 原発の40年ルール/「例外」が「原則」と化した
河北新報 2017年1月29日
原発は運転開始後40年で廃炉になるのが法律(原子炉等規制法)による原則なのに、立て続けに「延長」が認められている。しかも期間は5年や10年でなく、最長20年というからあきれる。
国の原子力規制委員会は昨年、関西電力の高浜1、2号機と美浜3号機(いずれも福井県)の延長を認めた。日本原子力発電も今年中に、東海第2(茨城県)の延長を申請するという。
古い原発の安全性は時間の経過とともに深刻さを増していく。炉心溶融(メルトダウン)に陥った東京電力・福島第1原発事故の後、あえて法律に「40年で原則廃炉」を盛り込んだ重みを再確認し、慎重の上にも慎重に審査する姿勢を貫くべきだ。
原発の耐用年数はもともと30~40年だろうと目されていた。だが、以前は法律に規定がなく、電力各社は40年を超えてもなお運転を続ける方針を示していた。
2010年に日本原電の敦賀1号機(福井県)が国内の原発で初めて40年を超え、福島第1の1号機も事故直前、10年延長して50年の運転が認められた経緯がある。
なし崩しに延長する流れにブレーキがかかったのは、原発事故がきっかけ。事故への反省から、13年に施行された改正原子炉等規制法に「運転期間は原則40年」が盛り込まれ、美浜1、2号機や四国電力・伊方1号機(愛媛県)など6基の廃炉が決まった。
ところが、改正法には規制委の審査を通れば「1回に限り最長20年の延長」を認める規定もあり、美浜3号機などの運転延長に道を開く結果になってしまった。
必要な安全対策の工事が残っており、すぐさま運転を再開できる状況ではないが、規制委の姿勢には首をかしげるしかない。
田中俊一委員長は就任した12年には「40年前の設計は十分ではない。一つの技術の寿命」と延長にかなり否定的だったのに、昨年は「金をかければ技術的に克服できる」と様変わりしてしまった。
当初、運転延長は例外中の例外と思われたのに、あっさり認めた印象が拭えない。原発事故後の安全規制を一手に担っている組織がこれほど電力業界寄りにぶれたのでは、国民からの信頼は失われる一方だろう。
昨年6月、初のケースとなる高浜1、2号機の延長を認めた際には「訴訟リスク」を恐れて急いで審査を終えたのではという見方さえあった。審査中に40年になれば廃炉に追い込まれかねず、電力会社は審査の不備を理由に提訴する可能性もあったという。
これでは安全審査が空洞化しかねない。原発事故を教訓にした大切な新ルールがまるで無視され、「例外」と「原則」が逆さまになったら、老朽化原発を抱える地元の自治体にとって安全性への不安は募る一方になる。