2017年1月10日火曜日

東電・原子力ムラのネガティブキャンペーンが激化する!

 5日、新潟県庁米山知事を訪ねた東電の数土会長と廣瀬社長ら首脳部に対して、知事は3つの検証項目 1・福島原発事故の原因解明 2・事故による住民の健康と生活への影響 3・柏崎刈羽原発で事故が起きた時の避難計画 の結論が出ない限り、柏崎刈羽原発の再稼働の議論はできないと述べました。そこには、これまで再稼働阻止の防波堤役をしていた泉田裕彦前知事路線を継承するだけでなく、さらに強化しようとする米山知事の意欲が込められていました
 
 またその後の記者会見で、産経新聞が、東電や国の意向を忖度したかのように、「福島原発事故処理費用として税金とか電気料金値上げを通じての国民負担を最小化するという意味で『一定程度の再稼動も必要』という意見もあるが・・・」と聞いたことに対しても、「知事の責務は県民の命と暮らしを守ること。基本的には私が第一に考えることではない」と答えました。見事なものです。
 
 実は米山氏が知事に当選したあと、「原発反対で当選した三反園知事や米山知事は、早晩脱原発の立場を維持できなくなる」と予想し、それを公表した評論家がいました。
 三反園知事の例では昨年末にその通り、早々と馬脚を現わしましたので米山知事の態度が注目されましたが、三反園氏とは明確に一線を画すものでした。
 泉田氏の路線がそれだけ明確で、東電をも納得させてきたという点も勿論ありましたが・・・
 LITERAの記事を紹介します。
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         横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」④
「原発再稼働は認めない」と断言した新潟県知事に、
東電・原子力ムラのネガティブキャンペーンが激化!
LITERA 2017.01.08.
 東京電力の数土文夫会長と廣瀬直己社長らが5日、新潟県庁で米山隆一知事と初めて面談をした。冒頭で数土会長は知事選当選祝いから切り出し、「一番重要視すべきステークホルダーは何と言っても地元の方々」と “新潟県民ファースト” の考えを示し、福島原発事故の検証を進める県への協力も申し出た。
 
 東電トップが丁重な姿勢で初面談に臨んだのは、言うまでもなく、年間1千億もの収益改善効果が見込める「柏崎刈羽原発」(同県柏崎市と刈羽村)の再稼働が再建計画の柱になっていたためだ。しかし原発問題が最大の争点の新潟県知事選(10月16日投開票)で初当選をした米山知事は、「現状では再稼働は認められない」「福島原発事故の3つの検証が終わらない限り、再稼働の議論はできない」と繰り返し訴えた
 
 そこで東電は「そんな米山知事を何とか懐柔したい」と下手に出たに違いないが、その目論見はすぐに打ち砕かれた。米山知事は選挙中の訴え(県民との約束)をこの日も繰り返して初志貫徹、「検証には数年かかる」と明言もした。この瞬間、柏崎刈羽原発の再稼働が最低でも数年は困難となったのだ。
 米山知事がこだわる3つの検証項目は、「1・福島原発事故の原因解明」と「2・事故による住民の健康と生活への影響」と「3・柏崎刈羽原発で事故が起きた時の避難計画」のことだ。すでに泉田裕彦知事時代に設置された「県技術委員会」や「(東電と県の)合同委員会」が事故原因解明の検証を進めてきたが、残り2つの検証については手薄なため、体制拡充する方針も米山知事は東電トップに伝えた。
 これまで東電や経産省などの原子力ムラと対峙し、再稼働阻止の防波堤役をしていた泉田裕彦前知事路線を継承、さらに強化しようとする米山知事の意欲が伝わってくる。
 
 JR柏崎駅から北西に8キロほど日本海沿いに走ると、世界最大規模の東京電力「柏崎刈羽原子力発電所」に着く。“産みの親”というべき田中角栄・元首相の実家はここから10キロ足らず。海辺の砂浜を歩いていくと、フェンス越しに7基の原発施設が立ち並ぶ光景が近づいてくるが、一帯は砂地の軟弱地盤。もともと農地開発する予定だった二束三文の土地が、田中角栄・元首相の系列会社を経て東電に転売された結果、およそ立地に相応しくないところに原発群が建設されたのだ。
 この土地転がしで得た5億円を資金に田中元首相は、佐藤栄作首相(当時)の後継を決める1972年の自民党総裁選で億単位の金をばらまいて首相ポストを射止めた。全国に新幹線や高速道路を張り巡らせた実績は語り継がれているが、途方もない負の遺産を残した犯罪的行為についてはあまり知られていない。
 
「角栄王国」とも呼ばれた新潟で自民党が12年前に担ぎ出して初当選した全国最年少知事の泉田氏は、就任直後と3年後の中越沖地震で陣頭指揮を取った。
 特に2007年7月の中越沖地震では、柏崎刈羽原発は緊急停止でメルトダウンは免れたものの、放射能漏れと火災事故が発生。しかし軟弱地盤の上に立つ敷地内外では道路の陥没や地割れが続出、消火作業や避難に支障をきたした。この混乱の中で奮闘した泉田知事は、「安全神話」にすがって杜撰な「原子力防災(原発事故時の災害対応)」で事足りていた東電や経産省に厳しい姿勢を取り始める。放射能被曝の遮断可能な「重要免震棟」が遅ればせながら柏崎刈羽原発に設置されたのも泉田前知事の功績だが、「同じ東電の原発で同じ沸騰水型の福島第一原発にも設置すべき」と東電に提案、実現させるのにも貢献したのだ。
 ちなみに福島第一原発に重要免震棟が完成したのは、東日本大震災のわずか8カ月前。この重要免震棟で吉田昌郎所長(故人)が原発事故対応の陣頭指揮を取ったことに注目すれば、泉田前知事もまた現場に最後まで残った吉田所長ら“決死隊”社員と同様、「関東圏に人が住めなくなる」という最悪の事態回避に貢献した功労者に違いない。
 
 現場体験で「原子力防災の第一人者」に鍛え上げられた泉田前知事の知名度がアップするにつれて、原子力ムラの攻撃は激しさを増し、古巣の経産省からは「変人知事」という情報を流されるようにもなった。現役霞ヶ関官僚がペンネームで書いた小説『原発ホワイトアウト』(若杉冽/講談社)では、泉田前知事をモデルにした伊豆田知事が原発推進勢力の仕掛けた陰謀で逮捕されて失脚、その後に原発テロでメルトダウンに至る結末となっていた。
 この小説と同じようなことが現実で起きた。自民党と地元紙「新潟日報」と東電が水面下で連携しているようにみえる“泉田知事降ろしキャンペーン”が新潟県知事選を控えた昨年夏頃から激しくなり、告示を1カ月後に迫った8月30日に泉田知事が4選出馬撤回を発表したのだ。
 
 この時、株式市場は「自公推薦候補の森民夫・前長岡市長の当選は確実。柏崎刈羽原発再稼働の可能性が高まった」と判断、東電の株価は上昇した。そんな中、「福島原発事故の検証と総括なき再稼働はありえない」が持論の泉田路線の継承を掲げて立候補、奇跡の逆転勝利をしたのが、米山知事だった。
 実際、米山知事の囲み取材では産経新聞がこんな質問をしている。
「(東電が福島原発)事故処理費用を捻出して税金とか電気料金値上げを通じての国民負担を最小化するという意味で『一定程度の再稼動も必要』という意見もあるが、検証の長期化と国民負担の兼ね合いについてどうお考えですか」
 5日、新潟県庁。東電トップとの初面談を終えた米山知事が囲み取材に応じた。柏崎刈羽原発の立地場所は地震の揺れが大きくなる軟弱地盤。しかも米山知事は福島原発事故の原因として「地震説」を排除しておらず(東電や経産省は「津波説」を主張)、新潟県が東電のさらなるデータ提示で検証を進めた結果、「地震説が有力」との結論になることも十分考えられる。
 
 その場合、津波説が前提の今の対策では不十分で、新たな配管補強などで天文学的な費用が必要になり、再稼働は極めて困難で廃炉を余儀なくされる可能性が高まるのだ。
 このことについて聞くと、米山知事は一般論と断りつつも、「合理的に安全が確保できないのであれば、(再稼動は認められない)私の現状の認識が続くわけですから、再稼動は認められないことに必然的になる」と答えた。地震説採用で原発の安全確認のハードルが上がり、柏崎刈羽原発はもちろん全国各地の原発再稼働が困難となる展開も考えられる。新潟県の徹底検証で、安倍政権の原発推進政策を根底から揺るがす可能性が出てきたのだ。
 
 しかし存在感を示し始めた米山知事と原子力ムラの攻防が激しくなることは十分に考えられる。初面談後の囲み取材で数土会長は、「知事の同意が得られるまでは柏崎刈羽原発は動かさないという理解でいいのか」との質問に「そうなると思います」と答えつつ、衣の下から鎧が見える発言をしている。
我々は世論がどうなるのかは分かりません。地球温暖化とか、化石燃料の状況だとか、東南海地震の襲来があった時にどうするのか
 東電の次なる手段が見えてきた。それは、経産省など原発推進勢力を総動員して「原発は地球温暖化対策に有効」「化石燃料輸入で国富流出」「地震時の予備電源になる」「再稼働しないと電気料金は下がらない」といった情報を流して世論を誘導、検証に時間をかける米山知事への批判が噴出するようにするというものだ。
 米山知事は「知事の責務は県民の命と暮らしを守ること。基本的には私が第一に考えることではない」と答えたが、「国民負担最小化を阻害する新潟県」といった批判が出ることを狙ったのは明らかだ。
 
「90万部突破!」「田中金権政治批判の急先鋒だった石原慎太郎が万感の思いを込めて描く田中角栄の生涯」と銘打った『天才』(幻冬舎)の中で石原慎太郎元都知事(元・維新共同代表)は、田中氏を「紛れもない愛国者だった」として次のように絶賛している。
「エネルギー資源に乏しいこの国の自活のために未来エネルギーの最たる原子力推進を目指しアメリカ傘下のメジャーに依存しまいと独自の資源外交を思い立ったのも彼だった」
 
 しかし柏崎刈羽原発の実態に目を向ける時、田中元首相はもちろん、原発推進の姿勢を引き継ぐ安倍首相もまた、愛国者とは対極にある「亡国の首相」にしか見えないのだ。 (横田一)